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5. ジリヒンヌ

王の話は少し長かったが、

それも致し方ないくらい事情が込み入っていた。


まず、この弱小国ジリヒンヌは

先代の代までは安定して発展していたらしい。


100年近く大きな戦争が無く、平和そのものだった。

しかし18年前、

状況を一変させる出来事が起こる。




東の隣国アラソッターラ帝国の皇帝ランジャドス3世が

突如、一方的に宣戦布告を告げてきた。


ジリヒンヌ東部、コーントレ地方に

侵攻してきたのである。


トウモロコシの産地であり、

ジリヒンヌにとっては重要な食糧生産地だったが、

いとも簡単に征服、占領されてしまった。

しかもその戦に5万の兵を率いて向かった

先王マケルノダが討ち取られてしまい、

戦線は大混乱に陥る。




敗走する兵も多くが討ち取られ、

または捕縛され奴隷とされた。


侵略はコーントレ地方だけに留まらず、

数年おきに大規模な侵攻が繰り返された。


新王となったマケヌスは、

女王カッテヨネと生後間もない

王女カテルノとを連れ、

命からがら敗走を続けた。

数年ごとに西に遷都を続けながら。


ただ単に戦だけであれば

そこまでの連敗はしなかったかもしれない。


しかし、ジリヒンヌはなぜか

美女が多く生まれる土地としても有名だったこともあり、

女性を攫う目的で各国から

傭兵や援軍が多く押し寄せた。


貴族の女性が特に美しいため、

戦に向かった貴族男性の留守を奇貨とし、

少数精鋭で貴族の邸宅を襲い女性を攫い、

降伏を呼びかけるという手段も使われた。


愛する妻の命と引き換えに降伏し、

寝返る戦闘員も多かったらしい。


そして、当時女性と共に捕えられた幼い子供や、

女性が身ごもっていた子供たちも

未だに人質として捕らえられており、

寝返ったふりをしながらも、

密かにジリヒンヌに忠誠を誓う地方領主たちもいるものの、

表立っては味方ができないでいるらしい


最初の戦いから18年が経った今、

ジリヒンヌの領土は当時の1/5にまで縮小してしまった。


山と川に囲まれた自然の要塞

と言えば聞こえは良いが、

平野が少なく鉱物生産も無く、

産品の乏しい割に

攻める戦略的価値が低い現在のジリヒンヌ。


かつてツクリナルド地方と呼ばれていたこの土地で、

地方領主のような規模で存続しているのが現状だ。

まさにジリ貧弱小国家である。


かつて20万人いたと言われる

この国の人口は現在、2万人にも満たず、

戦闘に参加できる兵は多く見積もっても5000人。

そのうち、男性兵士として期待できるのは

約3000人程度で、残り2000人は女性だ。


しかし、未だに敵国に人質として

連れていかれた身内のいる者たちは

1000人近くもいるらしい。

人質の数は200人ほどらしいが、

比較的身分の高いものが多い。


仮に人質がすべて殺された上で、

ジリヒンヌをいよいよ滅ぼそうとする戦が起こったならば、

自らの命を守るため残った国民一丸となって

決死の軍団となるだろうが、

現状は騙し騙しながらも

残った国民と土地で、

豊かでないながらも生活ができている。


王が反転攻勢を呼びかけても

士気を盛り上げることは難しいだろう。

少なくとも攻めの戦を始めるような状況ではない。


そんなジリヒンヌ国王マケヌスが最後の頼みとしたのが、

神力を持ち、救国の勇者を呼び出す力を持つと言われる

女神ツクリナを信仰するツクリナ教であった。


元々はツクリナルドに根付いていた

地方信仰に過ぎなかったが、

マケヌスがツクリナ教を国教と定めたのだ。


アーヤが言う


「王の助力もあり、地方信仰のままであれば

おまじない程度だったツクリナ様の神力が上がり、

本当に最後の頼みとして呼び出せたのが

使徒であるタクミ様、貴方なのです」


いやめちゃくちゃ重いんですけど。

その割に呼び出されたのがホームセンター男って…


「まあ、そのような経緯でな。

ツクリナルドに引き籠る防衛戦なら

現状維持はできるかもしれんが、

人質として捕らえられている女子供たちを何とかしない限り、

攻めに出ることは不可能だ。

タクミよ、やってくれるか?」


しかもめっちゃ難易度高くないですかね?


できないとは言えない状況だが、

これはハードモードすぎる。

でもまずは、取り組む姿勢を見せることが大事だ。


「この国を救うために全身全霊で取り組みます。

ただ、準備は必要ですので

お時間を頂けますでしょうか?」


「可能なのか!?

いや、女神が呼び出したのだからそうであろうな。

どれくらいだ?」


あれ~?そこまで期待されてなかったのに

ハードル上げちゃいました?

出来るとは言ってないんですけどぉ!!

準備期間2か月だと長すぎて怒られるかな?

いや、ここはもっと長めに言っておいて

ゆっくり考えよう!そうしよう!


「……半年ほど頂ければ」


「な…なんと。

1年もかけずに解決しようと言うのか?

我らが18年かけてもどうにも出来なかった事を…………」


俺、またなんかやっちゃいましたね?


「タクミよ。

いや、ツクリナ神の使徒、タクミ殿。

…どうかこの国を救って下され!」


王が感極まったのか、

跪いて手を取って懇願してくる。


やめてくれ…こんなの絶対に

「無理」って言えないじゃん…


「お、お任せ下さい…。

ただ、私一人の力ではもちろん足りませんので、

国民の方々のご協力も-」


「それは当然であろう!

どんな事でも国を救うためならば協力させる!

約束しよう!!」





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