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さまざまな短編集

科学と魔法の両立を看護師で

作者: にゃのです☆

 科学全盛のこの時代に魔法とは時代遅れかもしれない。

 私は魔法使いの血筋が濃く残っていて魔法を小さい頃から使うことができた。

 でも、今の時代に魔法使いなんて職業は全くない。

 手に職をと思って見つけたのがこの看護の道。

 

羽糸麻奈美(はねいとまなみ)といいます。手術室は前の職場でも経験がありますが、また一から学びなおすという思いで頑張りますので、よろしくお願いいたします」


 中途採用で就職し再び手術室勤務になることができた。

 病棟勤務では魔法の使用が少なくなってしまったからというのもあるし、使い分けがしにくくなっていたから前の職場を辞めた。

 魔法は結局、捨てきれずに日常の生活で普通に使っている。

 物を持ち上げたり、移動させたりと様々。

 便利なものなのだ。


「羽糸さん。今日はオリエンテーションから始めましょう」

「はい、師長さん」


 師長さんは年齢とはそぐわないくらい若々しい顔立ちで姿勢もきれいな方だ。でも、他のスタッフの評価はあまりよろしくない。理由は簡単。私が挨拶しているときは視線が集まっていたのだが、師長の話ではあまり視線を合わさない。顔も向けていなかった。

 魔法を使用すれば考えとかものぞけたりするのだが、初日からはまずいと思いやめた。

 こうして人間関係をどんどん探っていく。


 魔法を本格的に使用する場面は、やはり患者さんに関わることだ。

 数日後には手術の機械出しを行うことに。

 まず、機械は手洗いをして手袋、ガウンを着る。清潔になって行うのだが、魔法での開閉、整頓すれば短時間かつ不潔にしなくてできる。人に魔法の存在を隠すときはちゃんと手洗いが行うが、これができた時はなんて楽なんだろうと思った。

 それ以来、ずっと鍛えてきたので最も得意な魔法になっている。

 杖なんてのは映画や漫画の世界になったとでも言いたい。

 

「では、展開を始めます……」


 機械を載せる台を前にして、用意していた手術機材、衛生材料をそれぞれ開封していく。

 空中ですべてバラバラになり、タッチパネルの様に手で順番に並べていく。

 きれいに並べ終わったら清潔な布で汚れないようにして手術室の隅に置いておいて、次に部屋の準備をする。

 本当は部屋を準備した方が自然なのだが、魔法を使用してしまえば数分で終わってしまうので順不同にしていたりする。


「ふぅ。こんなものかな」


 あっという間にすべてが終わり、暖房で部屋を寒くないように温めておく。もちろんベッドもである。

 患者さんは緊張してくるのは当然なので、心情の変化に直接干渉して強制的に落ち着かせる魔法を手術室に入ると同時にかける。

 この魔法は昔、魅了して無力化する目的で使用されていたものをアレンジしたものだ。

 ただ、治癒自体に効くという魔法は全くない。一瞬にしてケガが、病気が治るというのはどの文献にもなかった。だから、ファンタジー、ゲームの世界の魔法だ。

 現実的な魔法しか使えないのでそれらだけでもフル活用する。


「こんにちは」

「あれ、緊張していたはずなんだけど、入ったら体が楽になったような気がする」

「そうですか? 手術はだれしも緊張しますからね」


 そう言って、ごまかす。たまに勘の鋭い人もいる。

 その時ばかりはちょっとヒヤッとする。

 手術は、麻酔科医が全身麻酔をかけて行う。魔法ならばまず、強制的に寝かせて、痛覚を遮断させ、脱力するように組み合わせなければならない。患者の体には負担は薬よりも断然少ないけど、魔法を持続させるためには三つのバランスが必要でほぼ同時というのがとても難しい。

 例えるならミカンを皮剝いて、絞って、シャーベットにしてというのをほぼ一瞬で組み上げて維持しなければならない。

 非常に疲れるので、ここは薬に頼ってしまう。


 患者さんが寝ると、手術の場所を確保するために動く。

 服を取って全裸にして消毒。その上から清潔な布をかぶせていよいよ。ドラマとかで見る「メス」というセリフに行き着く。

 機械も魔法ならば外から移動の魔法で先生に渡すことができる。

 それの繰り返しだ。


 こうして、手術を継続していく。私が魔法を活用したかった場所だ。

 でも、まさかそんなところで運命的な出会いがあるとは思ってもいなかった。


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