第五話 趣味って大変。それは趣味じゃないから。
point of view 【神崎 零也】
「やっぱり趣味って重要だよなぁ。」
建人と学校でメシを食っているとき急にこの言葉が俺の口から出た。
「何だよレイ。お前趣味ねぇのかよ?」
「ああ、流石に暇だわ。学校から帰ったあととか。勉強するのもたりぃし。」
「趣味がねぇとか、ダメ人間じゃねぇか!」
建人ごときにダメ人間と言われた。
切腹もんだわ。
ってか、建人の趣味はなんだろ?
「じゃあ、お前の趣味はなんなんだよ?」
「それは……。」
「それは?」
「ナンパ。」
「は?」
「ナンパだよ。ナ・ン・パ。」
「お前モテんの?」
「お前知らんの?俺、いままでで二回も告られたんだぜ。」
「微妙だな……。」
「しかも幼稚園の頃。」
堂々と自慢してるが果たしてそれはモテるの部類に入るのだろうか……。
なんだか自虐ネタにしか聞こえない……。
「それってモテるって言うのか?」
「言わない。」
気付いてんのかよ!!
「で、ナンパは成功すんのかいな?」
「五分五分だな。」
「五分五分?」
「ああ、半分は断られるだけだろ。あと半分は……。」
「半分は……?」
「殴られ罵声を浴びせられ断られる。」
おい、まてよ。
すげぇ悲しい五分五分じゃねぇか。
コイツめっちゃかわいそうに思えてきた。
「百パーセント断られてるってことか?」
「あぁ。まぁその女子達は俺の魅力に気付かねぇ見た目だけのヤツだったってことさ。それに、俺も本気をまだ出してねぇからな。」
違ぇよ、アホ。
お前に魅力がなくあほだって気付いてる素敵な女子だからフラれてんだよ。
しかも、本気って……。
「本気って何すんだよ?」
「決まってんだろ!!ここは日本だぞ!日本の文化をなめてんのか!」
日本の文化?
相撲?寿司?しゃぶしゃぶ?侍?忍者?
いや、わかる。多分あれしかない。
「まさか……。」
「あぁ。土下座。」
アホがいる。俺の前にアホがいる。
ナンパで土下座をつかう奴いんのかよ。やばいぞこいつ。本格的にやばいぞ。コイツの頭。
「やめた方がいいぞ。土下座は。うん。
ついでに人間もやめた方がいい。お前以外の全人類が可哀想だ。お前と同じ生命体だと思うと俺も吐き気が……。」
「さらりと言ってるけど、めっちゃヒドいぞ。言ってること。」
「じゃあ、ナンパはもう止めろ。禁止令だ。禁止令。」
「何でだよ?」
「キモいから。」
「だから傷つくっつーの!もっとやんわりと言えよ。直球すぎんだよ!!」
っと話がそれてしまった。
戻さないと……。
「んで、趣味なら何がいいと思う?ナンパ以外な。」
「読書だろ。つーか、それしか思い浮かばん。」
「読書か……。あんま読まねぇから何読めばいいか分かんねぇよ。」
これマジで。漫画すら読まない。
と、いうか本屋に行かない。だから家に本がない。
「じゃあ、帰り本屋寄ってくか?俺がいい本紹介してやるよ。結構本については詳しいんだぜ。」
「頼む。ってかなんだ、おまえ。本読むのか?」
「失敬だなキミは。見た目や印象だけで本を読むか読まないかを決めつけるの良くないと思いますよ。」
建人はメガネを掛けていないのに、クィッとメガネを上げるしぐさをする。
「どんな時に読むんだよ?毎日か?たまにか?」
「たまにだな。フラれた時に心のケアの一環として。」
「悲しい理由だな。」
「っと、昼休み終わっちまう。さっさと食わねぇと。」
◆◇◆◇◆◇
point of view 【神崎 零也】
「で、どんな本を選べばいいんだ?本屋には本が多すぎてどれを選べばいいのかわからねぇ。さっぱりだ。」
学校の帰り道。
建人と本屋にいる。久しぶりに来たがやはり本が多い。本屋だから当たり前だけど。
「どんなジャンルがいいんだよ?」
「ジャンル?」
「あぁ。SF、ファンタジー、歴史、ホラー、恋愛とか。」
「あーわかんねぇ。見て決めるわ。」
「じゃあ俺が探してきてやるよ。」
急に元気になりだした建人は本を探し出すため。小説のコーナーへ向かう。
〜〜五分後〜〜
「よぅし、こんなもんだろ。」
小説コーナーから戻ってきた。手には三冊ほど本がある。
「じゃぁ、一冊目。」
俺は建人から受け取った本の題名を声に出して読む。
「《宇宙人語辞典。》〜あなたもこれで宇宙人としゃべれるようになるらしい。ニ万八千円。〜」
おぃ!
なんだよ、宇宙人語って。しかも『らしい』ってウワサかよ。しかも題名に値段が入ってるし、高いし。
「ほぃっ。二冊目。」
俺はまた建人から受け取った二冊目の本の題名を声に出して読む。
「《メキシコの地図》〜コレさえあれば目を閉じていてもメキシコを正確に歩ける。〜」
っておい!
なんでメキシコ?
しかも目を閉じてたらまずこの本がが見えないッスよね。
しかも建人は小説コーナーに行ったのになぜ辞典と地図がでてくるんだ?
「んじゃラスト三冊目。」
俺は三冊目の本を受け取り、題名を声に出して読む。
「《犬王国》〜犬達の犬達による犬達のための本〜」
気になる。
内容がすごい気になる。
気になってしょうがない俺は本のページを一枚めくり声に出して読む。
「ワンッワンワンワンワワン。ワンワンワワン。バウッ。ワンワン。」
オール犬語。
『犬達の犬達による犬達の本』ってこういうことか。ってか、犬って本読めんの?
「おい、建人。もっとマシな本はないのかよ?」
「甘いぞレイ。読書というのはこう言うもんだ。」
「いや、違うと思うぞ。俺は。」
あー、めんどくせ。
読書より寝てる方がよっぽどいいわ。
「帰るか。」
「そだね。」
零也 ずいぶん時間が掛かったな。
作者 ラブコメさせようとしたんだけど思いつかなくて。
零也 で、急にただのコメディにしたら時間が掛かったと。
作者 そういうこと。