5月1日(木)曇り ー後編ー
まさか、こんなに長くなるとは!
初万博のエッセイ、後篇です。さすがに終わります。
◇大屋根リング(夜)
時刻も19時になり、いよいよ夜のリングへ。
下から見上げたリングは、並び立つ木材が真っ白にライトアップされ、巨大な神殿を訪れたような厳粛な気持ちを呼び起こします。一方、エスカレータを上がり辿り着いた屋根の上は、ぼんやりした足元灯に照らし出された非現実の空間。見るべきは屋根ではなく、華やかに彩られた各国のパビリオンと、それを取り囲むリングのライン。その神々しさは、ちょっと言葉にしづらいものがあります。まさに「ワンワールド」を体現する光景です。
おっさん二人は「なんじゃあの建物」「どこのパビリオンでしょうね」なんて、お上りさん全開の会話をしながら、ド派手かつ現実味のない原色の風景を堪能しました。まるで初めてゲームをした子供のようにわくわくしながら。未知の世界って意味では、まんまゲーム体験ですよあれ。
そんなこんなでいつのまにか15分近く歩くと、目的地であるリング南部分が見えてきました。ここは一部分リング下に海水が引き込まれ、水上イベントが行われるエリア。半月型のプールの中央には、モノリスめいた四角い枠が屹立しています。
多分、あの辺りで噴水ショーが行われる、はず。下調べ? してませんが何か?
この噴水ショーは、対岸の陸側に予約席があります。が、別にリングから見ても同じだよね、と。そんな風に考えてリング南側にがっつり人が集まっている……かと思えば、そうでもありません。時間がやや早かったせいか、意外に空いてる。これは余裕だと踏んで、我々は中央から少し離れた位置に腰を据えることにしました。
これがまさか、盛大なやらかしだったとは……
◇アオと夜の虹のパレード
いつしかリング上は観客が増えていき、満を持して噴水ショーが始まりました。
これがどういうショーかと説明すると、様々な形に噴き上げた水にライトを浴びせて着色する仕組みです。川とか滝とか、巨大な水流というだけでエモいもんですが、それをライトアップして演出するんですから、エモさも倍掛け。さらに一部本物の炎が吹き上がったり、水にこだわらない場面もあって驚かされました。
しかしですね……
始まって最初に驚いたのは、このショーがドラマ仕立てだったことです!
後輩Tは開始前にこう言ってました。
「いろんな国の観客が来るから、日本語のストーリーなんて流すはずがない」
流してるやん! めっちゃ流してるやん!!
いや、私も事前はその説に納得してたんですがw とはいえ、リング上、ほどよく離れた位置だと、なんか語ってるのは聞こえても、内容はろくにわかりません。
加えて、角度です。
このショー、真ん中にあった巨大な枠の中に水の膜を張り、そこに映像を映し出すんですね。これがまあ、横からだと見事に見えません。他にも扇状に放出した水面に映像投影したり、これ自体はすごい技術なんですが、横からだとわ、わからねえ……「なんかアニメぽいキャラが動いてる」くらいしか……!
よもや、あの枠の中で映画が始まるとは。このリハクの目をもってしても読めなんだ……!(北斗の拳)
まあそんな感じで、最後までストーリーはちんぷんかんぷんでした。ド派手な演出はこれでもかと繰り広げられて、花火的な意味では楽しめたので十分ちゃ十分でしたけど、次見るなら正面を陣取りますね。これを読んだ貴方は、我々と同じ過ちを繰り返さないようにしてください。そんな人おらんと思うけど。
◇ガンダム
これでもかと続いた噴水ショーの後は、のんびりリングを歩いて帰ろう、という話になりました。急いでないので、気になったものを見物しつつ、気楽な夜の散歩モードです。
リングを逆時計回りに辿り、北側に近づいた辺りで噂のガンダム発見。これは見ておかねばとリングから地上へ。
私はガンダムはろくに履修してないんですが、巨大ロボットはやはり浪漫がありますねえ。写真とりまくって、友人のガンダム好きに送りまくりました。夜だからか観客も少なく、肩や目を輝かせるガンダム撮り放題でした。
ポーズが不人気とかの話も聞きましたが、ガンダム素人的には別に気にならないというか、安定性考えてこのポーズなのでは?くらいしか。
その後、ガンダム好きでもないのに、何故か万博行くと必ず見に行ってるの、不思議としか言いようがありません。まさにガンダムマジック。
◇石吊るしの休憩所
後輩が近くにあるので見たいと言い出し、私も同行したやつです。
休憩所に大きな石をぶらさげたデザインで、ネット上で安全性がどうとか物議をかもしてたやつですね。個人的には、なんで素人が専門家にケチつけてるのか意味不明でした。こんな目立つイベントで事故を起こしたら建築家はおしまいです。安全性を考慮しないはずがないと思うんですがねえ。
訪ねた休憩所ですが、確かに石はぶらさがっていますが、想像より遥かに小さい石で拍子抜けしました。もっとこう、巨岩を吊ってるイメージだったんですが、バケツくらいの石が幾つも鈴なりになっている感じ。藤棚とかのイメージですね。
私的には「こんな巨岩の下でくつろぐ一枚」を撮れるかと思ってたんですが、そこまでのインパクトはないので、ちょっとがっかりでした。もちろんあの石の量なら、もし落ちて来たら無事では済まないだろうとは思うんですけどね。
◇帰路(北側)
ここからの帰り道は、ざっくりと書きます。
つらつらと書いてたら、結構な文字数になってしまったので。
リング下を歩いていると、ライトアップされた風景と相まって、夏祭りの還り道みたいな空気だなと感じたこと。
かなり人が減ったせいか、海外パビリオンのスタッフが呼び込みをしていて、お国柄を感じたこと。
とりあえず誘われるままオーストラリア館に入ったこと。海をメインにしたイメージ映像がラッセンめいてたこと。
何故かモンハンのアイルーが展示されてたこと。
北側の飲食店はほぼ閉店していて、やけに韓国系の店が多かったこと。
東ゲートが見えてきて、やけに寂しく感じられたこと。
「通期パス六千円引きコードがもらえる」と聞いて、後輩と二人してゲート傍のセンターに受け取りに行ったこと。
◇ゲート夢洲駅
余裕をもって帰るつもりが、やたら寄り道したせいか、ゲートを出ると帰宅客でごったがえしてました。結構な人数でしたが、それでも人流は滞ることもなく、なんだかんだ駅までは止まらずに戻れそう……と思いきや。
周囲のどよめきを聞いて西の空を見上げると、ドローンショーが始まっていました。光の点が群れ、泳ぎ、次々と模様を変化させていく。まさに新時代の花火という感じ。
それはいいんですが、何人もの人がスマホを掲げて足を止め、人流がぐだぐだに。まあ私も撮りましたけど……ああいうのはよくないと思いますね。(棚)
警備員が必死に呼びかける中、再び人波は流れ始め、さして苦労なく夢洲駅まで戻ることができました。大阪メトロは分刻みでダイヤ組んでるそうですが、流石の一言。帰りの電車は当然ながらパンパンでしたが、それもまたよし。
地下鉄阿波座駅に降り立つと、ようやく見慣れた風景です。
思わず「やっと大阪に帰ってきた」とつぶやくと、「万博も大阪ですけどね」と後輩の鋭いツッコミ。
そうですよね。なんか海外旅行した気分になってました。
でもこれが万博なんだと思います。
◇その後
結局、阿波座駅で改札出てちっこい居酒屋に入り、二人して遅くまで飲みました。経済効果、経済効果。
「いやー、すごかった」とか、どちらも頭の悪い感想しか言えなかった気がしますが、結局、二人とも通期パスを買うことにしました。後輩も楽しめた様子で何より。
この情報化社会でここまでテキトーに万博に行く人間は限られると思いますが、おそらく梶野は最後までこのスタイルで通うと思います。予約とかめんどいし、並ぶのしんどいし。
それでも何度も通うだけの価値が、万博にはある。
学ぶところの何一つない、素人丸出しのエッセイですが、そんな空気を感じていただければ幸いです。
いやー、こんなに続くとはw
次回はもうちょっと気楽に書こうと思います。