表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の魔族姫  作者: 風和ふわ@コミカライズ連載中
第四章 エレナと桃色の聖遺物
81/145

81:聖遺物ハンター


「──エレナ!!」


 リリィがエレナを見つけるなり、花のような笑みを浮かべる。エレナはそんな愛らしい弟に微笑み返した。そしてこちらへ駆け寄ってくる彼を抱きしめようと両手を広げる。


 ──だが。


 エレナの頬に突風が当たった。エレナは何事かと横を見るがそこにいるはずのサラがいなかった。一瞬、頭が真っ白になる。そしてドゴォッッ!! と正面から鈍い音が響き──


「サラ、さん……?」


 サラはたった今リリィが立っていた地面に、大槌のロイをめり込ませていた。エレナの喉にひゅっと空気が通る。一瞬で体温が下がったような感覚。しかしリリィの小さな身体が大槌に潰されているわけではなかった。異変に気付いたノームがリリィの腕を引いてくれていたのだ。そして同じくサラの敵意に気づいたサラマンダーがリリィとノームを背に隠す。


「おい、女。今、このちんちくりんに何をしようとしたっ!」

「あ? 見りゃ分かるだろうだよ。そのガキを寄越せ。そいつはオレの獲物だ」


 サラがリリィを鼻息を荒げて睨みつける。サラマンダーが拳に炎を滲ませながら、エレナに視線を移した。


「エレナ、この女は誰だ」

「そ、そこで知り合った(ひと)だよ! さ、サラさんっ! どうして急にその子を襲ったんですか!? リリィは私の大切な弟です!!」

「!」


 サラはエレナの言葉にピクリと反応する。そしてノームの腕の中で怯えているリリィに舌打ちをした。ロイを一旦地面に下ろし、ため息を溢す。


「……あぁ、お前の弟ってこいつだったのか。ならわりぃな、エレナよぉ。オレ、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 サラの言葉をエレナは理解できない。先程まであんなに陽気に話しかけてくれた彼女の殺意に動揺を隠せなかった。「どうして、」とそれしか言葉が出てこない。ルーがエレナの足元から走り出して、サラを威嚇する。そんなルーの行動にようやくエレナもリリィの下へ向かった。ノームがエレナにリリィを渡すと、サラマンダーと並んでサラと対面する。リリィは真っ青な顔でエレナに抱き付いた。……ふるふると身体を震わせながら。


「え、エレナ、リリィ、リリィ、……あの人、怖いよ、」

「大丈夫、大丈夫だよ。リリィは私達が守ってあげるから……だい、じょうぶ……だから、」


 エレナはそう言うものの、自分の心臓が未だに暴れていることを感じていた。失ってしまったと思った。この腕の中にいる大切な弟を。ノームとサラマンダーがいなかったら、今頃リリィは……。エレナはぎゅっとリリィを抱きしめる。


「サラさん!! どうして、どうして貴女はリリィを殺さないといけないの? リリィはただの男の子だよ! リリィが貴女に何かしたの!?」

「……いんや。オレは何もされてねぇよ。でもそいつはこれから何かをする可能性があるだろ。エレナ、嘘を言うな。そいつはただのガキなんかじゃねぇ。お前だって心当たりがあるんだろう」

「っ、そ、それは……」


 ふと、エレナの脳裏に大広間で暴れたリリィの姿が思い浮かんだ。他にも様々な魔法属性を持っていたり、性別を変えるなんていう治癒魔法以上の奇跡を難なくやってのけたリリィの異常さにも実はエレナは気付いていたのだ。敢えて知らないフリをしていたというのに。サラは大槌を肩に乗せた。


「さっき、話の途中だったな。オレはこの相棒と共に聖遺物ハンターとしてこの大陸中の聖遺物を破壊するために旅している。この大槌ロイは同じ神の気配を辿って散らばった聖遺物がどこに在るのかなんとなく分かるんだ。それでそのロイが今、こう叫んでいる。──そのピンクのガキが、聖遺物(ソレ)だと。しかもただの聖遺物じゃねぇ。今まで破壊してきた奴らとはため込んでいる魔力量が桁違いだとな」


 「故に、」とサラは大槌を振りかぶりながら、高く跳んだ。そして原っぱの中心に再度大槌を打ち付ける。大森林全体が揺れ、鳥の魔物達が一斉に逃げ出していった。エレナはリリィを抱きしめながら尻餅をつく。立つことが困難なほどの地震。騒ぎをききつけたドリアードがエレナの背後に現れた。


「エレナ! 大丈夫か? すぐに騒ぎをききつけた魔王殿が来るはずだ。我の後ろにいろ!」

「ど、ドリアードさん……!」


 するとそこで、ノームが地面に触れて呪文を唱える。サラの周囲から数本の土の腕が生え、サラを叩き潰そうとした。サラは軽々とその腕らを大槌で吹っ飛ばす。その際の土埃を利用して、サラマンダーがサラへ突進していった。足に強化魔法でもかけたのか、凄い速さだ。まさに一瞬の出来事。サラマンダーがサラの顔面に向けて己の炎の拳を食いこませようとする。しかしサラはそれを予想していたかのように先にサラマンダーの腹に大槌を打ち込んだのだ。


「っ、がぁっ!!」


 サラマンダーの身体が一瞬の沈黙の後に直線を描くように吹き飛ぶ。彼はそのまま木を薙ぎ倒し、森の中へと消えていった。ノームが吹き飛ばされた弟の名を叫ぶ。


「わりぃな。このロイが勝手に動いてくれるもんで、オレは常人以上の速さにもついていけるんだわ。さて、次はそこの茶髪野郎だな。人間で魔法が使えるってことはあいつもお前も勇者か。流石噂の魔族姫だなエレナ。お前、勇者を二人も侍らせてるのかよ!」

「さ、サラさん……やめて、やめてよ! リリィは確かにサラさんの言う通り普通じゃないのかもしれない! でも、それだけで破壊するなんてあんまりだ! どんな存在にだって生きる権利がある! リリィは私達テネブリスと一緒に未来を生きていくんだから!」

「え、エレナ……」


 エレナは必死に声を張り上げる。サラはそんなエレナに頭をがしがし掻くと──苛立ちを隠せないといった表情を浮かべた。


「じゃあエレナ、一つお前に聞くけどよ」

「!」

「──お前、本当にそのリリィと一緒に生きる覚悟はあるのか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
サラさんが聖遺物を破壊してまわっているということは、聖遺物がとても危険だから……なのかな(;´・ω・) たしかにリリィくんの能力を考えると危険であることは間違いないんだけど素直ないい子だし、恐ろしい能…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ