表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/35

12話 戦いのアビリティ


 私はステーションを出て、マンションの近くに車を止めた。狙うとすればやはり自宅付近と私は予測した。既に潜んでいるだろうと、車内で辺りの様子を(うかが)う。

 すると、怪しげな黒服のサングラスペアがうろついている。如何(いか)にもと言った風貌だ。

 ひとりは標準サイズ、もうひとりは大柄なビッグサイズ。西か東か、どちらにせよ刺客には違いない。私は車を降りて予備の紙タバコを咥え、男達に話し掛けた。


「悪いがお兄さん、火、持ってるか?」


「……失せろ」


「お〜怖っ――お前らは西か? 東か?」


「……!」


「なあ、私も仕事だからさ、來斗に手出しされちゃ困るんだわ、分かる?」


 ハンターにしてはブラックスーツがビジネス的で、もしかしたらアサシン、暗殺者か。プロなら甘く見ないほうが良さそうだ。


「お前は……キーナか?」


 私をキーナと呼んだ。ということは、既に私の情報は出回っているんだろう。


「なぜ私の名を知っている」


「俺達も仕事なんですよ。キーナさんに恨みはないんですがね」


「話してる暇はない。()るぞ」


 私に恨みはないって、先に邪魔者から始末する算段か。面白い、私を"ジョーカー"と知って向かってくるならこちらも容赦はしない。


「私に向かってくるとはといい度胸だ」


「実力はともかく、噂は承知してますよ。俺達もプロですから、覚悟してくださいね」


「リーフ、お喋りはもういい。始めるぞ」


 大男が殴り掛かってきた、私は避けるが意外と相手は俊敏に動く。後ろから首をホールドされた。

 尽かさず(かかと)で相手の膝を蹴り、怯んだ隙に(ひじ)で脇腹を殴打。もう一方の手でアゴに掌底(しょうてい)を突き上げた。大男が吹っ飛ぶ。


「グァーッ! グフッ! ……」


「大人しく寝てろ」

 

 次にリーフだったか、標準サイズがナイフを取り出した。ファイティングナイフ、元軍人か。どおりで動きが規則的で無駄がない。

 逆手持ちだ、接近戦ならこちらも能力を使おう。


「《クラドゥ・シャックル》」


 自分の左腕を土の塊で覆った。いわゆる盾だ。

 相手が右手のナイフを横から振るう。私は左腕でナイフを受け止め、逃げられないように相手のつま先を踏んで、ガラ空きのボディーに縦拳を一発打ち込んだ。男は白目とともに昏倒した。

 

 刺客のアビリティってこんなものか……。


「プロが聞いて呆れる。さてどうするか」


 このまま放置しても良いんだが、ポリスに通報されてもお互い迷惑だ。

 私はふたりを担ぎ上げて、マンションの中へと入っていった。エレベーターで屋上まで上がり、鍵を壊して外へ出た。

 ふたりをドサッと置いて呼び掛けた。


「おい、起きろ。生きてんだろ?」


「グッ……グフッ、ゲホッ、聞いてないよ……」


「グフッ……ああ、俺もだ……」


「聞いてない? 何をだ? 」


「キーナさん、強すぎ……グフッ……」


 何だそんなことか。プロなら確実な情報を入手するのが鉄則だ。とにかく話を聞きたい。


「起き上がれるか?」


「ああ、慣れてるんで平気ですよ」


「フーン、話しもできそうだな。私から殺れって言われたのか?」


「お前だけだ。ライトとか言ったか、そいつは知らない。痛っ……」


 來斗を知らない?

 どういうことだ。本来の標的は來斗のはずだ、そのために刺客を差し向けたんじゃないのか?


「おいルート、『來兄と共にいるキーナ』って言われたろ? もう、お前すぐ忘れるなぁ」


「そうだったか? どうでもいい」


 何かが変だ、話しがまったく見えてこない。

 そもそも、來斗をトップに立たせないための陰謀。それが私が現れたことで支障が出てきた。ここまでは多分、間違いない。

 

 ただ合点がいかないのは、來斗を重要視していないという的外れな点。

 邪魔者排除は分かるが、まるで私だけが標的みたいな言い方をする点。

 筋書きを変えてきたんだろうか、私はポリスと何ら関係性を持ち合わせていないというのに。

 

 ポリスか。私とポリス、ポリスのトップ、桜ちゃん――ああ、なるほどな、何となく解ったかも。


「なあ、お前らの依頼人って、東の奴だろ?」


「答える義務はありませんね」


「うーん、でもさぁ、誤解ってこともあるだろ?」


「誤解とは?」


「――お前達はどこまで知ってんの?」


「さあね、殺るなら早くしてくださいよ」


 プロとしての覚悟はあるんだな。おそらく帰したところで制裁の餌食になるだけだろう……逃すか。


「まあいい、休んだらどこへでも行け。あ、顔は覚えさせてもらうよ」


 私は相手のサングラスを外して品定めを始めた。

 標準の男リーフは、愛くるしい瞳と巻き毛が特徴。アイドル系だな。

 大男のルートは意外と端正な顔立ち、切れ長の鋭い目に短髪のシルバーヘアが特徴的だ。どちらも選ぶ業界を間違えてるぞ、もったいない。


「せっかく良い顔してんのに、もったいないなあ。まだ若いんだ、早く違う居場所を探せよ」


「よ、余計なお世話だ……」


「じゃ、顔も覚えたし、もう私に関わるな、次は容赦しないぞ、早く逃げろよ」


 私はふたりの頭をクシャクシャっと撫でて、軽く手を振って屋上から退散した。


 東側のことなら桜ちゃんに聞いたほうが早いだろう。桜ちゃんはタバコ屋にいるだろうか。


 私は車に乗り込みタバコ屋へと向かった。着いてみると、黒い車で道路は埋め尽くされている。いったい何事だ。

 警備のオフィサーに囲まれて、桜ちゃんともうひとり、白髪の背の高い男も乗り込んだ。


 桜ちゃん達を乗せた車を中程に挟み、車は次々と走り出した。私も後に続こうとしたとき、助手席側の窓を誰かが叩いた。見ると直斗が自分を乗せろと助手席に向かって指を差す。

 仕方がないのでドアを開けた。そういえば直斗も身内のひとりだったと、今更ながら気付く。


「よっ。キーナの車を見掛けたんでね、こっちのがいいに決まってる。後を付いて行くんだろ?」


「ああ、早く乗れ、お前ひとりか?」


「兄貴はステーションにいる。気になる?」


「バーカ、好都合だ。資料を読み損ねてね、マザーに聞こうと思って来たんだよ」


「ああ聞いた。婆ちゃんから依頼されたんだって? 何が知りたい、西側の事か?」


「お前、知ってるのか? なら追跡は止めだ。私に話しを聞かせてくれ、ファミレスでいいよな?」


「おお、ファミレス上等! さ、早く行こ!」


 直斗と一緒にいつものファミレスへ向かった。車を駐車場に止めて店に入る。

 丁度ティータイム時、結構混んでる。喫煙席を選びたいがどうだろう。そこへいつものパートのおばちゃんがやってきた。


「いらっしゃいませ。さ、どうぞご案内します」


「えっ? でも……」


「常連さん上等。いつもありがとうございます!」


「キーナってスゲー! おばちゃんも最高!」


「お前うるさい、名前を呼ぶな」


 私達はご好意に甘えて喫煙席をゲットした。お礼に沢山の品を頼んだ。一通り揃ったところで、私はおばちゃんにお礼を言った。


「おばちゃんありがとう、助かったよ」


「とんでもない。キーナさんまた来てくださいね」


「……う、うん。ハハ」


 直斗のバカ、名前を覚えられてしまったぞ。まあいいか、喫煙所は有効活用しますんで。


 さてと、密談の始まりだ――


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
東西の抗争が段々と表面化してきましたね。 ポリスなはずなのに、何だかマフィア感がハンパなくなってきた! 単純にめちゃ面白くなってきています〜!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ