おこげは適量で
「こんがりー」
「うんうん、こんがり焼けたね。エライねー。でも今度からもうちょっとだけ火力を落としてくれると嬉しいなー俺はミディアムレアくらいが好きだなーいや、もちろんこれも美味しいよ?」
「……苦いのう」
俺たちはガリガリと肉だったものをかじっていた。
もはや消し炭だ。
消し炭がガリガリいうのと同時に、俺のライフもガリガリ削られていっている。
いや、俺だって食べたくないよ?
消し炭だし。
でも、消し炭を捨てようとしたらキューが悲しそうな顔をしたのだ。
想像してみてほしい。
ただでさえ可愛い美少女が、大きな瞳にウルウルと涙をいっぱいにしている様を。
瞳に涙を溜めたキューは、ポツリと呟いた。
「キューの焼いたの、食べないの……?」
ポロリと零れおちる涙。
それを見た瞬間、俺は消し炭をむさぼり食ったね。
苦かろうが固かろうがジャリジャリしてようが関係ねえ。
同じく、じいさんも無言で消し炭に手を伸ばした。
ジャリジャリジャリジャリ
ガリッ
喉が嚥下を拒否するが、水で無理やり流し込む。
……元は食べ物だったんだ。
なんてことはない。
これは食べ物。
これは食べ物。
これは食べ物。
必死で自分に言い聞かせる。
口の中が粉っぽさでいっぱいになった時、俺は限界を迎えた。
(テレポート)
口の中が粉でいっぱいなため声にならなかったが、テレポートは問題なく発動した。
桃園のはるか上空で、俺は両手いっぱいに握りしめた消し炭を力の限り遠くに投げた。