表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/14

12. お近づきのしるし

次の日、セコスギーの部下が

通行許可証を持ってきた。

さらに、

「昨日の話の続きをしたいから商会に来い」

とのことなので付いていく。


**********


城塞都市セメナソンヌは2重城壁になっており、

壁と壁の間は放牧場を兼ねているらしく、

ヤギが草を食む姿が見える。


ここを馬車置き場として使っていいとのことだが、

積み荷があるため見張りが必要だ。


さて、誰が残るか、という話になるが、

うちの女性二人、ただでさえ目立つ。


セコスギーに見初められて

強引に求婚されでしもしたら厄介だし、


そもそも姫様は王族として

面が割れているかもしれないため

人目につく動きは避けたい。


という訳で馬車には女性二人が残り、

商会にはラリーさんと俺が行くことになった。




**********




セコスギーの部下に付いていきながら、

ラリーさんが俺だけに聞こえる小さな声で聞いてくる。


「ところでタクミ殿。

任務で使うカメラとかいう魔道具のことで

聞きたいのだが、いいだろうか?」


「はい。アレは軍事機密ですから

内密にして頂けるなら、なんなりと」


「うむ、その…男同士の話ということで、

二人には言わないで欲しいのだが」


男同士の話…?


「単刀直入に聞くが、例えば

私と妻のまぐわいも残せるものなのか?」


一瞬耳を疑ったが、イケオジも男だ。

いや、それよりもこの短時間でハ●撮りへと

想いが至ったこの男に感動すら覚える。

性欲(ロマン)は世界線を越えるらしい。


「もちろんですとも。

この任務が終わったらお貸ししましょうか?」


「ありがたい!

だが、まずは妻を見つけないと始まらないがな」


軽い話と思ったら重い話だった!


「…どれくらい会えてないんですか?」


「もう五年になる。

戦の虚を突かれて攫われてしまってな。

…私のように妻を攫われた者には

新しい妻を娶る者もいれば、

使用人や商売女で自分を慰める者も多い。

だが私には妻以外の女とそうなるのは考えられない。」


スケベな話と思ったら泣ける話だった。


「奥さんを愛しているんですね。」


「当然だ。見つけるまでは死ねんよ。」


「絶対に見つけましょう。」




**********


その後、セコスギーとの商談では、

月にシロップを壺10個、約15リットル用意することを約束した。

ホムセンの在庫が回復するのに1か月かかるため,

その量が限界なのだ。


そもそもこちらの世界では甘味料自体が貴重品だ。

セコスギーもその量で一応納得してくれた。


が、もう一押ししておきたかった。


「セコスギー様、

この度お招き頂きまして、

こうして商談にも応じて下さり感謝しております。

こちら、ジリヒンヌの没落貴族から手に入れた、

とっておきの品です。

お近づきのしるしにどうぞ。」


大層な木箱の蓋を開け、ガラスコップを見せる。

貴族のくだりは勿論ウソで、198円の商品である。

だが、ガラス製品も文明度が中世だと、貴重品だ。

安物と疑うことも無く、めっちゃ喜ぶセコスギー。


「良いのか?

こんなに透明度が高いガラスの器を!

お前、見た目に寄らず良い奴だな!

困ったことがあれば面倒見てやるから私に言えよ!」


198円だけどね。

あと見た目によらずとか言うな。

でも、ハダカデバネズミみたいでキモ~って思ってたけど

こんなに喜んでくれると少しだけ可愛いな。


「喜んで頂けて何よりです。

では早速ですが、私の知り合いで服飾関係の職人が

何人か亡命希望でして…

その筋の商人に繋げて頂ければ幸いです。」


「うむ。まあ構わんが…。

妻と愛人と娘2人の分も、このガラスの器が欲しいのだがいけるか?」


さすが見た目通り、がめつぅ~い。

でも良いよ。1個198円だし。


「かしこまりました。なんとかして見せましょう」







どうでも良いあとがき


ガラスのコップは(株)ホリコシ様の

「 じょうぶなグラス ラッシュ ガラス製 満量240ml」

をイメージしました!


「ムラーノガラス」「ヴェネツィアングラス」に代表されるように

中世のガラス製品および職人は

現代における最先端半導体やAI技術者並みの存在だったので、

そのあたりの歴史について知るのもおススメです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ