第三話 こいつはマイシスターDEATH(デス)
point of view 【神崎 零也】
「零ちゃん。一緒にかえろー。」
登校初日目は変な問題も起きず、楽しく過ごす事ができた。友達もたくさんできたしな。
と、いうわけで今から帰りましょうってトコなんだが…。
「ねぇ?聞いてるの?一緒に帰ろーよー!」
綾香に一緒に帰ろうと誘われている。
今日は何だか一人で帰りたい気分だ。まぁ、ここは断ろう。
「一緒に帰ろ?」
「わりぃ、俺一人で帰りてぇんだよ。また今度な。」
「やだ、今一緒に帰りたい。」
「ワガママいうな。俺にも都合っつうもんがある。」
「無いもん。」
「有るもん。」
綾香が急に黙る。なんか俺がいじめてるみたいでやな感じだ。
はぁ〜、これじゃあキリがねぇよ。
仕方ない、ワガママを聞いてやるか。俺って優しいな、マジで。
「分かったよ、帰るぞ。置いてくぞ〜。」
俺はさっさと歩きだす。少し速めのペースで。
「え!?ホントに!?やった〜〜!!ってちょっ、待ってよ〜!!」
◆◇◆◇◆◇
point of view 【神崎 零也】
「とうとう着いてしまったか… 我が家。」
綾香と別れて十五分ぐらい歩き到着した我が家
別にどこにでもあるような一軒家だ。特別変わってるような所もない。
だが、ドアの隙間から変な桃色のオーラが溢れ出ている。おかげさまで身体中からでる汗が止まらない。
「は、入るか…。」
ビビりながらも、我が家のドアノブに手をかける。
ガチャ
ドアを開ける。
あれ?何も起きない?
やったー。平和だぜー。ヤッホーイ。
俺の心は喜びのあまり踊りまくっている。コサックダンスにサンバにソーラン節にビリーズブートキャンプを。
「って、最後のは踊りじゃあねぇだろ。」
自分の心に自分でツッコむ。なんだか切ないな。
「まぁ、あの“恐怖”と再会するよりかは、よっぽどましだ」
「ねぇ、お兄ちゃん。その“恐怖”って誰のこと?」
「決まってんだろ。お前だよ。恐怖なんて言葉は、お前の為にあるよう…なも…ん…………。」
「ふ〜ん。お兄ちゃんは愛する私の事をそんな風に思ってたんだ〜。せっかくの二年ぶりの再会なのに…。」
やってしまったぁぁあーー!!
こんな風に出会ってしまうなんて…。最悪だ…。
謝るしか……。
「違うんだよ。あれだよ。お前と会えたのが嬉しくて頭おかしくなっちまって、変なこと言っちゃったんだよ。」
「本当に?」
「ああ。それにしても、しばらく見ないうちに綺麗になったな。見違えたよ。」
「エヘヘ〜。」
この俺の目の前でクネクネしてるのは、義妹の神崎 志織。義妹っても同い年で誕生日が三ヶ月くらい俺の方が早いだけだ。
小五の時までここで志織ん家にお世話になってたんだが志織の父親の転勤で俺達はこの地から離れることになった。
だが二年前に志織の父親が亡くなってしまったため、この銀沢市に帰ることになった。
だけど、俺だけじいちゃんに引き取ってもらった。が、そのじいちゃんも二週間前に死んじまった。
で、行くあての無くなった俺はまた志織ん家にお世話になることになった。
ちなみに俺の両親はとっくの昔に死んじゃった。
俺の両親と志織の両親は仲が良かったらしい。だから俺は志織ん家に預かってもらってるわけだ。
あと、苗字だが俺の親の苗字と志織ん家の苗字が両親とも神崎らしい。
まぁ、奇跡だな
「なぁ、朋美さんは?」
「アメリカよ。仕事で。」「ふ〜ん。大変そうだな。」
「そうだね。」
って、あれ?
朋美さんがいない?
つーか朋美さんってのは志織の母親のことね。
じゃなくて、朋美さんがいないってことは…
「お兄ちゃん、私と二人っきりよ♪」
「へ?」
聞いた?この御方何言ってんだか。
とうとう、狂ったのかな?この子。
「マジで?」
「マジで。」
「ホントに?」
「ホントに。」
「地デジ?」
「地デジ。」
・・・・・・。
「絶対イヤだ。そんなんだったら、野宿の方がいい。」
「なんで?」
「お前と二人で生活するなんて…
『ライオンとウサギを同じ牢屋に入れる。んで、五分後にはウサギはライオンの胃袋の中でしたー。』
みたいなもんだ。」
「いいえ、違うわ。お兄ちゃん。
私とお兄ちゃんが二人暮らしをするってことは…
『二匹のウサギを同じ牢屋に入れるわ。で、その二匹は夜の男女で二人きりで行う行事を繰り返し、五分後には子供がたくさんいる』
ようなものよ。」
「おーい、俺の予想を遥かに越え、めっちゃ危ない方向へ進んでるぞ。」
「危ない?どこが?愛があれば全て許されるのよ。」
「いやいやいや!その考えが危ないんだってば!」
「・・・・・・」
志織が急に黙り込む。
俺も志織の変化にビビり、黙る。
つーか、このパターンさっきあったよね。綾香ん時。
「ねぇ、お兄ちゃん。」
無言だった志織が話しかけてくる。低いトーンの声で。
「お兄ちゃんは私の事、嫌い?」
「へ?」
「だってさ、私なんだか避けられる気がするんだもん。
私はお兄ちゃんの事、大好きだよ?二年間も会えないなんて苦しかった。ホントは今、凄いうれしいの。
でも、お兄ちゃんは私と二人で暮らすのを嫌がってる。
だからどうしても私の事を嫌いだって思っちゃうの。」
コイツそんな風に考えてたのか…。
なんか、悪い事言っちまったな。
よく考えてみたら兄妹だもんな。そりゃ、血は繋がってねぇがそんなことは関係ねぇ。兄妹が二人で暮らすって全然おかしいことじゃねぇよな。
「わかった。一緒に暮らすか。頑張ろうな。」
「ホントに?やったー♪」
志織も嬉しそうだ。
これが本来の形だからな。兄妹として。
志織のテンションも元に戻っている。
「じゃあさじゃあさ♪“アレ”いつやる?今夜?」
「“アレ”?なんだそれ?」
「決まってるじゃない。男女が夜に二人きりですることなんて“アレ”しかないじゃない。」
「って何言ってんじゃー!!お前女の子だろ!!女の子がそういうことを軽々しく言うな!!」
「だってお兄ちゃんが聞いてきたんじゃない。」
「やっぱりキャンセルだ!お前と住むこと!」
「さっき“いいよ”っていったじゃんかー!」
「証拠は?証拠はあるのか?」
最低だ。我ながら最低な行為だ。俺。
完璧に俺の勝ちだと、俺は喜ぶ。
が・・・
“わかった。一緒に暮らすか。頑張ろうな。”
志織の左手辺りから聴こえてくる。
その左手にはライター位のサイズの電子機器が握られている。
その電子機器は多分・・・
「ボイスレコーダーよ。」
「いやいや、なんだか俺の声に似てますなぁ。」
「当たり前だわ。お兄ちゃんの声を録音したものだもん。こんなことがあろうかと、録音しておいてよかったわ。
これでも証拠は足りないかしら?」
なんつーやつだ。計算高いこの計画。コイツは学生なんかやってる場合じゃねぇ。さっさとルパンになるべきだ。
「これでも、嫌だっていうのなら…」
「なら?」
「学校の皆にお兄ちゃんに襲われたって言いふらす。」
ぎゃー!!止めて!!
そんなことされたら俺、終わる!!!
「つーか、襲われかけたの俺ですよね?」
「こういうのは、可愛い女の子の方が有利なのよ。どんなに性格が悪くてもね。」
この子言ってる事、サイテーだー!!
だけど、なんだか筋が通ってる気がするー!!!
「わかりました。大人しくここで暮らします。グスン。」
「やったー。あと、襲ったりしないから大丈夫。安心して。
でも、お兄ちゃんが襲いたくなったらいつでも襲ってね♪」
「襲うかっつーの!!!」