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ᓚᘏᗢ にゃんこストーカー ᗢᘏᓗ

作者: 山目 広介

「うわぁぅぉおおおおおん」


「発情期か?」


 猫の唸り声が聞こえてきて思わずそんな感想を口にした。

 それが春先のことだ。



 ある時、近所に働きに来ている人が、私がウチの猫を抱いて家に帰ろうとしている最中、声を掛けてきた。


「ぐへ、ぐへへ。か、かわいいネコちゃんだぁねぇ。きき君の家のネコちゃん?」

「は、はぁ。そうですね」


 ちょっと気持ち悪いからそのまま逃げようと思っていた。しかし回り込まれてしまったのだ。

 どもるのは別に友人にもいるので気にしないのだが、ぐへへと笑う人は実際に見ると気持ち悪い。


「ちちちょ、ちょっと、さささ触らせてくれないかねぇ」

「すみません、ちょっと急いでいるので」


 近所で見かけるために無視するわけにもいかず、テキトーな理由で逃げるようにその時は帰った。



 梅雨になっても未だにオス猫と思われる濁声だみごえが夜や朝方に聞こえてくる。

 ウチの猫が暑くなった連休辺りから外で寝るようになった。

 しかし、雨が降るからかそれで気温が下がったからなのか梅雨になってちょっとだけ家で寝るようになった。

 外で寝ると言っても、物置の上やベランダにいたりはする。呼んでも声が届かないような、そこまで遠くへ行くことはない。


 夜、猫がお腹が空くと、私のお尻を突いたり、寝ている頬を触ったりして起こしに来る。

 最近、もう一匹の猫が夜中に台所を漁るために締め切っているというのもあるかもしれない。

 結構、辛いときもある。



 気味の悪い人が家の前にいる。

 仕事が終わったら、帰り道なのだから偶然ならば、仕方がない。だが明らかに待ち伏せ。

 私が帰る時に猫を抱いて持ち帰ることを知られたのがまずかったのだろう。

 さっさと帰れ、と思ってしまう。


「ぐふぇ、ネコちゃんかわいいねぇ」

「ども」


 私が横を通り過ぎようとするも、一歩遮るようにズレて道を塞ぐ。鬱陶しいと思った。


「ねねねネコちゃん、さささ触らせてくれないかねぇ」

「……」


 この要求は実は何度もされていた。

 猫好きだからといって、猫に懐かれるとは限らない。だが、そういう人って独り善がりな気がする。

 ウチの猫は放し飼いなため、近所の人も触ったりしているのを見たことがある。つまり猫に触れるのだ。猫が嫌がらなければ、と条件が付くのだが。それを触れていないと言うことは、嫌がられていると考えられる。それを私が触らせれば、私が猫に嫌がられることになる。

 そんなのは嫌だ。


「隣の人、呼びますよ?」


 お隣がその人の仕事場らしいから、効果覿面。


「ちっ」


 舌打ちして帰って行った。


 その人はしばらくしたら、見なくなった。



 ある晩、猫が飛び込んできた。急いでカーテンの裏へ隠れる。

 私は猫の出入り口である階段の所の小窓から外を覗く。するとトタンの屋根が大きな音を立てた。

 夜中で動いた物影は見えたが、庭の木々が邪魔して物陰が多すぎて、すぐに見失う。

 たぶん猫だったんだろう。


 その後しばらくは猫が家の中で寝るようになった。

 でも、すぐにまた外で寝るようになる。




 ちょっとだけオス猫である、ウチのメス猫のストーカーさんに来てもらえないかと思ったのは内緒です。





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― 新着の感想 ―
[良い点] かなりガチなやつでした…… 一人の時の私もにゃんこかわいさのあまりへんな声で笑ってしまうことがあります。 気をつけねば……隠さねば……にゃんこに嫌われぬためにも……!! ともあれ猫さんも作…
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