12-団結した俺達は補習を受けるはずがない
毎日投稿は難しいですが、温かい目で読んで頂けると嬉しいです。
テストは長々やるとグダリそうだったので早めに切りました。
次の日の教室は異常な空気に包まれていた。
俺は香織と、昇降口で合った優人と教室へ向かったのだが、入り口の前で思わず教室へ入るのをためらってしまう。
「ストロンチウムの炎色反応は?」
「深赤色」
「動名詞を目的語にとる代表的な動詞は?」
「 mind, enjoy, give up, avoid, finish, escape, put off, stop 」
絶対におかしい。
昨日まではガヤガヤしていた教室がやけに静かで、俺達以外全員勉強をしているのだ。
まだ登校していない生徒も数人いたが、教室にいる人はもれなく英語と化学と世界史を勉強している。
テストは3日に分けて行われるのだが、その教科は2日目に行われる予定だった。
「おいおい、純也どうなってんだよこれ」
優人が声を潜めて聞いてくる。
「俺も知らないよ。でも明らかにおかしい」
「だよな。でも昨日までは普通だったよな」
「でも他のクラスは普通じゃない?」
香織の言うとおり他のクラスからは笑い声が聞こえてくる。
異常なのはこのクラスだけだ。
「ついさっき毎年この時期の世界史の平均点が20点くらいで、赤点の人が何人も出ているという情報が入ってね。そうしたらみんなこの調子だよ」
声のする方を見ると爽やかイケメン級長池谷翔がプリントを持って立っていた。
顔も運動神経も頭も良く、さらには人柄も良いときた。
楓が性転換したらこんな感じなのだろう。
級長はホームルームの時に配布するプリントを職員室から持ってきたり、提出するプリントを職員室に届けたりする仕事があるため多分その仕事の帰りだった。
「「「20点!?」」」
3人の声が重なる。
「平均20点って50点満点とかオチじゃなくて?」
「残念ながら100点満点だよ。何でも有名大の入試レベルの問題らしくてね。 だからみんな世界史のある2日目の負担を減らすために英語と化学も勉強してるんだよ」
「マジかよ。現文以外にも赤点候補が……」
ガーンと効果音が聞こえそうなくらいの絶望の表情を浮かべて優人が膝から崩れ落ちる。
香織も同じような表情を浮かべて膝から崩れ落ちていた。
二人とも額には真っ赤なムンクの叫びのようなマークが浮かんでいる。
本当にわかりやすすぎだろ!
まあ、そこがこの二人の良いところなのだが。
「でも翔、他のクラスは何で普通なんだ?」
俺は疑問に思ったことを聞いてみた。
「あぁ。それは多分うちのクラス以外は奈々ちゃん先生の事をよく知らないからじゃないかな。 奈々ちゃん先生は1年だとうちのクラスしか教えていないからだと思うよ」
奈々ちゃん先生は英語教諭で2年生をメインに教えており、1年生のクラスは1クラスしか担当していない。
つまり、みんなあの状態の彼女を知らないのだ。
「じゃあチャンスじゃねーか!」
優人が叫ぶ。
「あと優人、来週の宮崎さんのファンクラブの代表者会議が再来週に延期だってさ」
優人と翔は可憐のファンクラブに入っている。
ファンクラブと言っても過激な派閥ではなく、ゆったりと可憐を見守る会なのだとか。
翔は可憐に一度振られているがそれでも可憐を見守りたいらしい。
「了解! そうとわかればこうしちゃいられない」
そう言うと優人は急いで自分の席について勉強を始めた。
俺もうかうかできない。世界史はアドバンテージが全くないため赤点の可能性が最も高いのだ。
俺達の勉強漬けの毎日が……始まった。
うちのクラスはとにかくやると決めたら団結力が凄い。
毎日みんなで問題を出し合い、得意科目をみんなに教えたり、中にはプリントに要点をまとめて配っている人もいた。
クラスの平均点は上がるが、おとしめ合ったり一人で勉強するよりもはるかに効率がよく、何しろモチベーションが全く違うのだ。
俺は香織の勉強にも付き合っていたため、それがとてもありがたかった。
そして月日は流れ、テスト当日。
俺は生まれて初めて『あ、これ真剣ゼミでやったとこ!』なる体験をした。
まあ、真剣ゼミはやってないが。
結果はうちのクラスの平均点は全教科学年1位。
世界史に至っては他クラスの平均点が28点でうちのクラスは59点だった。
当然うちのクラスからは赤点の追試科目がある人は0人。
他のクラスからは5~8人も出たらしい。
余談だが、奈々ちゃん先生の職員室での評価が上がったらしく上機嫌だ。
これぞまさにWinWinの関係ってやつだな。
そう思いながら俺達の高校初めてのテストは幕を閉じた。
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補習ありの話も書きたかったのですが、夏休みに書きたい事があったので補習は無しにしました。




