回想終了、ダンジョン攻略開始?
とまあそんなこんなで始まった、領地運営。
怒涛の日々を思い出し、遠い目になってしまう俺の回想も終了なのだった。
ちなみにマンションを利用した公共工事だが、実はこれ、マンションの強さを示す、デモンストレーションの意味もある。
ダンジョン攻略、および第0層としてオーク牧場を運営するにあたり、住民から『観光客はビビるのでは?』というしごく当然のダメ出しを受けたからでもある。
実はこの世界、魔物の被害はそれほどでもない。
かっての英雄の時代以前は、テンプレファンタジー世界のように魔物VS人類といった世界観だったそうだが、剣王ブレードの時代に人類領域と魔物領域の住みわけがなされたそうで、普通に人類の生活圏にいる限り、まず魔物に食われるなんてことはないそうな。
魔物=人食い鮫、人食い熊、みたいなもんか?
『北海道って観光に行くにはいいけど、住むのはちょっと(熊に食われたくないし)。北海道ならロシアが攻めてきても大丈夫な気がする。道民はクマより強いし』
なんて日本人が冗談で言う際の熊くらいのポジションに魔物が落ちぶれているそうなのだ。
上級神曰く、
「ユージさん。魔物と人間の争いがいい感じに拮抗して、人間たちをほどよくレベルUPさせるには、世界管理神のきめ細かい介入がないとまず無理なんだよ」
「そういうもんか」
考えてみたらそうかもしれなかった。
ちょっと魔物が優勢になったら人類なんてあっさり滅びそうだし、逆なら魔物が家畜化される。
そんな細やかなゲームバランスの調整なんてエターナルに望むべくもないし、何よりエターナルは自分の采配で人が死ぬのを嫌がりそうだ。結果、放置→出来上がったのが今の停滞したエターナル世界の現状って気がするな。
だが、転生を経験したことで俺は良い意味での割り切りができている。
せいいっぱい頑張ってだめなら生き返ればいいじゃん、なんて思っている。
だがしかし、だ。
「そりゃ転生未経験の皆さんは凶悪な魔物相手の戦い、ビビるのは当然かww」
というのも当然ではあった。
で、折衷案。
俺たちは冒険者ギルドの戦力アピールイベントとして土木工事をやっているのだ。
何故ただの土木工事が強さのデモンストレーションとなりえるのか、こういうことである。
「それでは発射いたしまーす」
ドーン!
マンションから発射される、重力砲。
こいつの一撃が地面を削り、べっこりと盆地のようなくぼみを大地に作る。
(この強大な力があれば魔物の襲撃から冒険者ギルドは住民を守ってくれる)
そんな信頼関係を醸成するために早朝一回、イベントを兼ねて行う、という決まりになったんである。
最近は、冒険者のみならず観光客も多いしな。
重力砲=旧、グラビティ・マンション・フィンガーなのだが、改良点はあって、発射時にブワッ! と土煙をあげるよう改良してある。ビームの動線は相変わらず透明なんだが、発射のブワッだけでも人間、何となくビームの流れを想像できるようで、こんなんで充分。
努力のおかげか、観光客にも好評のよう。爆発に歓声があがっておる。
(なんだか不動戦士というより超時空要塞マンションって感じだ。マンション=マクロス。そうなると冒険者たちはマンションの艦載機のバルキリーのポジションだろうか? バルキリーいいよね、変形は男のロマンだ)
冒険者連中はリポップしたオークと戦闘中だ。
ぶひいい!
リポップし出現したのは、豚人間。
ダンジョン第0層となったこの地は、オークの狩場として冒険者を呼び集めることに成功、栄えつつあるんである。
オーク肉は美味しい。
観光客にも喜ばれている。
俺たちが狩ればタダで手に入るオーク肉だが、今では元奴隷たちの作った飲食ギルド(?)が懸賞金を出して冒険者に狩らせている。
俺たちが独り占めしては金が回らない。
損して得取れである。
ではどのように得をとるのか。
「うわああ!」
オークの怪力にブッパされた冒険者が吹っ飛ぶ。こりゃ相当酷い骨折をしている。
このままでは使いものにならないだろう。
仲間の女冒険者が駆け寄る。
このパーティーは男一人に女三人。うむむ。感じ悪いがお客様だ。内面は押し殺してお仕事しなければ。
「転移!」
女冒険者の叫びで、冒険者パーティーは盆地上の出発地点まで舞い戻った。
ここで治療となる。
そう。
俺たちは冒険者の転移、および死者蘇生(!)で儲けているのだ!
ファンタジーのRPGを思い出してほしい。
プレイヤーは死んでも復活する。
『おお勇者よ、死んでしまうとは情けない』
とか、そういうやつ。
ペナルティーとして持ち金が半分になっちゃったりはするけど、でも死なない。
これを再現したんである。
どうやって?
もちろん、アレだよアレ。
アンデット化することによってww
え~、って言われるだろうが、大丈夫。
リッチや冥途たちがアンデットかというと、見た目まったく人間である。というか人間離れした美少女である。
本人たちは俺に『転生(?)』させてもらったぐらいの感覚でいるくらい。
俺としてはアンデット化によるプチ転生はそんな凄いもんじゃないと思っていたんだが、実態が『転生』と言われてしまえば言い返せない。
なら、アンデット魔法の便利さをとことん追求してみよう、ということで実用化したのが『転移』だった。
ランスを王宮に瞬間移動させたアレだ。
(瞬間移動というか一度原子分解して、離れたところで再構築しただけなんだけどね)
最初は忌避感があった。
男のランスなら失敗して死んでもいいか、くらいだったんだが、これが成功しちゃうし。
というわけでこの機能を利用したのが、転移システムである。
ぽふん。
はい。冒険者パーティー一行ご到着。
(女性を原子分解……最初は、う~ん、だったが慣れたwwあと重要なのは、間違っても冥途たちのように、美容整形を好き勝手にさせたりさせないことである。女性冒険者がみんな女神級の美人になったら不自然だ)
「ま。そうはいってもお肌がツヤツヤになったり、胸が少し大きくなったり、余分なおなかの脂肪が引っ込んだりのサービスはしているんだけどな」
あくまで不自然にならない程度。
やっぱり運動は美容にいいのね、と女性冒険者が自分に嘘をつけるくらいに(かといって転移魔法の料金をけちらずもっと転移したいと願う程度に)。
もちろんこのサービスは女性限定だが。
上級神が……俺のニヤニヤ顔に突っ込んできた。
「ユージさん。いやらしい笑い」
そういう上級神も最近は早朝だけでなく、こっちに滞在することが多いじゃないですか、なのだが、それは無粋だ。
あえて言葉にはしないが上級神は、女性が美しくなることについてダメ出したりしない。
ムッツリなだけで神様男子はスケベなんである。
ゆくゆくは上級神に彼女を紹介して仲人の地位をGET、上級神のコネによって一生安泰に暮らすというのが俺の野望である。女性の美容は大切だった。
「お願いします。彼の治癒を」
女冒険者がギルド職員に(泣きながら)お願いしている。
いっそ死んでれば、普通にアンデット化して生き返らせるんだけどね。
その場合、ギルドに預けてもらった財産の半分が『蘇生費用』として召し上げられる決まりである。
階層転移は入場料1000円なので蘇生ぼったくりじゃないか、って話なんだが。
転移の際にアンデット化されているなんて内緒である。
というか『転生』だ。
転移魔法が使えないので『転生』させて瞬間移動させている。
公共交通機関の代わりに転生、1000円でww
というありえない魔法使用なのだが、大は小を兼ねるということでご容赦してもらおう。
ただ、骨折程度なら治癒魔法で治せる。
普通の感覚なら彼氏が死ぬ前に転移で戻る、当然の選択である。
俺は治癒魔法使えないけど。
(転移の際に、死んで『転生』してるのは内緒だ。絶対に内緒だww)
しかし実際、観光客の前で人が死ぬというのは(たとえ生き返るのがわかっていても)盛り上がりに水を差す。
冒険者パーティーの選択はこれはこれで悪くない、とは言えるんじゃないだろうか?
実は『死に戻り』に関してはもう一ひねりあるのだが、その話はまたの機会だ。
ヒント:協会。
やっぱりファンタジーRPGで勇者が生き返るのは教会だと思うんだよね。お約束は大切です。
もちろん『永遠教』という新興宗教をでっちあげ教会をギルドの隣に建てたんだけどね♡
「あ、ありがとうございます!」
彼氏を治癒してもらい、涙顔で感謝する女冒険者。
俺ではない。
純粋な治癒魔法だ。
スゲーな骨折なんて俺治せねーよ、一度完全に殺して『転生』させないと無理ww
……なんて見ていたら、ため息をつきながら治癒魔法使いがこちらにやってきた。
「ずいぶん儲けたようだな」
実際、教会で死に戻り財産半分没収とどちらが得か微妙な金額を要求していたんである。
実際、駆け出しの冒険者の財産なんてたかがしれている。
この街が誕生して半月もたっていない。
この冒険者パーティーの現金貯金はあって10万円ってところだろう。
もちろん俺たちがケチってるってことはない。
オーク一頭100万は出している。
だが初心者は儲けの大半を武器や防具につぎ込むからな(さすがに死に戻りの際に装備を取り上げたりはしない)。
死に戻りなら5万で済んだところが骨折の治療代の治癒魔法のほうが高くついたみたいだな。
それでも喜ばれていたが。
治癒魔法使いが言った。
「当たり前だ。誰だって死にたくないだろう」
「そういうもんかね」
こいつは、それなりに死に戻りの秘密について察しているようだ。
駆け出しではない、この世界ではそれなりに高位な魔法使いだからな。
「で、いつダンジョンの攻略に向かうんだ」
「ん~。そうだな。確かにそろそろいい……のか?」
「そうかッ! 待ちに待ったぞ! 腕が鳴るな~」
パッと華やぐ治癒魔法使いの顔。
舞い上がった銀髪の隙間から長い耳が覗けた。
そう。
こいつはエルフの里から訪れてくれた冒険者、なんでも姫だか族長だか……長命なエルフだけあり、数百年前の英雄の時代から存命な『弓の英雄』その人なのだった。
その英雄に俺は、ダンジョン攻略に誘われているんである。
「なんだ、エルフ。また来ていたんですか」
「エルフじゃない。わたしには****という名前が」
「やれやれ。エルフ語の発音難しいんですよ。それには私は剣王ではない『通りすがりの美少女メイド』だと何度言えば、年老いてボケましたかエルフ?」
「き~むっき~」
なんでもリッチの前世(の素体の一人?)だった剣王ブレードとも顔見知り。
ダンジョン第二層のアンデット討伐の途中、ヴァンパイアに倒され命を絶ったブレードの敵討ちってことらしいのだった。
俺の死霊魔法、どうやらもとはヴァンパイアの能力だったみたいだ。
次回、続々と集結する冒険者たち。




