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10. 出発

特訓を重ねて1か月

俺の剣術はまだ基礎レベルだが、

3人で王に挑んだ。


そして普通に撃退された。


**********************


王との立ち合いは建物内での戦闘を想定し、

謁見の間で行われた。


まず初手で姫様、アーヤが左右に分かれ、

俺が俊足でかき乱しつつ王の背後から建物の梁に上り、

死角となる頭上付近に移動し、

攻撃を行うという作戦どおり、

梁の上から王に飛びかかり木剣で襲い掛かる。


やったか?と思いきや、

王は俺の気配を感じ取り、

まるでハエでも払いのけるかのように、

側頭部を木剣で打ち据えた。


俺はその後の記憶がないが、

残りの二人も各個撃破されたらしい。

王、強すぎる。


**********************


だが、一応ギリギリの合格をもらえた。


「ふむ、まだまだ未熟だが、

力を合わせれば手練れから

逃げるくらいは出来そうだな。

カテルノとアーヤは慢心が薄らいだが、

もう少し肩の力を抜け。

相手が格上でも常に深い呼吸を意識しろ。

タクミ殿は木登り以外まったく素人の動きだが、

戦法は斬新で良かったぞ?」


ニカっと笑う。


「王、ご指導ありがとうございます。」


「お父様、ありがとうございます。」


「ハハ…ありがとうございます。」


実力差がそのまま師匠と弟子の関係を作り出してて苦笑しかない。


「で、タクミ殿?

この程度の武力でも、

どうにかできる腹積もりがあって

今日は来られたのだろう?」


この人、ただの脳筋じゃない。

本当に王様なんだなと思わせてくれる。

その洞察力に楽しくなって口元が緩んでしまう。


「はい。お察しの通りお話があります。

ちゃんと一角ウサギも持ってきてますよ?」


「フハハハハハ!

痒い所に手を届かせてくれる!

楽しくなってきたのう!」


**********************


目星をつけた候補の城塞都市が7か所、

ただし各都市における収容施設の位置は不明。

なお、人質の女性達は織物工場などで

集団で働かされている可能性が高いと思われる。

以上がジリヒンヌ側で調べた情報である。



その実情を探るために

各城塞都市に入り込んでの調査が必要だが、

リスクが高すぎる割に効果が不明なため、

これまで着手されてこなかったのだが…



俺の提案はこうだ。

まず、流れの商人として都市に潜り込む。


幸い、商品には事欠かない。

ホムセンにある安物のプラ食器ですら

この世界では珍しいだろうし、

包丁などの調理器具に至っては

かなり高級品扱いされるだろう。



露店で、何処にでも売っているものから始めて、

徐々に商品のグレードを上げていけば、

やがて貴族相手の個別訪問販売に行きつく。

そこで情報を得られるはずだ。


そして工場を担当する責任者に繋いで貰い、

服飾関係で新しい事業を考えているだの理由をつけて

女性が多く働く工場を見学させてもらう。


そこでこっそり動画を撮影、王国に持ち帰って

女性達の人相に心当たりが無いかを確認してもらう。


まずは顔の広い王族で確認し、

その後、親族と思われる人をあたるー


かなり地道な作業になるだろうが、難しくは無いと思う。


**********************


俺は手のひらに収まる小型の動画撮影用カメラを王に見せた。

パソコンを取り出して撮影した動画を見せて説明すると

王は興味深げにそれを見つめる中、

俺がパソコンを取り出して録画した映像を再生すると、

王の目は驚きに見開かれた。


「…とんでもない魔道具だな。」


驚くだろうとは思っていたが、

思いの外、未知のテクノロジーを受け入れるのが早い。


魔法がある世界なので、

ビデオカメラも魔道具として

誤解してもらえるからなのだが、

ある意味ありがたい。


以前アニメか何かで、江戸時代から現代に

タイムリープした武士がテレビを見て


「中に人がおるぞ!助けなければ!」


と騒ぐシーンがあったけど、

そんなバカみたいな反応じゃなくて助かった。

トップが優秀だと話が早い。


**********************


それから何時間もかけて王と話し合った結果、

俺の計画は王のお墨付きとなり、

早速、実行に移そうということになった。


そして王との立ち合いから5日後の今日、出発である。


今回、商人として行動するために、

幌馬車と御者兼護衛を付けて貰った。


「タクミ殿、紹介しておこう。この者が護衛のラリーだ。

重要な任務ゆえ、真に信頼のおける人間を選んだ。」


「ラリー=ツマスキーです。

思っても無い光栄な任務を頂き、感謝申し上げる。

よろしくお願い申し上げる。」


30代後半くらいだろうか?

オールバックに少し前髪を垂らした

上品で素敵なおじ様だ。


だが、間違いなく強いと思う。

王のような豪快さ・大らかさは無いが、

気品と殺気が同居していて、

なおかつそれがカッコよく見える。

日本ではお会いしたことの無い雰囲気の人だ。


高位貴族であり歴戦の武人、

という表現が一番しっくりくるか。


「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」


相手が男なのにシュッとしすぎて緊張するわ。



少し向こうでは、姫様が女王様と言葉を交わしている。

女王様、初めて見るけど綺麗だな~。

さすが姫様のお母さん……。


「タクミ君、女王様ガン見はどうかと思うよ?

姫様に報告しちゃうぞ?」


「ソレハヤメテ……」


「じゃあ先に馬車に乗っとこうね~

母と娘の別れの挨拶って時間かかりがちだし」


「確かに。さすがアーヤさんは気配りの人です」


「でしょ?分かったらお菓子出しなさい」


「ハイ…」


アーヤさんにカツアゲされつつ、

俺は馬車に乗り込んだ。



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