彼女の名前
もしも人間の進化とか科学発展、異次元生物や石がやって来て……理由は何度もいい。
もしも……人間に異能が使える時代になったら……自分が異能力を使えるようになったら……あなたはどうしますか?
異能力には勉強や社会業績のものと同じで上下があるだろうから弱者は強者に怯えただ喰われるのを待つ他ない。
そして……全ての人間に特別な力を与えたと言われてもそれは嘘だ。人は逐一、自分で図り調べた理由でもないのに一人ひとり自分で診断したわけでもないのに『異能力』をみんな持ってるだなんて異能力を持った者達がいるとしたらきっと可哀想な『無能』な人々は地で生きる希望を失ってしまうだろう。
だから敢えてこの腐りきった異能力で成り立った世界から国から学校から僕は自分の異能力者だと言う事を捨て異能力の事を忘却し念には念をと封をして無能な凡人として生きることにした。
そんな無能凡人生活も早いことに数年すぎると人は異能力を失った。異世界からやって来たようにしか見えない気持ち悪いバケモノが人をあるべき姿に戻し異能力を奪い取ったとされた。
それが異能力世界のピークを超えた時の時代。勿論、異能力の無い僕には関係の無い話だ。それが、僕が10歳の時の話。
10歳……。小学生はプールに入る授業がある。その年も僕は大好きなプールが楽しみで楽しみで仕方がなかった。
それなのにプール開きの前日の夜……、嘘のように起きた。カラダが熱くて熱くて……それだけじゃない。目が痛い骨が痛い背中も痛い頭も痛い…………"全部が痛い"
その日、親も居ない施設暮らしの僕は夜の月に照らされながらひと晩中痛みに対して泣き叫んでいた。
痛みが止んだのは朝、無睡ながらも夜は風呂も入らず痛みに耐え続けるのがやっとで汗もびっしょりだった。朝風呂するなんて珍しくもない。朝風呂は汗かきな子達や匂いが気になるお年頃の子供たち。たくさんの人たちがしてるから気にならない。
勿論、お風呂は大風呂で男女共用。流石に風呂は共用でも時間はキッチリ決められてるけどね。
そんなわけで僕は普通に朝風呂をした。その時、僕の背を見たひとりの幼い子供が泣き叫んだ。『悪魔ぁぁ〜』『怖いよぉ~』と。
先生や乳母さんたちが駆け込むようにして『どうしたの?』と容赦なく入ってきた。
僕の施設は神の信仰がある教会が経営してる施設だった。だから僕の背にジリジリと染み付いた刺青のような黒く恐ろしいもの。それをどんな理由であろうと背に焼き付けてしまった僕は施設には居ることができず、お払い箱。
大好きだったプールの授業も背中の刺青じみたもののせいで入れないし、それから友達付き合いも悪くなって……
誰にも相手にされないまま僕は気づけば高校生になっていた。
『黒上君……またサボってる』
僕のことをとても心配してくれる先生は勉強が分からないと察してくれて夕方の僕の調子がいい時に簡単な授業のように勉強をわかりやすく教えてくれる。
生徒と先生の恋なんて叶わない。だけど……たぶんその時までは僕は先生に……彼女に……恋をしてた。
なのに……いつも通りの夕方にいつもとは雰囲気の違う先生に襲われてそして『可哀想な子……』と嘆き僕を喰らい続けた。
どうやらバケモノは人間を生かしながら喰らうのが好きらしい。もっともバケモノやしいといえばらしいが。
最初で最後に愛した先生に喰われるなんてなんて幸せなんだろう……って思ってたのに……先生は先生でも誰でも踏み込んでは行けないところに踏み込んでしまった。
それは生かしながら喰らわれて先生のお持ち帰りとなった日の次の日のことだった。拘束されて逃げられず、ただ喰らわれて死ぬのを待つのみだった僕は大切なことを忘れていた。
『そう言えば……今日は……僕の』
16歳の誕生日だった。なんて矛盾した誕生日なのだろうか?痛くて痛くて仕方ないのにこれで死ねると思うと安堵すると先生に『食べ尽くして』と願いたいほどに狂ってしまいそうになる。
バケモノとなった先生に昨日のように食べられる覚悟をして抵抗もせずにじっとしていたら急に先生の家の窓がバリンっと割れて気づけば先生と僕の前には槍を手に持ったおっかない女の子がいた。
それはそれは堂々として。僕と歳は変わらないように見えるけど、制服はどこのかイマイチ分からなかった。
ただ、その子は僕が拘束されているのをひと目見ると先生に攻撃をした。全身に先まではなかった神々しいほどに眩しいオーラを身にまとって。
死を望んでいた僕にとってはいい迷惑でしかなかったが。これから死ぬ気でいた。自殺なんてしなくても殺してくれる。それも好きだった先生に。
この忌まわしいカラダからおさらば出来る……そう思っていたのに
『なんで邪魔すんだヨ……』
日はもうとっくに暮れて夜だった。月の映えある明るさがこの家にも忍び入ってくる。
『先生……早くボクヲ』と言った瞬間僕の記憶は途切れた。
聞く話によるとその後、僕は異能力が消えた世界ではありえない特別な力を使って見境なくふたりを狙い攻撃をしたという。
オンナは逃げたみたいだが、先生はと言うと……
『先生ぇ……』
跡形なく亡くなった。世間的には火事による死亡となり報じられた。先生を消したのは僕。先生ではなく僕がバケモノだったのだ。
『ふむ……これが闇の民ね……』
勝手に上がり込み人の体をベタベタ触ってくるこの女こそ昨晩の少女、及び情報提供者。
その名は『リム』と呼ばれているらしい。因みにコードネームだそうだ。
長々とすみません。この調子で今後も励んでまいります。目あすとしては1日1話程の更新。宜しくお願いします。一気に更新もあります