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ネイキッド・タートル   作者: 水辺右京
2/2

冒頭

 闇夜を一人の男が走っていた。

 男の顔は苦痛で歪み、額からは大粒の汗が流れていた。

 歯を食いしばり、今にも倒れそうな己の体に鞭を打つ。

 男の心と身体はもはや同一性を保っていなかった。

 裸族である男は可能な限り裸でいる必要があったが、彼に敵対する者に容赦のない仕打ちを受けたのだった。

 それは己の意思を持つ洋服。

 普段はナノ単位の粒子だが、人の体内に取り込まれると意思を持って衣服を形成する。

 裸でいたい彼の意志とは別に、一瞬でも気を抜けば服を着させられる。

 そんな極限の状態であるにも関わらず、彼は走っていた。

 彼が守りたいもののために――。

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