like or love
この感情はどっちなのか。
よくそう考えてみる。
日本語でいうところの「好き」は、英語で言うところラブとライクに分けられる。
そんな考え方があるらしい。
でもそれって可笑しくないか?
ライクって言うのは好きでいいけど、ラブは愛してるとかじゃないのか?
そう思いつつ、自分より一周りは小さい女の子の頭頂部を見る。
恋と愛は違うものだ。
結婚する人と恋人として付き合う人のタイプは違うのだと本でもあったし。
だからこそ、区別しなくてはいけない。
目の前にいる人への気持ちを。
うん。
そうだよな。
目下にいるこの女の子はただの幼馴染だ。
ずっと一緒に居るから、安心していられるだけだ。
というか、好きで一緒に居る訳だ。
嫌いだったら一緒に居たいとも思わない。うん、ここまで問題ない。
でもこれは恋じゃない。
家族に感じるような愛だ。家族愛。
彼女だってきっと同じように想ってくれているはずだ。
それ以上でも以下でもない。
・・・そのはずだ。
「ねぇねぇ、今週末映画見に行かない?」
こうやって誘われたって、全然ときめかないぞ。
だってこれは家族としてのコミュニケーションだから。
手を握られたって、何の問題もない。
妹、そうだ!妹なんだ。
妹から絡まれてる兄的な気持ちなんだ。
僕は妹がいないからわからないけれど、こんな感じの思いを全世界の兄はしているのだ。
「うん、行こう。何みたいの?」
「えっとね、昨日公開され始めたやつなんだけどね・・」
なるほどなるほど。
なんとなくわかってきたぞ。
やっぱり僕の勘違いなんだ!
僕がこの子を(恋愛的な意味で)好きなわけない!
この子だって一緒なはずだ!
だってずっと一緒に居たんだから。
何かそういう思いがあるならば、もっとなにか、こう、違うはずなんだ!
「でさ、これみて」
そう言って出したのは映画館のチラシだ。
彼女が指さしたのは、恋人割引き?
「ちょっとだけど割引されるみたい」
ふむふむ、恋人のふりをして割り引かせるのか。
これは本当の兄妹じゃぁできないかもだな。名字訊かれたら一発アウト。
夫婦というには厳しい年齢だ。同じ年だし。
「だからさ、いっそこれを機に付き合わない?」
恥ずかしそうに笑う彼女を見て、嘘偽りのない言葉と知った。
唐突に告白をしてきた彼女よりも僕の方が恥ずかしかった。
自分の無知さに耐え切れなくなった僕は、その後町内を爆走してから返事をした。