14. メスガキ令嬢
作戦会議のあとすぐ、セコスギーの使いが来た。
「お偉いさんに会えるチャンスだからすぐ来い」
というので急いでラリーさんと二人で商会に向かった。
応接室にはセコスギーと、
赤みがかったきれいな茶髪おさげの美少女が待っていた。
美少女…なんだけど、なんか性格きつそう。
恐らく20前後か?メスガキという程の歳ではないが、
いかにも生意気そうな雰囲気だ。
高そうな服を着ているので恐らく貴族だろう。
肩出し&カーディガンの着こなしといい、
メスガキ感が強いなあ。
「コイツがさっき話してた奴?
ずいぶん貧相ね。ホントに商人?」
やっぱり糞メスガキだわ。
「はい!間違いなく貧相ですが、
ツテだけは確かでございます!」
「ははー、タクミと申します。
以後お見知りおきを!
こちら、お近づきのしるしにどうぞ」
跪いて、用意しておいたグラスセットを差し出す。
「あら、見た目によらず気が利くのね♡ 結構結構。
私はワガマリア・セメナスよ。
今日はお父様の名代で寄らせてもらったけど、
このプレゼントは私にってことで良いのよね?」
うーん、わからせてやりたい度アップ。
…良いねぇ。ムラムラしてきた。
「ははぁ!もちろんでございます!
お嬢様に貢物ができて光栄でございます!」
「うん、よろしい♡
ところでお前、織物職人の
ツテがあると聞いたのだけど、
私のところで使ってやっても良くってよ?」
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と、いうわけで思ったより早く
織物工場に潜入できそうなのだが、
職人をまだ用意できていないね、
という話を村に戻ってアーヤと姫様にしたのだが
「これは私の出番のようですね」
姫様?
何言ってんだこいつ
いや、そんな不敬なことを考えてはいけない。
「あー!タクミ様ひどい!
『何言ってんだこいつ』みたいな顔して!」
げえっ!意外と鋭い!
「いや…違いますって。
そもそも姫様って顔知られてる可能性も
ある訳じゃないですか?」
「それも大丈夫です。
最近タクミ様に貰った化粧品を
使って実験したんですが、
私、不細工に化粧するのだけは得意みたいです」
「これマジなのよタクミ君。
元が良い人って化粧で良くならないもんだけど、
姫様はマジで酷いから」
アーヤのフォロー?にフフンとドヤ顔の姫様。
そういえば最近、ホムセンから
化粧水、乳液、ファンデーション、シャドウ、口紅やら一式を
召喚して二人にプレゼントしたのだが、
姫様が化粧に成功したのを見たことが無い。
アーヤは徐々に使いこなしていったが、
姫様は変な逆向きの才能があったようで
逆に凄いなぁ…と思っていたのだ。
「まぁ正体がバレないなら問題無いと思うけど…
にしても、姫様、織物できるんですね」
「…できるとは言ってません」
「できねぇのかよ!却下です、却下!」
「ちょっと待って待って!
対応するのに実際に私が機織りする必要はなくて、
織物や染料の知識があれば良いんです!」
「…確かに」
「ちなみに、もし織物作業が必要なら私ができま~す。
だから良い感じのツーマンセルだよ?」
アーヤが挙手しながら言う。
「というわけで、今後は私とアーヤも潜入します!
カメラの使い方もバッチリなので任せてください!」
「うん、ありがたいですけど…」
「けど何ですか?」
「二人とも、ムカついても手は出さないようにね?」
「出しません!」「出さないよ!」
怒られた。
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そして3日後の今、
バキャア!!
メリメリメリ…ズシャーン
ご令嬢と顔合わせして帰ってきた二人が
その辺の樹木を破壊して回っている。
「フフ…言っても王族ですから
いけ好かないご令嬢なぞたくさん見てきましたが、
超いけ好かない上に下賤の者扱いされると
来るものがありますねぇ…コココ」
姫様がキャラ変してどこかの将軍みたいになってるし、
「姫、あの手合いは世間にいくらでもいます。
身分関係なく生活するなら我慢が肝心ですわよ?」
アーヤ、お前の方が破壊した木の本数多いけどな。
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とはいえ、
なんだかんだその後調査は順調に進み、
織物工場の視察を装い、
無事に撮影が完了したのだった。




