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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第四章 新たなる出会いの章
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外話 ロゼの学園都市到着記3(2017.10.3修正)

ロゼは司教座で繰り広げられている光景に唖然としながら3人の様子を伺った。


「人が気を利かせて特例で呼んでやったというのにその態度は何だ!」

「知るか!大体お前は知ってたのならもっと早く報告せんか!」

「うん、お茶が美味しいわね」


司教座の中は混沌カオスであった。


何が起こっているのかわからずロゼはピエトロの方を向くが、ピエトロも心底呆れたと言う顔で3人を見ていた。


「お二人とも何をやっているのですか…あなた様も見ているのならお止めください」


そうピエトロが言うと男2人は子供のように責任を押し付ける。


「ワシが悪いのではない!こいつが悪いんじゃ!!」

「お前が悪いんだろうが!こんな事なら呼ばなければ良かったわ!!」

「なんじゃと!?元々の原因はお前だろうが!この阿呆が!!」

「あ!テメー言ったな!私が阿呆ならお前は馬鹿だコノヤロー!!」


男達はどんどんとヒートアップしていった。

そんな中1人、呆れているのかまたは悟っているのか淡々とした口調で女性が口を開く。


「止めても無駄よ、昔からこんな感じだもの。私はもう何十年も前に諦めたわ。とりあえず放って置けばその内飽きるから放置しておきなさい。それよりも………あなたがロザリアね」

「は、はい!」


女性がロゼの前に歩み寄りそう言ってきた。


「私はローレンシア・オフィーリア・ユージェニー・アリステッラ・フォン・ラ・ゴルドニアス・エルストライエ。フェスモデウス聖帝国エルストライエ侯爵家当主であなたのおばあ様よ」

「は、はじめまして!ロザリア・エルローズ・サンティアス・レンネルフォッシュと申します!!」


初めて顔を見る祖母にロゼは緊張しながら挨拶をした。


「本当ははじめましてではないんだけどね」


そう言ってエルストライエ侯爵は満面の笑みを浮かべながらロゼを抱きしめた。


「それでは私は職務に戻りますのでごゆっくり」


ピエトロは横で騒いでいる男達を諦めたのだろう。

呆れた顔をしながらそう言ってドアを閉めた。


「お前は昔からそうだ!なんでいつもいつも……」

「はあ!?それはこっちの科白じゃ!!大体おまえは……」


幼稚な言い合いはまだ続いていたらしい、ロゼも微妙な顔をしながら聞いている。


「外野が煩いわね…会うのが久しぶりだから止まらないようね……あなた達いい加減にしなさい、そろそろ私も怒るわよ」

「ハイィ!」

「………」

「ほらセディもそんなムスっとした顔しないで話に加わりなさいよ、呼んでくれたことに感謝しているんだから」


エルストライエ侯爵に窘められて先程まで騒いでいた2人は不機嫌といった顔でこちらに歩いてくる。


「よく来たな。私は」

「おお!我が孫娘よ!会いたかったぞ!!」

「おい!私が話しているのに入ってくるな!!」

「煩いわい!!お前などより孫娘じゃ!!」

「どっちも煩いわよ。今度騒いだらこっちにも考えがあるわ」

「「……ハイ」」


また言い合いを始めそうな2人にエルストライエ侯爵が釘を指す。


「面倒だから私が紹介するわ。こっちがベネディクト・ザクセン・ド・サンティアス・エルストライエ、あなたのおじい様で。あっちがセオドアール・ディアマンテ・フォン・トリノ・ド・ラ・オルブライト・サンティアス、このアルティア司教座聖堂の司教よ。はいこれで自己紹介終了」

「………紹介が雑だ」

「ひ、酷いよローレンシア…」

「こうでもしないとあなた達競い合って話し続けるでしょうが。私が言ったほうがずっと効率的よ」


多分エルストライエ侯爵は2人の扱いに慣れているのだろう、2人ともそれなりに威厳があるのにエルストライエ侯爵に掛かれば怒られた幼子のようになってしまった。


「とりあえず立ち話もなんだ、座って茶でも飲みながら話そう」


そう言ってオルブライト司教が机を指差すと皆頷きそちらへと移動していった。


「色々話はしたい所なんだけどまずは一番の目的から済ませてしまいましょう。あなたの学園入学の事よ」


席に座りお茶を一口飲んだところでエルストライエ侯爵が口を開いた。

どうやら今回の進行はエルストライエ侯爵がとるらしい。

他の2人もそれに不満は無いのかおとなしくしている。


「あの。入学と言うことなんですが、私は試験とか受けなくてよろしいのでしょうか?」

「他人行儀な話し方はしなくて良いわ。それと試験の方は大丈夫よ。グスタフ、あなたの養父からの手紙で初等部卒業レベルまで教えたって書いてあったわ。それに飛び級出来るくらい優秀とも書かれていたわ。その言葉が真実ならば中等部への入学は全く問題ではないと言う事よ」

「親馬鹿丸出しの誇張とは思わなかったんですか?」

「それは無いでしょうね。もし学力が足りずに入学しても直ぐに付いて行けずに落第して退学になるのだから。あなたの養父は態々嘘をついて娘を傷つける馬鹿ではないもの。それにあなたの受け答えを見ていればちゃんとした育て方をしたのが良く分る。あの子に任せて正解とは言わないけど、そのことについては認めるわ」


ロゼは父を褒められた様な気がして少し嬉しかった。


「(暇つぶしと称して教えられてたことってこの時のためだったんだ…)」


ロゼはグスタフから何に使うのか分らないような色々な事を教えられてきた。

それは前世でも受けた事のある内容から全く知らない内容までだったが、普通に生活していたら使わないと思う内容ばかりだったので不思議には思っていた。

しかしグスタフは最初からロゼを中等部に入れるために教育を施していたのだろう。



「ところで、ロザリアは」

「ロゼで大丈夫ですよ」

「そう、ではロゼはどこの科に入るつもりなのかしら?」

「まずそこから分らないんですけど…学園には色々な科があるんですか?」

「ええ。普科・芸科・武科・魔科・聖科があるわ。あなたは精霊を感じられる事が出来る様子だから魔力もあるでしょう、ならば魔科か聖科をお勧めするわ。満遍なく色んな事を学びたいのならば普科でも良いと思うけどね」

「えーっと………」


ロゼは学園に関して様々な事を質問することにした。

エルストライエ侯爵は勿論、祖父やオルブライト司教も説明に加わり詳しく話を聞いた。


「そうですね……説明を聞く限りですと私は魔科に進もうかと思います。魔法の事に関してもっと知りたいですから」

「そう、ではその方向で手続きをお願いするわ。頼んだわよセディ」

「面倒な事は私に押し付ける気か…まぁ最初からそのつもりだったから良いがな」


オルブライト司教は苦笑しながらそう言うと、祖父が口を挟んでくる。


「ふん。雑用仕事がお前にはお似合いじゃわい」

「あ?なんだと?やるか!?この馬鹿が!!」

「おお!受けて立ってやるぞ!この阿呆!!」

「…懲りないわねあなた達。じゃあそっちの話が片付いたから次の話ね」


エルストライエ侯爵はお茶を一口飲んでから話を切り出した。


「ロゼ、あなたの両親の財産の事よ。私達の娘夫婦が死んでからその財産は一旦私の所へ入ってきた。でも普通はあなたの所へ行く筈だったんだけれど、あなたの養父が娘夫婦が死んでから直ぐに出国してしまったからそれが出来なかったの。そのお金はあなたの物よ」


ロゼの母親は准伯爵だったので生前分与としてそれなりの財産を持っていた。

しかしロゼの両親が死んでから色々な手続きをする前にグスタフが出国してしまい、そのお金は宙ぶらりん状態になってしまった。

エルストライエ侯爵夫妻とオルブライト司教、役所の人間が話し合った結果、一時の救済処置でエルストライエ本家預かりとして財産を凍結していたのだ。


「おばあ様が言いたい事はなんとなくわかりました。お金の管理についてですよね?」

「ええ、そうよ。今からあなたに任せるか、成人してから任せるかと言う話よ」

「成人してからでお願いします。もしお金が必要なときは後見人を通してお小遣いと言う形で仕送りをお願いします」

「分ったわ。では後見人はセディで良いかしら。私がなりたいのは山々なんだけど、忙しくてそう頻繁にこっちに来れそうにないのよ」

「わかった頼まれた」

「あ!そうだ忘れてた!父からオルブライト司教様にお手紙を預かってたんだ」


ロゼは父から渡せと手紙を受け取った事を思い出し、オルブライト司教に手渡した。


「ふむ。成る程」

「何が書いてあったんじゃ?」

「何そう大した事ではない、ロゼの制服の事だ。少々高くつくが精霊糸を使った特別製の制服にしてくれと書かれている」

「そうね。女の子なんですから清潔感が大事よね。それにデザインも可愛いのにしなきゃ」

「それなら任せておけ、心当たりはある。あやつに頼めば心配はいらんだろう、実績もあるしな」

「ロディアスだったか?その職人に任せるのか?」

「いや、パブリックスター商会に頼む。あやつに丸投げすれば良いだろう。それにあやつも魔科だしな」


そう言ってオルブライト司教はいたずらっ子のような顔をして笑った。


「…もしかして、例の子?」

「ああ、前に伝令で言っていた子か」

「ああ、そうだ。私この頃もセボリーに会ってなかったからな、早速手紙を送りつけてこっちに来させよう。明日以内で良いな」


「(セボリー?そういえばさっきも聞いたような…)」


「私も大司教様から聞いたけどあれは無かったと思うわよ。怒られて当然よ」

「うぐ………もう言うな、反省はしている…」

「ではワシ等も明日まで残ろう。その子にも興味がある」


こうしてロゼは初めて祖父母に会ったのであった。

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