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期末テストと女子会?

「……よし、今日も完璧だな」


帰り道、俺――佐藤涼は、ランドセルを軽く叩いて満足げに頷いた。

二学期の中間テスト、球技大会、どちらも特に問題なく乗り越えた。

30歳の社会人経験があるし、効率重視で動けば、だいたいのことは何とかなる。


「……ま、今回は一発勝負だしな」


心の中で呟く。

ワンチャンだけのタイムリープ。二回目はない。

だからこそ、この人生は全力で勝ち取りにいかなきゃいけない。

次は絶対、充実した人生を送ってやるんだ。


そんな俺の横を、すっと誰かが通り抜けた。

ふわりと、甘いシャンプーの香り。


「……涼、ボーッとしすぎ」


「凛か」


振り返ると、水島凛が歩いていた。黒髪ロングを風になびかせながら、大人びた表情で。

13歳の女子中学生なのに、彼女は妙に落ち着いている。

――いや、当然か。

彼女も、タイムリープしてきた同士なのだから。


中身は26歳。俺より4つ年下だが、精神年齢では同い年みたいなもんだ。


「……また結城さんに見られてたよ」


「……マジか」


小声で言われて、思わず顔をしかめた。

結城楓。クラスメイトで、黒髪ツインテールの勘の鋭い女の子。

最近、やたらと俺と凛の動向を気にしている。


(はぁ……中学生女子の観察眼、恐ろしい……)


「気をつけようね、涼。楓、なかなか手強いよ?」


「……わかってる。でも、別に変なことしてないし……」


「フフッ」


凛が楽しそうに笑った。

その笑い声に、なぜか胸がちくりと痛む。


(俺たちは、ただの「協力者」……だよな)


心のどこかで、それ以上を望んでしまいそうな自分を、必死に抑える。

今はそんなことにかまけてる場合じゃない。

何より、凛にも、凛の人生設計があるはずだから。


「じゃ、またメッセするね」


凛は手を振って、さっさと自宅方向へと歩いて行った。


(……はぁ。やれやれ、気苦労が絶えない)


ため息をつきながら、俺も自宅へと向かう。

家に帰ったら、すぐにスマホでメッセージだ。

今の時代、中学生でもスマホを持たせてもらえるんだな……ありがたや。



ーーーー

夜。

布団に潜りながら、スマホを開く。


【凛:明日、勉強会、あるらしいよ。】


【涼:女子会だろ?俺、関係ないじゃん】


【凛:呼ばれてるよ。奈央が言ってた】


【涼:マジかよ……】


坂口奈央。

黒髪セミロングで、どちらかといえば明るく元気な女子。

なぜか、妙に俺にちょっかいをかけてくる。


【凛:がんばれ。逃げても無駄だよ?】


【涼:……助けてくれ】


【凛:やだ】


無情な返事に、俺はスマホを布団に投げた。

……はぁ。


「期末テスト前に、何で女子会なんだよ……」


独り言が、夜に溶けていった。



ーーーー

翌日、放課後。

俺は重い足取りで、奈央の家に向かっていた。


(……おかしい、これは絶対おかしい)


男子が女子会に呼ばれるって、どう考えても罠だろう。

でも、断れる雰囲気じゃなかった。

しかも、奈央はニヤニヤしながら「涼も来るんでしょー?」とか言ってきたし。

……何だろう、あの嫌な予感。


「よっ、遅いぞ涼!」


玄関先で奈央が手を振る。

その隣に、楓が腕を組んで立っていた。

……明らかに、俺を品定めする目で。


「お邪魔します……」


「じゃ、始めよっかー!」


リビングに通されると、そこには凛もすでにいた。

床に座り込んで、参考書を開いている。


「……お疲れ、涼」


「お、おう……」


何となく、救いを求めて凛を見る。

でも、凛はにこにこしてるだけだった。

……いや、それたぶん、楽しんでるだろ。


「はいはい、じゃあさっそく英語からねー」


奈央が元気よく言いながら、プリントを配る。

俺たちは輪になって座り、勉強会が始まった。


(……これは、普通の勉強会……だよな?)


少しだけ安心する。

いや、女子に囲まれてる時点で普通じゃないけど。


「ねぇ涼、ここわかるー?」


奈央がプリントを指さしてくる。

覗き込んだら、妙に距離が近い。


「……えっと、ここは動詞の過去形だから……」


「ふーん、やっぱ涼って、賢いよねー」


(……何だその上目遣いは)


奈央の無邪気な笑顔に、変な汗が出る。

これ、イジられてるよな絶対。


「……ふん、たいしたことないわね」


すると、楓がそっぽを向きながら言った。


「おいおい、別に自慢してねーよ……」


「じゃあ、この数学の問題、解いてみなさいよ」


楓がバンッと問題集を差し出してくる。

そこには、普通に難問が載っていた。


(……めんどくせぇ)


でもここで逃げたら負けな気がして、俺はペンを取った。


「……ふん、見てなさいよ」


楓が腕を組み、俺をガン見している。

その横で、凛がくすっと笑った。


(お前は楽しんでるだろ……!)


内心、そんなツッコミを入れながら、俺は黙々と問題を解き始めた。



ーーーー

数時間後。

気がつくと、みんな勉強に本気になっていた。

意外と集中できるもんだな……。


「はい、今日の勉強会、終了ー!」


奈央がバンザイしながら言った。


「……お疲れ、涼」


凛が隣で微笑む。


「ああ……疲れた……」


「男子なのに、よく頑張ったわね」


楓も、どこか素直に褒めてくれた。

……ちょっと、嬉しい。


「じゃ、また明日ね」


そう言って、凛は先に帰ってしまった。


期末テスト前なのに、心の方がよっぽどテストだわ。


そんなことを考えながら、夜道を歩いていった。


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