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2話 あれ、痛くない

「へえ、こんな所までモンスターが湧くようになってたのか」


 バンッ!


 モンスターの湧き場所が増えている事に感心していると、ゴブリンは人間の手を咥えたまま腰に携えていたこん棒で窓を叩いた。


 するとこん棒の先に付いた鉄製の刺が窓を割り、割れた箇所からゴブリンは器用に手を突っ込んで鍵を開ける。


 

 AR技術がいくら進歩したとはいえここまで精巧に窓が割れる表現は出来ないはず……。


 

 俺の頭の中ではあり得ないという言葉が繰り返され、恐怖からなのか身体は思うように動かない。


「ご、あ……」


 ゴブリンは部屋の中に入ると咥えていた腕を美味そうに齧り、こちらを見つめた。


 まるで次はお前だと言わんばかりに。


「これはゲーム。ゲームなんだっ!!」


 俺は力一杯拳を握ると、自分を奮い立たせてゴブリンを殴りにかかる。


 だが、ゴブリンは俺の攻撃をひらりと躱す。


 

 まずい。



 そう思ったときには身体に衝撃が加えられていて、俺は床に体を落とした。


「があぁ」


 倒れる俺を見ながらゴブリンは舌なめずりをすると、鋭い歯を近づける。



 ああこれゲームじゃねえや、俺死ぬんだ。



「がぁあ!!」


 ゴブリンは俺の腹に齧りつくと内臓を引き出し美味そうに食いだした。


 こんな状況だっていうのに視界は良好でそんなグロテスクな映像も鮮明に映ってくれる。


 それに思考もしっかりしてて痛みだって……。いや痛みが、ない?


「う、ごく?」


 間違いなく体は喰われている。

 それなのに痛みがない。それどころか寒い、熱い、そういった感覚すらない事に今気付いた。


「ごがぁ?」


 俺がしゃべった事が不思議だったのか、ゴブリンは食べるのを止めてこちらを見た。


「動く。痛くない。拳も……握れるっ!!」


 ゴブリンと目が合った瞬間俺は力一杯ゴブリンを殴った。


 すると視界の隅にゴブリンという種族名とHPが表示された。


 HPは大体10分の1位しか減っていないが、俺の反撃にビビったゴブリンは身動きが出来ないようだった。


「ゲーム? 現実? 訳が分かんないけど……とにかくお前、よくも俺の身体を喰ってくれたな」


 俺はゴブリンを押し倒してそのまま馬乗り状態で顔面を殴った。


 ゴブリンはぶんぶんと腕を振り回して小突いてくるが、それも全く痛くない。


「ご、があ……あっ」

「あ……」


 何発か殴り敵のHPが完全に無くなるとゴブリン身体も完全に消えた。


 死体が残らないところはゲームのそれのようだ。


『ドロップ品『ゴブリンの耳』を1つ取得しました。レベルが2に上がりました。損傷した部位はアンデッドの特性【不死】の効果により時間経過で元に戻ります』


 レベルアップのテキストとアナウンスが流れ、俺は自分の身体を確認した。


 身体はジュクジュクと生々しい音を立てながら元に戻っていく。


 アンデッドだから痛みや気温は感じないのだと思う。

 ただ聴力や視力は正常なのはゲーム的ご都合主義なのかな?


「ゲームなんだか現実なんだか……頭がおかしくなりそうだ。ってのんびりもしていられないか」


 俺は窓からベランダに出るとまず柵に手を当て下を見下ろした。


 ここはマンションの3階。


 ゴブリンがベランダに居たっていう事は他の仲間がここまで投げ飛ばした、或いは……。


「ごが……」

「隣の部屋でモンスターが湧いたかの2択だったんだけど……。それは最悪だよ」


 右隣の部屋とこっちの部屋を隔てる仕切り版は蹴破られ、そこから新たなゴブリンがひょっこりと顔を出していたのだった。

お読みいただきありがとうございます!

モチベ維持にもなりますので、ブックマーク、評価をして頂けると幸いです。

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