表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

「………せ、先輩! 好きです!付き合ってください」


 目の前の女子から発せられた告白の言葉は、屋上に吹く暖かい風に乗って、俺の耳へと伝わってくる。この言葉を俺は今まで何回言われできたのだろう。

 他人から好意を持たれるのは、嫌ではない。むしろ喜ばしいことなのだろう。しかし、他人は他人である。それ以上でもそれ以下でもない。自分が他人と認識してしまった以上、他人から寄せられる好意に応えることはできないのだ。


「すまない。君とは付き合えない」


 断る言葉はいつも同じ。

 何の変哲も無い冷たい言葉。


「り、理由を聞いてもいいですか? じゃないと私、納得出来ないですっ!」


 必死に訴えてくる彼女の頬には、いつの間にか涙が流れていた。

 やはり自分の返答が酷かったのだろう。


「好きな人がいるんだ」


 この台詞は、もはや決まり文句と化していた。まあ、本当のところは好きな人などいないのだが……。


「だ、誰なんですか?」


「それは言えない」


 言えないのではない。いないのである。


「私より可愛いんですか?」


「ああ」


 流石にいるはずもない好きな人より、目の前の女子はブスだと断言したこの返事は、今日のワーストナンバーワンだと自分でも感じた。


「私より優しいですか? 」


「ああ」


 すまない。まず君が優しいのかさえ分からない。なんせ話したことがないのだから。これまた我ながら酷い返答である。


「っ!それなら早くその子に告白すればいいじゃないですか!学校一イケメンの先輩ならどんな女子でも落とせますよ!」


 そ、それは流石に言い過ぎだろう。

 いくら俺に好意を持っているからといって褒めすぎだ。告白に失敗した時のリスクがあまりにも大きすぎる。


「それはできない」


「なんなんですか!もういいです!失礼します!!」


 バンッとドアを閉める音が屋上に響く。

 俺だって早く告白して付き合いたいさ。でも、でも無理なんだ。

 だって……なぜなら……………、


「「俺は男しか好きになれないんだぁぁぁぁぁ!! 」」


 そうこの俺、悠木拓哉は男でありながら男しか愛せないのである!!!


「あー彼氏欲しい……」


 俺の嘆きは風に乗っかって飛んではいかず、周りの空気に溶けていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ