11-俺の幼馴染みが俺のパンツを持ってるはずがない
毎日投稿は難しいですが、温かい目で読んで頂けると嬉しいです。
※三角のマークとは・・・軽い冗談や誇張した表現をしたときに出るマーク(3話参照)
「本当に純也君はいい男になったな!」
ワハハハ と豪快に笑うのは香織のお父さんだ。
いつもからテンションは高いのだが、今日はお酒でも飲んだのかより一層機嫌が良い。
「いえいえ、お世辞でも嬉しいですよ。ありがとうございます」
放課後、俺は香織の家に来ていた。
香織は部活があるため7時30分に来る約束をしたのだが、部活が長引いたらしくつい先ほど帰って来たそうだ。
香織は部屋を片付けてくると言って俺は香織の両親がいるリビングで待たされているのだった。
「それで香織も貰ってくれればいいんだがな! な、母さん。純也君なら文句ないだろう」
「ふふふ、そうですね」
二人とも額には真っ赤なニコニコマークしか浮かべていない。
誰か冗談だと言ってくれ。
ハハハ、と愛想笑いでやり過ごす。
「冗談は置いといて、純也君はもう高校には慣れたかい?」
あの、三角のマークが出てないんですが……
「そうですね。最近はかなり慣れてきたと思いますよ。他クラスにも友達ができましたし」
内心ではいろいろ考えているが顔には出さない。
むしろ出せない。
昔、この力のせいで虐められてからポーカーフェイスが癖になってしまっているのだ。
「そうか、そうか。それはよかった! それにしても純也君は堅いなぁ。昔は『パパ』って本当の息子みたいに呼んでくれたのに」
確かに昔はパパと呼んでいたが、流石にもうそんな年ではない。
「どれだけ前のことを言ってるんですか……でもお父さんの事は本当の父親だと思っていますよ。辛いときにいつも心の支えになっていましたから。」
これは本当のことだ。
俺がまだ小さい頃に両親が離婚したため、うちの父さんは仕事が忙しく、あまり家にいなかった。
そのため小学校の低学年くらいの時は毎日香織の家へ来て夕飯を一緒に食べたりしていた。
それに加えて香織の家に通っていたのはちょうど虐めにあっていた時期と重なっている。
当時は香織とクラスは別で、香織にも香織の両親にも心配も掛けたくなかったため誰にも虐めにあっていた事は伝えていない。
そんな俺には彼らの存在がとても大きかった。
当然俺にとって彼は第2の父と呼べる人なのだ。
香織のお母さんに至っては本当の母親より過ごした時間が長いと思う。
「うおぉぉぉ 母さん! 今の聞いたか! 私はな、実は息子も欲しかったんだよ。 将来一緒に酒を飲んでな、語り合いたかったんだよ!」
余程感動したのか真っ赤な泣きマークが浮かんでいる。
普段の泣きマークと違い、マークの口角が上がっているため嬉し涙的な物なのだろう。
「ううっ、こんなに立派になって」
香織のお母さんに至っては実際に泣いている。
香織の感情表現が豊かなのはこの両親あってこそのものなのだろう。
少しだけ羨ましく思う。
「なぁ、純也君。本当にうちの息子にならないか?」
「それは逆プロポーズですか?」
「ハッハッハ! 冗談だよ」
だからさっきから三角のマークがでてないんだって!
「お待たせ!」
香織が部屋から出てきたのは俺が家に来てから15分ほど経った後だった。
シャワーを浴びたのかふわりとシャンプーの香りがする。
香織の部屋には小さい頃は何度も入っていたのだが、久々に入るとなると緊張する。
香織の部屋は小さい頃とあまり変わっていなかった。
年季が入っているが位置も変わっていない机。
ベッドの横にずらりと並べられたポシェットモンスター、通称『ポシェモン』のぬいぐるみ。
小学校の頃に図工で作ったペン立て。
懐かしいものを見ると昔の思い出までよみがえってくる。
ん?あれは?
あんまりジロジロ見ると失礼だと思ったのだが、俺の視線はある一点に集中してしまう。
あれ、俺のパンツじゃね?
ベッドにあるポシェモンのぬいぐるみ達の脇に俺が使っていたパンツ、正確には俺が使っていたパンツと同じ柄のパンツが畳まれて隠すように置かれていた。
きっとお父さんのがまぎれてしまったのだろう。
でも最近あのパンツ見ないんだけど……
嫌な予感がしたため。考えることをやめた。
「じゃあ、何から教えようか。 やっぱり数学が苦手?」
「うーん。基本大体の教科が駄目なんだけど」
「そうだろうと思った。とりあえず英語と数学教えるよ」
「お願いします!!」
元気に答える香織の声を聞きながら大学へ行ったら家庭教師のバイトでもしようかなと思う。
「ありがとう……」
消え入りそうな声で香織がお礼を言う。
相当疲れたのだろう。
結局今日の勉強が終わったのは10時過ぎだった。
「明日の朝に今日やったことを必ず復習すること。サボったらすぐわかるからな」
「はい……頑張ります」
「よろしい。 じゃあまた明日」
そう言って別れて家に帰る。
自分の部屋に戻るとドアがノックされた。
『兄さん、入ってもいい?』
「いいよ」
そう言うと楓が入ってくる。
「私もテストが近いんだけど、わからないところがあって」
楓の額にはうっすらと三角のマークが浮かび上がっている。
それもそのはず、楓は俺より全然頭が良い。
地頭の良さに加えて努力を惜しんでいないからだ。
凡人の付け入る隙はない。
それでも質問に来たという事はおそらく香織への対抗意識や嫉妬だろう。
そんな楓を愛おしく思う。
ここまで知っておきながら甘やかしてしまう俺は最低なのだろう。
だが、放っておくことはできない。
「教えてあげるよ」
そう言って俺は自分自身を誤魔化した。
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※マークの説明が少なくなってしまっているので、後日まとめたいと思っています。
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