変化の裏で
すみません、短いです。
夕方頃もう一話更新します!
精霊祭から一週間後。
私は近頃、気分の晴れない日々を過ごしていた。
精霊祭は楽しかった。
久しぶりにベルダ様とお出かけして、華やかに飾り付けられた賑やかな町並みを堪能し、たくさんの出店を回った。最後には火災という事件もあったけれど、怪我人もなく、結果的にベルダ様は火の精霊の加護を得ることができた。とても素敵な一日だった。
けれど、その日以降、彼を取り巻く環境は様変わりしてしまったのだ。
精霊の加護を得ると、魔法の威力や精度が段違いに変わる。そのため、ベルダ様が火の精霊の加護を得たことは、すぐに大勢の人が知るところとなった。
すると、現金なもので、今までこれといって目立つ特技のない伯爵家の三男でしかなかったベルダ様には見向きもしなかった人たちが、彼と縁を結ぼうと、あからさまに近づくことが増えた。
それも当然かもしれない。
貴族の嫡男以外の男性は、学園卒業後は婿に入るか自身で身を立てるしかなく、これまでのベルダ様は私の家へ婿に入ることが決まっていて、それ以外の道を選ぶのは難しかった。
でも、精霊の加護があれば、騎士団の花形である魔法部隊への入隊も夢ではない。ベルダ様は私と比べて自分なんてと卑下していたけれど、元々彼は、家柄も外見も申し分ない、むしろ魅力的な男性なのだ。
元々婚約者の私とは不仲であるという噂もあったため、あわよくばという思いを抱く令嬢が現れるのも、おかしなことではなかった。
二人の学友と教室へ移動中、私は三人の令嬢に囲まれているベルダ様を遠くに見つけ、ため息がこぼれそうになるのを我慢していた。なぜか胃がムカムカするような、息苦しいような感じがする。
……ベルダ様は、私の婚約者なのに。
そんな言葉が頭に浮かんできて、私はハッとした。
以前、ベルダ様が特定の女子生徒と懇意にしているという噂を聞いた時は、こんな風にはならなかったのに、私は一体どうしてしまったのだろう。
「大丈夫ですか? ルナリア様」
一緒に歩いていた友人に、心配そうに声をかけられた。彼女たちの気まずげな視線が、ちらちらとベルダ様に向けられている。二人とも、令嬢たちに囲まれている彼を見つけてしまったようだ。
……いけない。こんなことで心を揺らしていては、またよくない噂が流れてしまうわ。
私は普段からあまり働いてくれない表情筋に力を入れ、友人たちへ向けて薄く笑顔を作った。
「ええ、もちろんですわ。私は彼を信じていますもの」
「まぁ。ふふ、そうですわよね。以前ならばともかく、最近は、とても中睦まじくされていましたものね」
「えぇ、見ているこちらが照れてしまいそうでしたもの」
クスクスと笑いながらからかわれて、思わず頬が熱くなる。
……そうよね。今のベルダ様は、私を好きだと言ってくれている。あんなに熱心に伝えてくれているのに、信じないでどうするの。
励ましてくれた友人たちに感謝しながら、私はその場を離れ、教室へと歩いていった。
その後、さらに私の心を揺らす出来事があるとは、思いもせず。