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『Echoes of Logos 外伝 ― 化物浦見、北の帝都に吠ゆ。―』  作者: ちょいシン


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第三十七話 別れの校門、そして“百妖の木刀”

黒影田中との死闘から数日後。

終わったはずの戦いは、それぞれの胸に静かな余韻と影を残していた。

そして真一郎は、一本の“木刀”が持つ千年にわたる因縁を知ることになる。

 黒影田中との死闘から、まだ数日しか経っていない。

 あの夜の重さだけが、季節よりも深く胸に残っていた。


 その朝、田中二郎は静かに転校していった。


 校門の前で立ち止まり、校舎を見上げる田中。

 あれほど多くいた仲間――いや、舎弟たちは誰ひとり来ていなかった。

 暴力で支配した関係など、所詮はそんなものだと田中は苦笑した。


 校舎に背を向け、ゆっくりと校門を出ようとしたそのとき。


「おい! 田中」


 声の方を向くと、そこに立っていたのは先日死闘を繰り広げた――浦見真一郎だった。


 田中は薄く目を細める。

 あの戦いの記憶は、霧のように曖昧だった。


「浦見か。すまなかったな……よく憶えていないが」


 真一郎は肩をすくめて言う。

「そんなに気にすんな。この前も言ったが、一度妖怪に関われば、その影響は免れん」

「なんかあったら、すぐ俺に連絡するんだぞ」


 田中は小さく息を吐いた。

「ああ、分かってる。……あの日から、そこら辺に幽霊が見えるようになったよ」


 言いながら肩をすぼめる田中は、どこか悲しげだった。

「でも天地寺が無償で面倒見てくれるって言うからよ。落ち着いたら連絡するよ」


「ああ、楽しみに待ってるぜ」

 真一郎はたった数日の友人に向けて手を上げた。


 田中も背中越しに手を振る。

「猫女によろしくな!」


 その直後――


「誰が猫女だ! あんなのと一緒にするんじゃないよ!」

 怒気を孕んだ声が飛んできた。


 真一郎が振り返ると、田中の進行方向に少女化したクロが仁王立ちしていた。


 田中はすれ違いざま、クロにぽつりと言った。

「色々ありがとな。浦見を頼んだぜ」


 クロはぷいっと顔を背け、「フン!」と鼻を鳴らした。


 田中二郎の姿が遠ざかる。

 その背中は、以前よりずっと軽くなっているように見えた。


 ――その日の夜。


 真一郎は自室で、あの木刀をじっと見つめていた。

「なぁクロ。木刀が反応しないんだが……危機の時にしか反応しないのか?」


 クロは真一郎ベッドの上で漫画を見ている。

 ポテチを食べ、うつ伏せで両足をパタパタしながら、質問に答えた。

「ああ。それか」


「ソレはもう、ただの木刀だ。一回こっきりだよ」


「は?」

 真一郎の顔が固まる。


 クロはため息をつき、真一郎の前に座った。


「その木刀は千年前、当時の京都で十体の悪妖怪たちを成敗するために作られた十本のうちの一本だ」

 真一郎の手の中の木刀が、急に別物に思えてくる。


「一本の木刀に百の妖怪が融合し、木刀に変化した。

 つまり――一本百妖の力だ」


 真一郎の顔がみるみる青ざめる。

「それが……十本!?」


 クロはゆっくり頷く。

「うん。だから“十本千妖”。

 そのうちの一本が、お前に応えた。それは……そういうことだ」


 真一郎は木刀を握る手に力を込めた。

 その重みは、木の質量ではなく――過去千年の“宿命”そのものだった。


 部屋の窓から吹き込む夜風が、静かに木刀のを揺らした。


田中二郎は去り、真一郎のもとには“百妖の木刀”の秘密が残された。

そしてクロの言葉の裏には、まだ語られていない「九尾の猫又の記憶」が眠っている。

次に訪れる影は――過去か、未来か。

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