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逮捕直前、女神を弁護する?

(不動~戦士~♪ マン~ション~マンション♪)



 などと歌っている場合ではない。マンションは不動産なので機動力がない。ロボットはやはり機動力=高速戦闘が華だと個人的に思っているんだがマンションではそうはいかない。機動戦士ならぬ不動戦士というわけだ。

 ま。

 それも実際にマンションに入居できたらの話で、現状、俺が入居者パイロットになれるかどうかも怪しい雲行きとなっているのだったが。

 エターナルは上級神に逮捕されかねない勢いである。

 

 仕方ない。フォローしてやるか。



「あの~僭越ながら……金額の不足(スマホ代金2万円のところ一万二千円しか持っていない)の件ですが、エターナルさんにも悪気はないということで」


「しかしルールはルールですので」



 うむむ。なかなか厳しい。

 別に意地悪ではなく上級神さんも心底困っている、むしろ同情しているのが表情から感じ取れる。些細なことのようだが、代金の不足は上級神でもどうこう出来ない重大事項なのかもしれない。神界という企業(?)のコンプライアンスにおいて。

 仕方ない。プランBを提案してみよう。



「あのですね。管理費、修繕積立金は月あたり一万二千円ですが、電気ガス水道といった公共料金もありますよね?」



 そうなのだ。それを足せば二万円くらいにはなるんじゃないだろうか?

 そういえばネットの通信料はどうなるんだろう、あとで聞いてみるとしよう。

 上級神さんが答える(ちなみに見た目は渋いオッサンだ。イケメン。多分俺より若い。ひょっとしてエルフ? ってくらいのいい男である)。



「ん~お気持ちはわかりますが、支払いは今日じゃないですよね。公共料金の前払いは認められません」



 やっぱそうなるか。

 俺の提案を聞いてエターナルはパッと顔を輝かせたのだが、すぐにシュンとなってしまった。

 ちなみにネット料金はタダらしい(上級神さんが言ってた。きっとエターナルが自分でスマホでネットサーフィンする都合なんだろうな。さもありなん)。

 となるとアレか。プランC。

 ん~できればこの案は避けたかったんだが……というのも俺の出費がかさんでしまうので。



「では、駐車場を一台借りましょう。このマンションの地下駐車場は一台8000円のはず。合わせればちょうど二万円。問題ないはずです」


「うむ。それなら。う~ん。でもどうなんだろう」



 上級神さんが食いつく。

 実際、これなら金額の問題はおおよそなくなるはず。

 ただ8000円というのは将来を考えると難しい問題である。貯金があるうちはいいが、現地通貨換算だと8000円=80万円だからなあ。管理費修繕積立金と合わせて月々200万円というのは行き過ぎである。

 ちなみに前世ではマンションから少し離れた場所に駐車場を借りていた。

 空きがなくてマンションの地下駐車場は借りれなかったんだよ。

 そんなわけで、そこに車を止めて徒歩で新居に向かっているところで、トラックに轢かれたんだよね。

 車は財産として持って逝けるというし、無理筋な話ではないと思う。


 異世界マンションの入居者は俺しかいない。駐車場もガラ空き、問題ないはずだ。



(異世界で車の使い道があるかはわからないが……なにせダンジョンの中だというし)



 いらなければ、解約すればいい。

 当面、物置代わりには使えるだろう。

 何せ新居はワンルームで狭い。DIYディーアイワイというか日曜大工で家具を作ったりにも、作業スペースすらないからな。

 駐車場も結果オーライで役に立ってくれるかもしれない。

 エターナルがウルウルしながらそれでも……助かった? なんて表情になっている。

 ダメ押すか。



「スマホの値段をしっかり確認しなかった売主の私にも不手際はあります。二万円で不足する分は手数料としてお払いしますよ」


「それなら、問題ないですかね……ハイ。確認が取れました。正式な売買として承認します。密輸の容疑はこれにて晴れたということに」


「ふわわ~ホッとしました~」



 エターナルが心底ほっとしたように、椅子に体を投げ出した。

 確かにちょっと疲れた。

 休憩といくか。

 ちょうどいいのがあるんであれを出そう。



「お茶でもどうですか。いいお菓子がありますよ」


「おおっ♡」



 元々は引っ越しの挨拶用なんだけど……地元で人気のお菓子屋さんの手造りチョコレートである。

 5枚で1000円もする贈答用。

 これが三袋ある。

 一つは管理人さん……これはもういらない。管理人さんはエターナルなんだろうしね。

 あと二つは両隣……実はうちのマンションはオートロックつき。いきなり両隣にピンポーンとやったら逆に失礼かもしれないんだが(そりゃそうだ。見ず知らずの人のピンポンを防ぐためのオートロックなんだから)、一応用意はしてる。

 うちのマンションはオートロックつきということで若い女の人も入居しているらしく(多分、賃貸)、そうなるとおっさんが突然隣に引っ越してピンポンというのは(いかに引っ越しの挨拶とはいえ)逆に失礼。場合によってはマンション入り口で宅配便の人のようにお隣さんを呼び出し、鍵を開けてもらい入館といった手間を踏むべきだろうか(まあそれも管理人さんに相談してからだ)、なんて考えていた。

 なので今チョコを提供してもまだ二袋余る。

 チョコはスマホと違って持ち歩いてはいない。車の中に置きっぱなしである。

 どうやって取り出すのか、練習になってちょうどいいだろう。

 念じると俺たちが座る机(普通のオフィスにあるような机だ)の上にぽふん、と出現するチョコレート。



「おおっ♡これが日本の××地方の人気店のチョコなんですねッ♡」



 ××ってのは俺の地元の地名。

 地方の県庁所在地だ。

 食いつきぶりから見るに、俺の地元の知識はエターナルは検索済みらしい。

 お茶は……ない。

 それも俺が用意しないとなのか。

 上級神さんが教えてくれたのだが、



「われわれ神族は普段は食事をしませんから」



 ということらしい。

 へ~そうなんだ。

 お茶は旧住所の方には台所用品丸ごと残っているが、それをこの場に取り出すのもどうよって感じである。

 この転生待機空間、どう見てもオフィスだし。

 というか、生前にマンションの契約を決めた不動産屋の部屋にそっくり。

 エターナルのやつが完コピしたんじゃないだろうか。



「ユージさん、チョコだけでもいいので是非に」



 ま。

 コイツがいいというならいいか。

 お茶の習慣が無いというんだから、無くても失礼にはなるまい。



「上級神さんもご一緒にどうですか」


「いいんですかッ」



 おおう。予想外の食いつきである。

 エターナルのように顔に出ないだけで、上級神さんも地球のお菓子や食べ物に、内心、興味津々だったりするんだろうか?

 さっきの逮捕騒動から考えても、神界のルールかなり厳しいみたいだし。

 神様とはいえ好きに日本の食材を入手できないんだろう。

 それもあってエターナルはこんな回りくどいことをしているんだろうし。


 ちなみに正式な契約には上級神さんの立ち合いも必要なんだって。

 転生はエターナルだけでいいんだけど(なにせエターナル本人が異世界エターナルの管理神)、不動産契約について。

 何せエターナルの力で作った神の宝具マンションを区分所有とはいえ一部俺に譲渡するわけだ。

 エターナル本人以上の上役のハンコ(?)が必要らしい、神界ルール的に。


 何だか前世の不動産購入を思い出す。

 俺が購入した物件は流行りのネット検索で探したものだけあって、不動産屋さんの所有ではない、仲介物件だったのだ。

 それもあって不動さん屋さんの担当のお姉さんには、行政書士(?)っていうの? そんな感じの資格が無くて、別の人を立てる必要があった。

 それもあって仮契約から本契約まで時間が空いて待たされたりもした(書士さんのスケジュールの都合)。

 不動産屋さんが買い取り済みの自社物件なら手っ取り早いのだろうが、売主さんと俺の間に仲介の不動産屋さんのお姉さんが入り、加えて書士さん、かなりのてんやわんやだったのを思い出す。



(最近の中古物件……それもネットで検索可能な物件というのはそんな感じで仲介物件が多いみたいだ。マメ知識である)


 

 とまあ。そんな前世での不動産購入を懐かしく思い出す、俺。

 あの時も若いお姉さんの担当者とシブイおっさんの書士さんだったなあ。

 何もかも皆懐かしい。

 そんなこんなのお茶会である(お茶なしのチョコレート会だが)。



「うま♡うま~~♡」


「ほう。これはなかなか」


「さすが人気店! 人気店の味! しかも一枚二百円!」



 あ。

 忘れてた。

 二百円のチョコでもバカ高なんだが(そんなんあくまで贈答用で普段食いなど出来ん)、異世界換算だと100倍の二万円なんだった!

 二万円のチョコ……失敗した。俺の分は食わずにとっておくべきだったか。

 エターナルに売りつければよかった。

 上級神さんにも売れたかも。


 ちなみにこれは別に密輸にはならない。

 俺があくまで好意であげたものだし、転生者である俺の財産は密輸じゃない。

 神が直接、地球のモノを買うことは密輸だが、転生者=正規の販売店を通せば正当な取引。



(そこはなんでなんだろうね。税金の徴収の問題でもあるのかね。知らんけど)



「うま。もう一枚! もう一枚、是非に!」



 くそう。今更引っ込めるのもアレだ。

 それにエターナルは現金を持っていない。

 仕方ないが二万円のチョコをみすみす差し出すしかないようだ。

 ま。

 考えてみれば元々引っ越し祝い。

 そのために人気店(実際、人気があってクリスマスにはケーキを予約するカップルの行列が数十メートルにもなる地元の風物詩)のお菓子をわざわざ用意したんだし。

 これだけ喜んでいるなら本望である。

 俺はまあ、一枚二万円と思うとちょっと高級過ぎて手が出ないが……



「ああ。上級神さんももう一枚いります?」


「いいんですかッ!」



 おおう。予想通リのくいつき。

 エターナルほど顔には出ないが、だんだん上級神の性格がわかってきたぜ。

 ちなみにエターナルは完璧に把握した。

 なんせあいつときたら予想通リ、ぐぬぬ…とばかりに上級神の手に取られたチョコを恨めしそうに見つめているのだから。



(こいつ五枚中、三枚一人で食うつもりでいやがった……予想通リの食いしん坊だ)



 




 とまあ。そんなこんなで有名店の甘味のおかげで和やかにすすむ不動産契約。

 その詳細は今は省略して、おいおい話すとしよう。


 次回は、つに新居への入居である。



(不動~戦士~♪ マン~ション~マンション~♪)



 俺はついに不動戦士うそただのマンションのパイロット(ただのじゅうにん)となる!






お世話様です。

実は諸事情で投稿をお休みしていたのですが、復帰するにあたり新作です。

まだ感覚が戻りませんが、おいおい。

作者は普段R18の方でやってるのですが全年齢も執筆のリハビリにいいか、なんて思っています。

中断している連載(R18)もそのうち再開予定。


異世界マンションのR18化もあるかも?

どうでしょう。全年齢がよいかR18がよいか……読者様のご意見をお待ちしております。

今後ともよろしくお願いします。けいぐ。

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