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飲食開始、女神を考察する?


 組み立て式の丸椅子に座ってもらう。




    窓




   ◎ ◎

カウンター   


  俺

キッチン



    玄関 





 こんな感じだ。

 壁際にはズラっと食材の在庫が置いてあり、お菓子やカップラーメンなんかもあるんだが、エターナルの興味はそちらにいかないようである。

 はう♡などといいながら、椅子にお尻を乗っけている。

 思うにはじめて得た体の感触に集中して周囲に目をやる余裕がない。

 本当に生まれたばかりの赤ちゃんみたいだ。



「エターナルが自分の体に慣れるのを優先するべきかな?」


「ふみゅ。そ、そう?」


「そうだね。現状だと危なっかしい」



 上級神は俺がエターナルの誘惑に打ち勝ったのに感心しているようだ。

 別にそういうつもりはないんだけどね。

 俺だって体が若返ったせいか、無防備な女神の女神ボディにムラムラきてないかというと、少しは来ているんである。

 ただエターナルの場合は性的な誘惑とは違う気がする。


 むしろ赤ちゃん返りというか……



「ちょっと試してみれ」



 ぽふん、と出したのは例の名店のチョコレートだ。

 神界で食べたやつ。

 あむ、と咥えるエターナルの顔が、あふぅ♡なんてアヘ顔に変わった。美味し過ぎてエクスタシーに達したみたいだ。



「うむ。やはり、全然違うみたいだな」


「あぅう♡んふ~……ペロペロ♡んほぉ~~~♡」


「そりゃ体のあるなしで味覚が違うからねえ」



 神界の神ボディと俺の部屋に入ることで実体化したリアルボディの違いか?

 上級神も顔は平気だが物欲しいはずだ。

 チョコを一枚と飲み物は……



「では日本茶で」



 俺の分と二人分の日本茶を入れる。

 抹茶だ。

 年取ったらこういうのも美味しく感じるようになって、葉っぱも急須も常備してある。

 エターナルには上級者向け過ぎる気がするが……。

 彼女にはジュースなんかがいいんだろうか?

 だがその前に……



「おまえ、ちょっとこれ飲んでみろ」


「はう。はい~~~」



 チョコを舐めきってすっかり夢見心地なエターナル(まるでHなことの事後のようだ)にコップに入れた水を差し出した。



「はわわ。冷たい」


「やっぱりか。落とすなよ。ガラスだから床に落としたら割れるぞ」



 特に冷やしてもいない水道水なんだが、自分の体温との落差で冷たく感じるようだ。

 まず温暖の感覚からしてズレている。

 そんなエターナルに、冷たいもの、熱いもの、普通のもの、そんな常識から教えていく必要があるだろう。

 どうしようか?


 まずはパンを切った。

 切りながらあらかじめ、宣言しておく。



「こいつは少し熱い奴だ。びっくりして落っことすなよ」


「う、うん。がっ頑張るよ」



 エターナルなのに真面目な顔になっている。

 珍しい。

 実際は言うほどHOTホットなわけでもない。

 ホームベーカリー製のパンを冷ましていたのだが、ちょうどいい、とエターナルの勉強用に流用したんである。

 焼き立てパンは熱くてふわふわ過ぎてパン切り包丁でも奇麗に切れない。それもあって冷ましてから食べるんだが、今回は特別、まだあったかいパンはちょっと形が曲がって切れてしまったがよしとする。



「ふおお、あつうっぅう♡やわっ、やわらかぁぁぁあ♪」



 思った通リのリアクション、どーも。

 まあ、焼き立てのホームベーカリーのパンは、トースターで焼きなおさなくても生食でもうまいからな~。

 といっても本当の焼き立てに比べればちょっとほんのりくらいなんだが、エターナルには充分刺激が強すぎたようだ。



「上級神はトーストする?」


「では、それでお願いします」



 焼きトーストの出来上がり。

 エターナルに端っこに指先で触らせる(上級神の許可はとってある)と、あつう、と指を引っ込めた。



「これが普通くらいだ。油断すると舌をやけどするが、慣れれば全然いける」


「ううう。練習するぅ」



 少し涙目ですがるような視線である。

 生パンであつぅ、ってくらいだからな。

 パンだから落としても問題ないが、コップや茶碗は確実に割るだろう。

 俺がつきっきりで、ぽふん、と落っことした茶碗類をアイテムボックスに収納してあげないと、エターナルの食事中は目が離せそうになかった。



「熱い方はガチでやけどの心配がある。まずは冷たい氷からだ」


「うん。割りと平気……んんん、つめた、つべたぁぁああ!」



 手のひらに氷を乗っける、なんてことないじゃん、から次第に悲鳴に変わっていく。

 まずは氷の特性を知ってもらうことだ。

 大丈夫だと思って丸呑み→喉に氷や熱湯が入った後で→ぎゃああ! では俺としても防ぎようがない。

 体の外側は、ぽふん、でやるとしてエターナルの胃の中に入った食材を収納したくないからな。



「ううう」



 それでも慣れたのか氷の入ったグラスのオレンジジュースを飲めるようになったエターナルなのだった。

 おっかなびっくりだけど。

 生まれたばかりの赤ちゃんだと思えば、そのくらいが用心深くてちょうどいい。

 しかし改めて思うが、実体化直後の女神は、本当に赤ん坊同然でこの状態につけこんだら快楽堕ちさせるのは容易いんだろうな~と実感できた。

 やらないけど。

 ま。

 一人前に体のコントロールが効いて、その後でまんざらでもないなら検討させてほしい。

 今はすっかり保護者目線になっちゃったしな。



 まだ料理は残っているんだが、エターナルのお世話をしていたら、無駄に時間がかかった。

 本題に入ろうと思う。



「収入の確保についてだ」


「しゅうにゅう?」


「確かに、今、ごちそうになった食材でも結構な値段」



 そうなのだ。

 水はエターナルが魔法で作ってくれるが、ホームベーカリー用のパン粉の単価は250円。

 買い置きはすべて使い切った。

 同じものを通販するなら、この世界の単価では体感二万五千円の金額をぶっこむ必要がある。



「二万五千円は神感覚でもきついよ。金銭感覚は神も人間も変わらないから」



 そう言う上級神。

 そのへんの感覚はすでに話を聞いて承知済だ。



「でもこんなオイシイの我慢できないよう。もっと食べたい」



 エターナルが我慢できないのも予想済。

 ここは上級神と中級神の違いだから仕方がない。



「エターナルは自分の仕事を頑張ってくれればいい。まずは上級への昇給。上級神には家庭教師をお願いしたい。報酬は現物の食事で払う」



 エターナルの成長は必須事項だ。

 例えば今飲んだ水だってエターナルの魔力が作ったものだ。

 いつ?

 この部屋に来る前だ。

 マンション備え付けの魔力タンクにあらかじめ魔力を保持→それを使い水を生成→人化したエターナルが自分で飲んでいる、そんなイメージである。

 つまりエターナルが快楽堕ちして、ずっとこの部屋で食っちゃ寝してる~、になったら詰みということになる。

 魔力タンクはそんなに長くはもたない。



「それは困る……かも」


「だろ、頑張ってくれ」



 思案顔のエターナルはすでに、いっそ快楽堕ちしてしまいたそう、な表情だったりする。

 よかった。

 食事だけでこれだ。

 それも生パンとジュースだけだ。

 上級神はマーガリンを嬉しそうに塗っていたが、それすらない生パンだけでこの中毒症状。

 間違って、誘惑(?)に負けてHなことをしていたら詰みだった。

 まあ。

 いよいよになったら、けっぽって廊下に放り出せば正気に戻るんだろうが、快楽中毒が進んだらそれもわからない、用心も必要だろう。

 

 オシッコ、うんち、お風呂のお世話もある。


 今後、下の世話の際にエターナルと肉体接触する機会は避けられない。

 その前に決心を固めさせないといかん。



「エターナルと上級神には、ある意味今まで通リの仕事を頑張ってほしい。夕飯を食べにうちに来るくらいのイメージだな」



 エターナルが、え~。

 こいつ朝昼晩と入り浸るつもりでいやがる。

 本当に大丈夫なんだろうな、快楽堕ち対策?



「その間の収入は、俺に策がある。ちょっと見てくれ」



 俺は眷属であるリッチを呼ぶ。

 頭の中で思い浮かべるだけでいい。

 すぐに、ピンポ~ン、とインターホン。

 部屋に入ってもらう。

 ガイコツだが、え。お部屋に入っていいんですか、なんて表情が読み取れた。

 ガイコツなんで表情ないんだけどな、思考を直接読み取っているのかな?

 まあ、いい。

 本題だ。

 リッチが届けてくれた荷物をガサゴソとエターナルがあさっている。



「服? ひょっとして買ってくれたのユージ?」


「違-よ。おまえじゃない」


「は? 女物でしょ? 私以外に誰が着るのよ? ……まさかユージが女装?」


「だから違-よ」



 だがしかしエターナルの勘違いもやむなしというものだろう。

 この部屋に女はエターナルだけ。

 だというのに届けられた荷物は、女物の上下。

 ぶっちゃけて言えば、AMAZONから通販で購入したメイド服だったのだから。

 一万以上したんで体感レートでいうと100万円。

 おいそれとは買えないはずのぜいたく品……なのだが、俺にはこの程度の収入を得る算段があるのだ。

 


「第一層を開拓、農地にといっても時間がかかる。まずは人間社会に出向き、冒険者をするなどして、日銭を稼ごうと思う」



 俺はそう切り出した。

 二人の返答。



「うん。良い手だとは思う。でもユージさんは」


「そうよユージは戦闘力がない、人間社会に行ったら悪人に一発で殺されちゃうよ」



 エターナル。

 自分の管理する世界がそんな物騒だと断言するのはどうなんだろうな。

 そこに気が付かないのがおまえらしいポンコツさだが、ここは心配してもらってると喜んでおくべきなのか。

 う~む。



「は。まさか私を人間社会で働かせて、ユージがヒモとして贅沢三昧する気じゃ」


「だから違-よ」



 断じて違う。

 何より俺はエターナルにそんな生活力があるとか有能だとか、微塵も思っていない。

 こいつのとりえはごり押しの魔力と見た目だけなんだから。



「リッチを使う」



 俺は、恐縮して玄関口にとどまっているリッチに目を向けた。



「リッチを人化させ人間社会に潜入、お金を稼いでもらう」



 そう。そういうことだ。

 メイド服なのは人化=女体化させたリッチに着せ、メイドさんにするためだ。

 やっぱり部下は、ガイコツよりメイドさんの方がいいに決まっているからな。

 女体化させるのに迷いはない。

 男の部下なんてまっぴらごめんだし。


 ではどうやってスケルトンの魔物を人化にょたいかさせるつもりなのか?


 その秘策は次回、こうご期待!

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