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告白、三角関係を整理する?

 再び食事。

 ワイバーン肉のステーキだ。

 俺は試食時に素材のうまみに感動したけど、異世界肉の味を既知の神族二人には調味料チートだろう。

 冷蔵庫にステーキのタレ、ヤキニクのタレは入っていたのでそれを。

 あとワサビ醤油も試してもらう。

 個人的には塩をふるだけで充分に美味い。

 さすがボスモンスターである、高級肉だ!



「お肉も美味しいけど調味料の変化がたまらないね」


「気に入ってもらえたなら何よりだな」



 やはりその感想か~。

 だがう~む。タレ類の在庫は僅少なんだよな~。

 当然だ。一人暮らしのおっさんに冷蔵庫なんだから。

 生前の俺は割と料理はする方だったが、限度はある。



「調味料の補充は当面、ネット通販頼りだろうからな。そのためには稼がないと」


「そうだろうねえ」



 そうして話が資金集めの方針へと戻るわけだった。

 上級神と俺のグルメトークにエターナルはまるで入ってこず、モグモグ、だけど……。

 ……気まずい。

 食材を口に運ぶたび、ほう♡なんて感激はしてるんだが、すぐに不機嫌な顔に戻ってしまう。

 聞いてはいるんだろう。

 ちゃんとそれぞれの味付けを楽しんではいる。

 今のぜいたくを続けるのにお金が必要なのも理解はしている。

 だが。

 それでもモヤっとするんだろうな。

 理性と感情は別ってことだ。

 というのも……



「ご主人様、いかがでしょう」



 この部屋にいる二人目の女性(もうそう明言してしまうべきだろう)=リッチが有能過ぎたからだ。

 食うだけのエターナルにあてつけるように有能。

 リッチは一人、資金集め計画を始動、食事会の脇で、お裁縫というか異世界訪問用の衣装作りに励んでいたんである。

 確かに、今、俺たちが着ている衣装では目立ちすぎる。

 素材からしてまるで違う。

 冒険者として活動するなら、異世界標準に合わせる必要があるだろう。 


 もっともリッチ自身は断固、俺に買ってもらったメイド衣装で押し通すつもりらしいので、意味ないじゃん、なのだが。


 それもハニートラップ計画のためには好都合なんだろうか。いいのかそれで。


 元の素材は、ダンジョン第二層にあったものである。

 アンデットたちの身に張り付いてるのはボロボロの布切れだが、彼らが徘徊するフロアーは滅びた街といった風情。

 無人になる前の面影を残す服が残っている。

 ヴァンパイアの城には貴族風の高級なものも。

 布素材さえあればリッチが裁縫でつくろえるようなのだ。

 このへんは肉の素材となったゾンビの生前の記憶だったりするのかも。

 裁縫以外にもいろいろできるんじゃないか?

 理想的なメイドさんといえよう。

 有能きわまりない従者だった。



「助かる。すごいもんだ。これなら計画もはかどるってもんだろう」


「……♡ ありがとうございます」



 そりゃ褒めますよ。

 部下が頑張ってくれたら礼は言う。その言葉でさらに情熱を燃やしてくれるならありがたいことだ。

 若干、まなざしが艶っぽいが、ううむ。

 この過剰な好意のアピールがなければ、リッチは理想的な部下なんだが……。

 ドヤ顔でエターナルの方をチラ見するリッチ。

 怖いもの知らずだ。

 まるで三角関係だな。


 ダンッ!


 エターナルが床をけりくさる。

 おかしいだろ。

 ここで怒ったらまるで本当に俺に気があるみたい……




 まあ。そういうごまかしはいいかあ。




 上級神が苦笑するような顔で俺を見た。

 他人事だと思って。

 う~ん。

 正直面倒くさいがハーレムもの主人公のように女性二人の好意に気が付かない鈍感キャラを演じるというのも俺の性に合わん。

 サクッと人間関係を整理するとしよう。


 なので直球で、俺は言うのだった。






「エターナル、俺と結婚するか?」


「ぶほっ!」





 むせてる。

 おまえが上級に昇級したらだけど、なんて続けたんだがちゃんと聞こえてるんだろうな。

 なので、今すぐってわけじゃないが。

 


「いや。おまえとはずっと友人でと思ってるから。三角関係でごちゃごちゃするのはつまんないだろ。リッチにヤキモチ焼いて黙りこまれるのは困る。友人としてのおまえの気持ちが最優先だが、俺の方はおまえの外見も好みだ。俺は、おまえを嫁にするのに異論はないぞ」



 快楽堕ちは困るんで、欲望に打ち勝てる上級神になってからだけどな。

 もちろん我慢だけじゃつまんない。

 美味しいものも我慢せず食べる。

 そのためにお金が必要なら稼ぐ。

 働く以上はその仕事だって楽しみたい。

 リッチとの関係もそのためのもの。

 

(リッチの好意、若干ヤンデレ風味、は計算外だったがある意味メイド体質といえばそうなのかも)


 そう理屈道理にうまくいくかはわからないが、うまくいくように努力する。

 人生ってそういうもんだと思うのだ。

 Hなことも同じだ。

 エターナルが俺を異性としてみているなら(ぶっちゃけエターナルがHなことを出来る相手は俺しかいない、なにせ現状、俺の部屋の中でしか実体化出来ないので)やぶさかではない。

 すごい美人だし、スタイルもバツグン。

 許されるなら俺もエターナルとそういう関係になりたい、今だってただ我慢してるだけだ。


 ……というようなことを素直に訥々と俺は語った。


 お返事。





「す、するっ。ユージとけ、結婚しますっ」


「おう。わかった」





 やっぱり、するんだ。

 天然の誘惑アピールを続けていたのは、それなりに気持ちがあったということなんだろうか。

 それも深い考えがあってのこととは思えない、子供っぽい後先考えない欲望の発露なんだろうけど、そんなモヤモヤがリッチという焼きもちを焼く対象を得ることで、爆発した感じ……なんだろうなあ。



「ほれ。そうと決まったら落ち着いて食え」


「う、うん。……ありがとう」


「お肉のあとは野菜と炭水化物だ。パンはさっき食べたから、今度はお米。食ってみろ」


「うん、いただきます♡」



 メニューはカレーだ。

 カレーはルーの在庫はあったが、野菜は通販で購入したもの。

 異世界ネット通販の野菜は中々に新鮮。

 お米慣れしていないから、単品の料理で完結する丼物やカレーがよいだろうということで、こうした。

 缶詰めのシーチキンも投入。

 一応これでお肉、お魚、野菜。

 主食であるコメとパンもコンプリートという寸法だ。



「おいしっ。甘辛くて、舌に残るっ♡」



 何か、素直なリアクションだ。

 ハーレムものにお約束の、あんたのことなんか別に好きじゃないんだからねっ、的なツンデレ感などまるでないエターナルは、直球でデレデレだった。

 そうなんだよなあ。

 幼児的というか、普通に俺を自分の所有物と思っているというか、なんでも言うこと聞いてくれる保護者のように思っているというか、自分への無条件な好意を確信しているのがアリアリ。

 そして好意を見せてもらえさえすれば、好意の倍返し。

 中身、完全に子供なのだった。


 見た目はエロエロのボンキュッボンなんだけど。

 嫁になるのを了承したんだ、もう不敬罪もくそもない、素直な感想を言わせてもらおう。

 エターナルはエロい。

 そりゃ俺だって普通にHなことをしたいエロさ、なのさ。

 なら彼女の幼さにつけこんでモノにするのはやぶさかではないだろう。

 

 あと一名、完全なヤンデレの方は……


 目元からつ~と涙を垂らし呆然と瞳を見開いていた。

 レイプ目ってやつだな。



「リッチ、おまえも食え」


「……。グスッ」



 あかん。死に体だ。

 というか元々アンデットだが、もはや心まで死んでいる。

 自分で蒔いた種でもある、少しサービストークをしておくとしよう。



「リッチ、おまえの好意に悪い気はしない。だが、あくまでエターナルの気持ち優先だ。おまえが俺と男女の関係を望むとしても、俺が浮気するのはありえない。エターナルが女神だからという問題ではなく、俺が最初に出会ったのがエターナルだからだ。おまえはその後。だからおまえのためにエターナルをないがしろにすることはありえない……これはシンプルで無慈悲な数学だ」


「……。ううう。グスッ」


「だから、リッチと俺が男女の関係になるとしたら、正妻であるエターナルがリッチが第二婦人になるのを望む場合に限られる。ようするにエターナルがおまえを好きになる、例えば妹のように、もしくは親友のように、そう思った場合のみに限られる、ということだ。そこに俺の感情は存在しない。これも数学だ。この世の真理でもある」


「……。」



 ここではっきりクギを指す。

 同時に、か細いが一筋の光明も提示する。

 遠回しにハーレムもやぶさかではない、と言ってるわけだが、それはエターナルの許可次第とすることで矛先をそらす効果を狙う。

 今後もリッチと俺はともに行動する。

 その際、誘惑されたらたまらん。

 美人の誘惑を耐えきるのはエターナルで懲りた、だったらその労力をエターナルとの交渉についやしてもらおうという作戦。


   俺

  

エターナル × リッチ


 だからダメなのだ。



俺=エターナル×リッチ



 にすればよい、そういうことだ。



「ユージさん。それって……」


「言うな上級神。ここから先は運を天然に任せるだけだ。ハーレムの成就はエナーナル頼み」



 もし、エターナルの許可が下りたらって?

 それはリッチも合わせて美味しくいただきますよ?

 実はそれなりに勝算はあると思っていて、というのもエターナルは極めて子供っぽいからだ。

 ボッチなエターナルは俺を保護者のように思っている。

 男女の愛情よりもむしろ、そんな愛着の方が大きい。

 そんな幼女エターナルのはじめての女友達がリッチ、となる可能性はかなり高い。

 リッチを幼稚園の親友、俺を保護者ママくらいの人間関係にするなら、俺は主食を二人GETすることが可能となる寸法なのだ。

 ま。

 取らぬ狸の何とやらだし、俺は保護者といってもパパの方だけどさ。


 グズグズ継続なリッチにもカレー皿を差し出す。



「グスっ。私が皆さま方と同じ食事ぉいただくっ、グス、わけには……」


「遠慮するな。リッチには異世界食材で日本食を再現してもらわないといけない。そのおまえが料理の味を知らないでどうする。な、エターナルもそう思うよな?」


「そうよ、食べなさい」



 リッチが驚いたような顔をした。

 勝利者となったエターナルはすっかり安心、リッチをライバルから普通に興味の対象とジョブチェンジしている。

 へんにライバル意識を抱いて張り合うからエターナルがイラッとするのでリッチの恋敵アピールは逆効果なのだ。

 普通に獲付けすればエターナルは釣れる……と思う、多分。

 あとは料理人としてのリッチの腕次第。


 素体となった人の中に料理の達人がいればいいんだけど。



「ユージさん。人間社会にいったら著名な料理人のお墓をあさるという手もあるよ」


「その手があったか」



 いつまでも俺の素人料理と言うのもあれだしな。

 リッチのお肉に料理人の素材を混ぜて……いやいやねーわ。

 死体あさりでなく、有能な人材のDNAを合法的に採取する手はないものだろうか、う~む。要検討だった。



「グズッ。ご主人様、美味しいです」


「そーよユージのご飯は美味しいんだから」


「は、ハイ。エターナル様。ぅぅありがとうございますぅ」


「うふふ♡」



 割と面倒見のいいエターナルは独占欲などどこ吹く風。

 やはりこいつはポンコツ。

 基本持ち上げとけばどうにでもある、という俺の方針に間違いはなかった。


 しかしなあ、このポンコツと結婚かあ。

 まあ単純な性格も嫌いじゃないし、彼女の、ないすばでぃ、に不満はない。

 それでも独身を謳歌すべく購入したワンルームマンションでいきなり美女と同棲、あわよくばハーレムまでも、なんて展開は神ならざる俺にはまったく予想もつかなかったよ。

 アイテムボックスに入ってる独身謳歌用の装備おもにエロほんなどどうしよう?

 上級神あたりに売れないものか……

 なんて思案している俺に次の展開を用意するのはやはりエターナルなのだった。

 


「ユージ、お腹のあたりが……へん。お腹、苦しい。ていうかい、いたい」


「おっときたか」



 はじめて生身の体を得たエターナル。

 それがこれだけバクバク飲み食いスレばお腹も膨れる。

 はじめての下体験。

 ぶっちゃけオシッコウンチの下の世話をするのは婚約者となった俺の役目のようである。

 というか一足飛びに婚約したからいいが、でなきゃ、下の世話どうするつもりだったのだろう?



「イダダ、助けてユージ、あいたた」


「おう、おまかせあれ、だっ」



 どうやら俺はこのポンコツ女神のお世話から離れられない運命らしかった。



 

 

 

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