俺はロリコンじゃない
「さて、これで落ち着いて話ができるな」
キューはじいさんが出してきた白いガウンのような服を着せられていた。
ちなみにじいさんが着ているのは前合わせの着物のような形状の服なのだが、着物の上から前掛けをかぶっており、着物の下にはモンペのような下履きを履いている。
俺もじいさんに借りた同じような着物を着ているが、下履きの代わりにスエットのズボンを履いている。
背の低いじいさんの下履きは短すぎてハーフパンツみたいになったためだ。
上着の着物も袖が短かったのだが、農作業をするには丁度良かったのでそのまま着ている。
キューはじいさんとあまり背丈が変わらなかったので、着物のサイズも丁度いい。
白い着物はキューによく似合っているが、服を着たことのないキューはだいぶ不満なようだった。
「動きにくーい」
ぷうっと頬を膨らませながら眉をしかめて服の袖を引っ張っている。
キューの見た目は十二、三歳の少女そのものなので、中身がドラゴンだというのにとても子供らしく愛らしい。
さっきは初めての女の子の裸に混乱していたが、俺は決してロリコンではないのだ。
俺は妹を見るような目でキューを見詰めた。
妹なんていたことないけど。
「今度、お洋服買いに行こうね〜」
「気持ち悪い笑顔じゃのう」
俺の渾身の笑顔に何を言う!
俺はギロリとじいさんを睨みつけた。
「そんなことより、キューの変身についてしゃが……神龍の生態は謎に包まれておるから詳しくはわからんが、恐らく人間になりたいと心から願ったせいじゃろう」
「心から?キュー、そんなに人間になりたかったのか?」
じいさんの淹れたお茶をはふはふ飲んでいるキューに問い掛ける。
キューは「にがー」と顔をしかめながら頷いた。
「ヒロキとジジイ、なか、いる。キュー、おそと。キュー、さみしい」
「さみしい……」
言われてみれば、キューはいつも外にいる。デカすぎてじいさんの小屋に入れないからだ。
朝起きて家の外に出るといつもすぐに擦り寄ってきたのは、寂しかったからだったのか。
腹が減ってるからかと思っていた。
キューは神龍だからか、基本的に食事は必要ない。しかし桃は好きなようで、俺が桃をもいで渡すと喜ぶのだ。
自分で勝手に食べればいいのに何故か毎朝待っている。
そのため、じいさんの許可を得て毎朝ひとつだけ桃をやるのが習慣になっている。
もちろん仙桃はあと百年はならないので、その桃は普通の桃だ。
「キュー、人間ならコヤはいれる!それにヒロキ、女の子、すき!」
「お、おう……」
キューは満面の笑みで俺に抱きついてきた。
確かに女の子は好きだけどな。
俺はロリコンじゃない、ロリコンじゃ……
くっ!可愛い!
俺はにやける顔を止めることが出来なかった。