2話「亜人同盟会」
扉の鈴の音に、出入り口付近にいた数人が、数瞬目を向ける。
中はほどほどに騒がしく、色々な人がいる。
額から小さな角を生やした青年。
体が少し透けている少女。
腕が四本ある妙齢の男。
髪が剣のようになっている女性。
多くの人が現実離れした、どこか不思議な見た目をしている。
二人はそんな人達に目も向けず、窓口に向かう。
「突然すまない、支部長に会いたい。
『都市伝説の少女、リコが来た』といってくれば分かるはずだ。」
「はぁ?...わかりました。伝えてきます。少々お待ちください。」
受付の女性は訝しげに裏へ去っていく。
数分後。
「お二人とも着いて来てください。支部長のところまでお連れいたします。」
先程とは打って変わって、敬うような態度で受付は言う。
細い道を何度か曲がり、『支部長室』と書かれた札の掛かった扉の前にたどり着く。
札が掛かっていなければ狭い物置のようにも見える、煤けた木製の扉だ。
ノックを三回。
「お二人をお連れしました。」
「入れ。」
男の低い声が聞こえる。
「どうぞ、お入りください。」
扉を開けて、受付は言う。
「邪魔するわよ。」
「失礼します。」
二人が入った後、静かに扉が閉じられる。
扉の小ささとは裏腹に部屋は広い。
部屋の中には上等そうなソファーが二台、向かい合うようにして置かれている。
ソファーの間と窓際には、綺麗な木目の机が置かれている。
部屋の中は暖炉もないのに適度に明るく、暖かい。
窓際の机に向かっていた男は立ち上がり、人のよさそうな笑みを浮かべる。
背が高く筋肉質な体つきをしているが、それほどの威圧感はない。
白髪交じりの赤髪をオールバックにしている。
「初めまして。ここ『亜人同盟会・第六支部』の支部長をさせてもらっている、グラインだ。」
フィルは紅いローブのフードを脱ぐ。
露わになったのは、光っていると誤認するような紅い瞳と葵色の髪。
青空色のリボンをアリスバンドのようにつけている。
「知っての通り、フィル・リコレットよ。しばらくの間世話になるわ、よろしく。」
「お初にお目にかかります、ラピス・エレクトリアです。以後お見知りおきを。」
グラインは軽く笑い
「依頼、お疲れ様だった。有益な情報は得られたか?
あと、そんなに硬くならなくていいぞ、こっちまで肩が凝るじゃねぇか。」
「じゃあ、そうさせてもらうわ。」
「お前は最初っから敬う気、無ぇだろ....基本誰に対しても、だが。」
答えたフィルに突っ込みながら、話を戻す。
「前の依頼.....というか方向だが、東の隣町から南東へ10kmほど行ったところだな。
山の頂上付近に社があったらしい。
鳥居と鐘両方あったから神社か寺かわかんねぇってよ。」
「後、誰もいなかったが、その割には綺麗に整備されていたらしい。
そこまで追えた。逆に言うと前回の位置からそこまでしか追えなかったってことだ。
受注した奴は一切の痕跡がそこで途切れていたって言ってたな。」
「んで、傭兵だが、
もう嗅ぎつけて、今ん所はその山の麓ら辺に野営してるらしい。
規模は120人ほど。練度は平均してBの成り立てぐらいだ。リーダーは不明。」
机の上の資料を見ながら答える。
「ありがとうね、恩に着るわ。」
「おう、当然のことをしただけだ。あと、宿は先程の受付に案内させる。」
二人はグラインに背を向け部屋を出る。
扉を閉める直前に一言交わす。
「「良い夜を。」」
「ああ、しっかり休んでくれ。」
扉の閉まった後、部屋の中でグラインは
軽くため息をつき、独り呟く。
「希望は、誰かの絶望ってな。本当に、味方で良かったぜ。」
硬く閉まった窓から覗く月は、ただ一つ、暗闇を穿っていた。
2話「亜人同盟会」END…To be continued
☆補足&設定☆
Q.部屋の広さは?
A.十五畳ぐらい、だと思う.....細かくは決めてない。
Q.葵色?
A.灰色がかった明るい紫色のこと。
Q.フィル達はどんな依頼をした/されていた?
A.アルビノの吸血鬼の追跡/ヤ〇ザの退治
Q.ランクの説明を。
A.冒険者ギルドのランク。上から順にθ, S, A, B, C, D。
θは500〜1000年に一人レベルの超絶規格外。現在は空位。
強さの目安としては、フィルがSぐらいで、ラピスがAの上澄みぐらい。
この世界、θランクぐらいの強さが二人ほどいるんですよね。(本編未登場予定)
ラピスがAなのは火炎に対するガンメタ装備をされると為す術がないから。




