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黄金の魔族姫  作者: 風和ふわ@コミカライズ連載中
【没】第五章 エレナと不屈の魔導士たち
96/145

96:落ちこぼれの子供

※一部修正を加えました。


「──今日から皆と同じ学び舎で学ぶことになった()()()()()()だ。皆、仲良くするように」


 若い栗毛の教師がそうエレナとサラマンダーを生徒達に紹介した。“エレン”という偽名で紹介された当のエレナは『学校』という未知の体験にドキドキと胸を躍らせている。一方で“サテイ”という偽名で紹介されたサラマンダーは仏頂面であった。ちなみに勇者の印である彼の深紅の髪は茶髪のウィッグによって覆い隠されている。

 そして今、二人の目の前にはこれから同じ教室で学ぶ年長クラスの学友達。エレナは興味津々で彼らの顔を見渡すが、向こうはエレナにさほど興味がないようだった。栗毛の教師に促されるまま、サラマンダーは最前席、エレナは一番後ろの角席に座る。しかしその途中でエレナは──


「──よぅ、()()()()()()()、仲良くしようぜ」


 ──と、誰かに囁かれた。エレナはピクリと足を止める。目が合ったのはこの教室の中で一番柄が悪いツンツン頭の青年である。ニタリ、と意味ありげに口角を上げる彼に眉を顰めつつ席に着いた。エレナは彼がジャック・ブロンソンという名前であることを思い出した。エレナが彼の名前を知っているのは、事前にアンスが送ってくれた資料の中にクラスメイトの特徴と名前がまとめられたリストがあったからだ。自殺したのはこの年長クラスの生徒の一人だったこともあり、調査がよりスムーズに行えるためのアンスの配慮である。


 席に着くとエレナはまず隣席に目を向ける。黒髪の青年が慌ててエレナから目を逸らした。先程の青年とは正反対の真面目で大人しそうな青年。この黒髪青年の名前は──リュカ。彼はアンスに拾われた元孤児であるらしい。


 授業が始まると、教科書を開いた。内容は簡単な数学。このエボルシオン魔導学園の授業は三限まであり、最後の三限目だけが魔道を扱った授業とのこと。エレナは栗毛教師の授業に集中した。しかし周りの生徒はどうにもやる気がないようで、ほとんどの生徒が居眠りをしていることが気になってしまった……。




***




 三限目後の放課後。エレナは誰もいなくなった教室でサラマンダーと二人きりだった。窓から中庭で遊ぶ生徒達を見守りながら、口元を緩める。


「学校って、凄い楽しいね。分からないことがあったら先生がちゃんと教えてくれるし、一緒に学べる友人がいるって凄く素敵!」

「お前、スペランサで一通りの教育は受けているんだろ?」

「うん。でもスペランサにいた時は一人での勉強だったし、ちょっと間違えただけで凄く怒られたり嫌味を言われたりしたからさ。こんな風にのびのび勉強できるのは新鮮だよ」

「…………、」


 サラマンダーは口をきゅっと締める。窓から流れてきた風がエレナの髪を揺らした。そんな風に気持ちよさそうに目を瞑るエレナは男装をしていながらも、サラマンダーの目にはキラキラと魅力的に見えた。サラマンダーは無意識に自分の胸を抑える。鼓動が、早い。いつもはノームがエレナにベッタリであるので、今のように彼女と二人きりであることに慣れていないのだ。

 ……と、ここでエレナがサラマンダーの方に目を向ける。見惚れていたことがバレてしまわないように、サラマンダーはすぐに目を逸らした。


「それで、今日一日で気になったことがあるんだけど……」


 エレナはサラマンダーにツンツン頭の青年──ジャックがエレナと自分は「落ちこぼれ同士」だと言っていたことを話した。そして授業中の生徒達のやけにやる気のない態度も言及する。サラマンダーは腕を組んだ。


「……おそらく、このエボルシオン魔導学園の生徒は大体が孤児か親に見捨てられた貴族の子供だからだろうな」

「え?」


 サラマンダーの言葉にエレナは驚く。彼が言うには普通のシュトラールの貴族達は魔導とかいう気味の悪いものに関わりたくないと思っているようで、大切な子供をここに入学させることはしないという。しかし()()()()()子供ならば話は別だ。跡を継がせる気もない子供の面倒を見るのも嫌だという親が学費が安く、寮もあるこの学園にそんな子供を追いやる場合が大半なのだという。故に、ここの生徒は実家から追い出されてこの学園に来たも同然だというわけだ。将来も期待されず、今まで生きてきたのだろう。その背景を考慮すれば、彼らが授業に精が出ないのも頷けた。

 それどころか三限目の魔導の授業は大半の生徒が参加すらしなかった。エレナとサラマンダーとエレナの隣席の黒髪の青年──リュカしか席についていなかったのだ。その時の魔導担当のアンスの悲しそうな顔は今でも思い出せる。ちなみに今日の魔導の授業の内容は「魔花の栽培について」。明日の授業では実際に庭で栽培されている魔花を見せてくれると言う。エレナにとっては充実した授業ではあったのだが……。


「一時期、大陸中で“勇者ブーム”ってのが流行ったらしい。ウィンが初めて勇者になったことで次は我が子が勇者に選ばれるかもしれないと貴族達は慌て出したんだよ。不必要に子作りに励んだり、我が子に無理な教育を強制したり……この学園の奴らはその時代の被害者でもある。故に、魔導なんていう勇者の真似事に真面目に取り組むはずがないだろう。突然現れたその勇者という存在のせいで過剰に落ちこぼれと蔑まれることになったんだからな」

「“落ちこぼれ”……」


 エレナはぼんやりと出会った当初のノームを思い出した。そして拳を握りしめる。


 ……しかしここで、中庭が妙に騒がしくなったことに気づいた。見ると中庭の中心でリュカとジャックが殴り合っているではないか。他の生徒達はその戦いを観戦し、煽っていた。体格のいいジャックが細いリュカを当たり前のように翻弄していく。その様子は徐々にヒートアップし、もはやジャックが一方的にリュカを殴っているような体勢になっていった。目を覆い隠したくなる光景にエレナはサラマンダーの制止の声を振り切って、教室を飛び出した……。

更新できずにすみません。

実は今、新たな試みとして小説のアクセスが伸びなかったりして悩んでいる作者様の為に私が作者様の小説を朗読しながら感想を実況をツイキャスでしていくという試みに挑戦しております。もし興味が出た方はぜひ活動報告にあるアカウントまでどうぞ。ラジオとかもしているので、私の声が聴きたい方いらっしゃったら(笑)

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