21-メンタルが弱い先輩は自分に自信が持てない
「そんなところで何やってんだ?」
可憐と皆川先輩の声に霧島先輩が気付き、廊下にいる俺達に近付いて来た。
霧島先輩はコンタクトにしたのか眼鏡はかけておらず、近くに寄っても昨日とは全くの別人に見える
声でやっと同一人物だとかろうじてわかる程度だ。
「お前……霧島だよな?」
「当たり前だろ? どうしたんだよ急に。あっ、そういう設定? 昔の友人との再会的な。それならちゃんと言ってくれよ。乗ってやるのに。……おっ、お前ッ……まさか皆川か?!」
皆川先輩の問いかけに霧島先輩はよくわからないボケで返す。
確かに中身は昨日会った霧島先輩のままだな。
そんな見た目は別人なのにいつも通りの霧島先輩の様子に皆川先輩はさらに動揺したようだ。
口を大きく開けてポカーンとしている。
「急にどうしたのはお前だよ!? いくらなんでも見た目だけ変わりすぎでしょ! 」
一瞬固まった皆川先輩だったが、すぐに全力で突っ込む。
俺と可憐は同時にうんうんと首を縦に激しく振って皆川先輩に同意した。
だってギャップが凄すぎるもん。
「ん? 変わったのわかる? やっぱオーラが強すぎるか。大賢者に抑えてもらわないと」
「……」
あ、皆川先輩の額にオレンジの青筋マークが……
イライラしてるなぁ。
「で、何で急にそんなイメチェンしたの?」
「よくぞ聞いてくれた! 昨日須藤に容姿の事をボロクソに言われたからな。見返すために髪切って、眼鏡をコンタクトに変えたんだよ。昨日『明日覚えてろ』って言っちゃったしな」
あれ、本気だったんだ……てっきり負け犬の……ゴホンゴホン。
「どうだ! 須藤、俺だってやればできるだろ?!」
霧島先輩は額に真っ赤な笑顔マークを浮かべて顔で須藤先輩に向かってそう言う。
おそらく誉めて欲しいのだろう。
昨日わかった事だが、霧島先輩は相当メンタル弱いみたいだからな。
須藤先輩が照れ隠しで言い放った言葉だが、本人にはかなりショックだったみたいだ。
「でも良かったですね。須藤先輩も霧島先輩が格好良くなって嬉しいんじゃないですか?」
可憐が俺だけに聞こえる声でそっと耳打ちしてきた。
「そうだね。これがきっかけで進展するといいけど」
俺は須藤先輩の額のマークを見ながら様子を伺う。だが、
「……えっ? うん」
須藤先輩が返した言葉はそれだけだった。
須藤先輩の額にはしっかりとピンクのハートマークが浮かんでいるのだが、反応がいまいちだ。心ここにあらずと言うかなんと言うか。
本当にどうしたんだろう。今日はずっとこんな感じだ。
そんな須藤先輩の反応に不安になったのか霧島先輩の額の笑顔マークはみるみる青くなっていく。
「え……もしかして全然似合ってなかった? クラスのやつらとかからは結構好評だったんだけどあれ全部お世辞だった?」
「いやいや! 凄い似合ってますよ! ね? 可憐」
そんな先輩が見るに耐えなくて俺は可憐を巻き込んでとっさにフォローする。
「は、はい! 女の私が言うんですから間違いありません! 前より凄く格好良くなってます」
「そう? 良かったぁ」
すると霧島先輩の額の笑顔マークはすぐに真っ赤に戻った。
なんか、俺の周りの人って分かりやすい人ばっかだな。
優人とか香織もそうだし。
『2年3組、霧島界人君。至急職員室に来てください。繰り返します。2年3組、霧島界人君。至急職員室に来てください』
ちょうどその時校内放送がかかり、霧島先輩が職員室に呼ばれた。
「やっべ、課題提出忘れた! じゃあな」
霧島先輩はそう言い残すと凄い勢いで職員室に向かっていった。
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