放課後って自由になった気分になるよね
狐火が転校してきて慌ただしかった1日も、やっと放課後を迎えた。
「狐火、ちょっといいか?」
俺は聞いておきたいことがあるのを思い出し、帰宅しようとしていたであろう狐火を引き止めていた。
「なんでしょうか?」
「いや、言いたくなければ答えてくれなくても構わないんだが、どうして新学期が始まって間もないこの時期に転校してきたんだ?」
「転校は単にお父さんのお仕事の都合ですよ。時期は偶然です。それがどうかしたんですか?」
「いや、気になっただけだよ。狐火の親父さんはなんのなんの仕事を?」
「それがわからないんですよね」
返ってきた言葉は予想の斜め上を行っていた。
戸惑いながらも俺はなんとか言葉を繋げることができた。
「わから…ない?」
「はい。正確には教えてくれないんです」
「どうして教えてくれないのかも知らないの?」
「その通りなんです。ただ、誤解をされたくなかったのか私が中学生になった時になんの仕事をしてるか考えて、最悪の可能性まで想像しちゃってそのことをお母さんに話したら『犯罪に関わるような仕事じゃないから安心しなさい』とだけは言ってくれたんですよね。これが唯一の父の仕事の内容について知ったことです」
その言葉を聞いた俺はどんな表情をしたのだろう。俺は無意識のうちに思ったことを口に出していた。
「知らないままって……狐火は辛くないのか?」
「昔は辛かったです。なんの仕事かも教えてくれないですし、その仕事のせいで何度も何度も転校を繰り返して、友達だってほとんどいないですし。でも昔に比べて今はお父さんと話す時間も増えました。それにこんなに友達が居るんですもの。これ以上ないくらい幸せですよ」
"幸せ"の言葉を聞いて少しは安心できたが、それでも狐火は辛い経験をしてきている、そんなことを考えると胸が締め付けられるように痛かった。それにまだ気掛かりな事が…
「最後にこれだけは聞いておきたいんだけど、もしかしてまたすぐに"この学校を去らなければいけない"なんてことがあるのか……?」
「大丈夫ですよ、今回はかなりの期間滞在するって言ってましたし、もしかしたらこの学校を卒業するまで居られる可能性だってあります」
おれはその言葉を聞いた後、安堵の息をついて、その場に座り込んでいた。
「なんですか?そんなに私が転校するのが嫌なんですか?」
狐火は俺の気の抜けた姿を見て、少し笑いながらら。そして心なしか少し嬉しそうに手を差し伸べてくれた。俺は狐火の手を借りながら立ち上がり
「そりゃもちろん、俺たちは友達だろ?」
と、声に出した。
「改めてこれからよろしくな、狐火」
「こちらこそよろしくお願いします。カズ君」
そう言いながら俺たちはどちらからとなく握手をしていた。
「おい、あいつまた転校生とイチャイチャしてるぞ」「リア充は爆破すべし」「狐火さんを独り占めなんて許さん」なんて声がヒソヒソと周りから聞こえ、ふと周りを見るとそこには今朝、狐火に質問攻めをしようとしていたクラスの男子たちが集まってきていた。
「やべ、じゃ俺は先に帰るね。また"明日"な、狐火」
「はい、また明日学校で。お気をつけて」
そうやりとりをして、俺はダッシュでその場から逃げ出した。振り向くと案の定後ろから「逃げたぞ!追え!!」「お前だけいい思いをするなんて卑怯だ!」などと言いながら追ってきているクラスメイトの姿があった。振り向いた時に見えた狐火は笑っていた。その笑顔は家に着いても俺の脳裏に焼きついたままなのだった。
今回は狐火転校編と同日の放課後のお話だよ〜
本来はここまで長くなる予定ではなかったんや。この半分くらいの予定やったんや。でもいざ書いてて気がつくとこうなってた。
そして1つごめんなさい。休載の時に「次は体力テストのお話を書くよ」みたいなこと言ってたけど先に部活に関するお話が挟まりそうです。ご了承ください。
では今回もこの辺で!また来週お会いしましょう!てかしてください!