13-俺の隣の席のクラスメイトは基本誰とも話さない
まだまだ未熟な部分が多いですが、温かい目で読んで頂けると嬉しいです。
「はーい。 テストも終わったので席替えをしたいと思います」
奈々ちゃん先生の声が教室に響く。
今はロングホームルームの時間だ。
総合や学活とも呼ぶが、とにかくクラスの事を決めたりする自由な時間だった。
『えー、今のままがいい』
『やった! 席替えきたー」
『後ろの席に行きたい後ろの席に行きたい後ろの席に行きたい』
『私目が悪いから前が良いな』
うちのクラスは入学してから一度も席替えをしていない。
席替えに反対の人もいるが、賛成の人の方が圧倒的に多く、たちまちクラスが騒がしくなる。
「はいはい!! 奈々ちゃん先生! なんで他のクラスはもう席替えしてるのにうちだけまだだったんですか?」
優人が元気よく手を挙げて質問した。
あいつよく質問するなぁ。
「理由ですか? そんなの新しい座席表を作るのが面倒だったからに決まってるじゃないですか☆ それに席替えで『キャッキャウフフ』してる君たちを見るのはおばさんには正直きついですし……ふふ……うふふ……うふふふふ」
奈々ちゃん先生の額のマークは……怖すぎて見れなかった。
「でもみんなテスト頑張りましたし、私は職員室でたくさん誉められて気分が良いので殺意に耐えられそうです」
え、殺意?
奈々ちゃん先生の額のマーク ~以下略~
ざわついていた教室の空気が一瞬で凍った。
こうしてお通夜のような空気で俺たちは高校初の席替えをすることになった。
席替えは黒板に簡単にクラスの座席表と番号を適当に書いて、くじを引いて決めるという方法で行われていた。
うちのクラスは36人のため、6×6のマスに1から36までの番号が書いてあり、前後がわかるように上側に黒板、下側にロッカーと書かれている。
くじにも1から36までの番号が書かれておりその番号の位置に移動するのだ。
「じゅん……私この席になれて凄い楽しかったよ。私のこと……忘れないでね」
香織は遠くを見つめて教卓に置かれたくじを引きながらそんなことを言っている。
「大げさすぎでしょ。隣になるかもしれないじゃん」
「うん、わかってる。でも席替えで一回も席が隣になったことなかったし、ましてや班すら一緒になったことすらなかったから。 こういうのってフラグって言うんだよね」
「フラグってそんなわけ……」
香織が引いたのは31番、一番廊下側の最前列。
一方俺が引いたのは6番、一番窓側の最後列だった。
あ、フラグ回収したわ。
席を移動すると一つ前の席は優人だった。
隣の席は大人しそうな女の子。名前は確か笹塚雪だった気がする。
髪型はショートボブで少し小柄だ。
無表情だが整った顔立ちをしている。
「俺は如月純也。笹塚さん、これからよろしく」
「……ん」
彼女はコクリと頷くがそれだけだった。
あれ? 名前間違えたか?
微妙な反応に戸惑い、小さな声で優人に確認する。
「なあ優人、笹塚さんで合ってるよな?」
「合ってるよ。 でも彼女に話しかけても無駄だぞ? いつも無視か短く返すだけなんだよ。 前はそれでもめげずに話しかける人はいたけど最近じゃ女子からも声かけられてないし」
「そうなのか」
優人はそう言っていたが、せっかく席が隣になったので少しは仲良くなりたい。
何か話題がないか考えていると彼女の筆箱に『ポシェモン』のキャラクターのラバーストラップが沢山ついているのを見つけた。
実は俺は最近『ポシェモン』にどハマりしてしまい、本家のゲームでは個体値を厳選したり努力値を振ったりとガチ勢になっていた。
意味のわからない人もいると思うが、わかる人にはわかると思う。
『ポシェモンGO』も一大ブームは去ってしまったが未だにやり続けている。
そんなポシェモンが大好きな俺も同じ種類のストラップは何個かバッグに付けていた。
「笹塚さんはポシェモンが好きなの?」
「……ん」
笹塚さんはまたコクリと頷くだけだったが額のマークは真っ赤なニコニコマークだ。
あれ?これはもしかして。
「実は俺も好きなんだ。ほらこれ」
そう言ってバッグに付けていたポシェモンのストラップを見せる。
「私、このポシェモンが好き」
そう言って彼女は1つのストラップを指さす。
「えぇぇ!? 笹塚と喋るとかどんな手段使ったんだよ! 脅迫したのか? 俺は何回話しかけても無視されてたのに」
優人が会話に乱入する。
「……ちゃんと返事はした……気がする」
「やったぁぁ! 笹塚と会話できたぞ!」
笹塚さんの額のマークは真っ赤なニコニコマークのままだ。
やっぱり。
彼女は極度のコミュ障なのだと確信した。
人と話すこと自体は好きなのだろう。
そんなことを考えていると突然寒気がした。
ふと前を見ると香織が無表情でこちらを見ている。
離れているためマークは見えないが、大体予想できる……だが香織の姿勢が怖すぎてそれどころではなかった。
体は前を向いているのに顔だけこちらに向けているため首があり得ない角度に曲がっている。
俺は大量の冷や汗をかきながら香織から目をそらして窓の外を眺めるのだった。
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