tsumugu〜神の子〜
紡はごく一般的な家庭に生まれた。
父は公務員、母は生協のパートとして働いている。
他には兄が一人。
両親は兄を特別目にかけていた。
特に教育や習い事などへの熱の入れようは、兄と紡の間でかなりの格差があった。
両親の予定外の妊娠出産により生まれた紡は、そんな兄に対して嫉妬と羨望を抱き続けた。
やがて自分が周りの真似、同調ばかりしていることに気付く。
他人の様子を窺うばかりの紡は、学生時代はクラスの道化役として過ごすことを選んだ。
紡は高校生になった。
相変わらず家庭内での紡の立ち位置は変わらなかった。
しかし、高校3年の兄が同級生を妊娠させたときから彼の生活は一変する。
兄は半ば絶縁され、両親は紡に愛情を向けるようになる。
しかし、紡はその期待に応えることが出来ない。
受け身で臨んだ大学受験は第一志望は合格することが出来ず、滑り止めで受験した地方内の大学に進学する。
サークル活動には不定期に参加するも、熱量はない。
就活では面接官に媚びへつらい、心にもない志望動機を並べて上場企業の内定を貰い、即決で入社。
職場で出会った女性と結婚し娘も生まれるが、その心の喪失が埋まることはなかった。
数年後、紡は人生に嫌気が差した事と誰かに見張られているという妄想を醸成させ自殺を試みる。
しかし彼は、何度自殺を試みても蘇生してしまうことに気づく。
先日買った4Kテレビの画面には娘の誕生日の際に撮影した動画が映し出されていた。
「ねぇ、面白い!面白い!もう一回やってぇ!」
「ねぇ、面白い!面白い!もう一回やってぇ!」
テレビ画面は上位存在が紡を監視していることを刷り込むように、同じ一場面のみを繰り返し再生し続けていた。
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