第一章 1 「憑かれた?」
ーー最近、取り憑かれている気がする。
いや言い切れる。
「やっぱりな...ハハッ」
少年が鏡の前に立つと、その鏡には少年は映ってない。
これを取り憑かれている以外の言葉で表せるだろうか?
「中二病こじらせちゃった☆かな?」
少年はため息を吐いた後鼻で笑った。
ーー中二病。
いやね?そんな時期もあったよ?
でも今は違うし、一人暮らしで唯でさえガクブルだ。
部屋で一人でいるときは絶対に一度いると決めた場所からは動かない。怖いから。
部屋で一人でいるときは絶対に音楽などの音を消さない。怖いから。
部屋で一人でいるときは絶対に風呂などには入らない。怖いから。
ここまでくると「自分の部屋」の定義がわからなくなってくる。
「引越しでもしようかな...」
と、つぶやいているが、実際そんな勇気は少年にはない。
究極のコミュ症に、恐ろしいほどの方向音痴。
知っている場所しか行かないチキン野郎だ。
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気温が低くて冬は困る。
おまけに湿度も低くて日本の冬は不愉快極まりない。
一歩歩くたびに目に風邪が当たり涙が出る。
なので彼は冬が大嫌いだ。
冬の間はほぼ自宅警備員と言ってもいいだろう。
「この距離を歩きとか、、、」
彼はポケットからスマートフォンを出してそう言った。
ちょうど公園を通りかかったところーー
「ん!?まって!?」
彼は大声を出した。
左にある公園で遊んでた幼稚園児達がすごい速度でこちらを向く。
「スミマセン」
小声でそう言い彼は左手をあげて謝るような仕草をした。
そして彼はすぐ自分のスマホに目を向ける。
"目的地まで1.5km3分"
スマホにはそう書かれている。
「どこの陸上選手を想定したスマホ?これ」
彼は笑って自分の気をあげる。
笑わないと冬限定自宅警備員の彼はすぐ萎えてしまう。
「よしッ」
また大声をあげて園児達を振り向かせた。
「Hey,siri 五分タイマーかけて」