俺に不可能はない!
「全身に魔力の流れを感じるのじゃ」
俺はいま、じいさんに魔法の使い方の指導を受けている。
じいさんの見立てでは俺にはかなりの量の魔力があるらしいが、自分では全くわからないのだ。
座禅を組んで、体の中の魔力を感じるように言われてどのくらいたったのか……
早朝からずっとやっているが、感じるのは腹の虫だけだった。
「……じいさん」
「なんじゃ」
「腹減った」
じいさんがはあーとわざとらしく溜め息をつく。
うう、俺だってカッコよく魔法が使えるようになりたいけどな!
全くわからないんだから仕方無ねえだろうが。
「腹が減って集中できねーよ」
「ひろきーー」
俺がぶちぶち愚痴をこぼしていると、キューがとてとてとやって来た。
今日も人間の姿だ。
あー、いつ見ても可愛いなあ。超癒される。
キューは腰まである長い髪を耳の上で二つ結びにして、いつもと同じ白い着物を着ている。
早く他の服も着せてやりたいな。
もっと可愛い、キューに似合うような、ピンク色とかの……にへへ。
可愛い服を着ているキューの姿を想像してにやけていると、キューがすぐ側まで来て可愛いお口をあーんと開ける。
俺は頭をナデナデしながら問い掛けた。
「どした、キュー。お腹すいたのか?」
「ヒロキ、おなかすいた。あげる」
「ウボエ」
美少女のゲ……
やめて!俺は夢を見ていたいの!
「ちょ、ま、大丈夫!俺お腹空いてないから!修行頑張るから!」
「キューは優しいのう。ほれ、ヒロキよ。遠慮するでない」
ジジイがガッチリと俺の両腕を掴む。
クソッ!無理やり脱出したらキューにぶつかっちまう。
迫り来るキュー!
俺は絶対絶命のピンチに陥った。
しかし俺は知っている。
こんな時こそ冷静に!
「テレポート」
次の瞬間、俺はジジイを道連れにしてはるか上空に移動していた。
「うひょおおおおおおおおおおおおお!」
「はーっはっはっはっはっ!この俺を捕まえられると思ったか!」
ジジイと共に落下しながら、俺は高笑いを放つ。
フリーフォールも三回目。もはや慣れたものだ。
しかし、テレポートをした瞬間にわかったことがある。
テレポートが発動する時に自分の中に魔力の流れを感じたのだ。
俺の第三の目がある場所……額からな!
「うりゃあああ!」
俺は額に力を集めるようなイメージをし、そこから地面に向かって力を解き放った。桃園の何もないスペースが目標だ。
その瞬間、俺の額から白く強い光が線となって地面へと射出される!
ドッゴオオオオオ!
「はーっはっはっはっはっ!」
爆風によって落下速度が緩やかになり、額の光が収束するとともに俺はゆっくりと地面に降り立った。
「俺に不可能はない!」
前髪を払い、ビシィッとポーズを決める。
「あほかーーーー!!」
ドゴォッとジジイに後頭部を蹴られ、俺の顔面も地面に着地した。