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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第四章 新たなる出会いの章
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外話 ロゼの学園都市到着記2(2017.10.3修正)

ロゼは学園都市の町並みを見回しながらアルティア司教座大聖堂を探していた。

暫く歩くと露店などが並ぶ所謂市場外のような場所に足を踏み入れた。


「(あそこに屋台がある!そういえばお腹すいたなぁ。でも我慢よ…この国の料理って美味しいから聖帝国に入国してから食べ過ぎ感が否めないわ……前世で食べた事のある料理も何個か発見したからお金が出来たらセーブして少しづつ買い食いしよ)」


屋台から出る匂いの誘惑に惑わされつつ、夫婦から聞いていたアルティア司教座大聖堂の特徴を手がかりに探していく。

しかし如何せん街が広すぎて何処が何処なのか分らない、完全におのぼりさん状態に陥ってしまった。


「(これは誰かに聞いたほうがいいわね…あそこで買い食いしてる男の子にでも聞いてみようかしら…)」


ロゼは大口を開けながら串焼きを頬張っている少年に話しかける。


「あのぉ、お食事中すいません。アルティア司教座大聖堂ってどこですか?」

「ん?あそこだ、ほら!あそこ!あの何か分らないがでっかい塔みたいのがデデーンと並んで建っているだろ?あそこだ。ちょっと前に行ったから確実だぞ!ああ、そういえばあのセボリーの件から行ってないな」

「(セボリーの件?まぁいいや)ありがとうございます」

「おう!!あ!そうだ!これやるよ!」


そう言って腕白そうな灰色の瞳を持つ少年はロゼに持っていた串焼きの1本を渡した。


「あ、ありがとう!実は食べたかったんだ」

「うん、なんとなく分った。その格好じゃ学園都市に着いたばっかりだろ?なら学園都市の美食を味わってけ!」

「やっぱり分ったかぁ。でもありがとうね!あ!すごい美味しい!!」

「そうだろ!この串焼き屋はこの地区では一番美味い串焼き店なんだぞ!」

「お!食べ歩きの貴公子にそう言ってもらえるとまた売り上げが上がるぜ!これオマケだ、持ってきな!!」

「(食べ歩きの貴公子?何それ?)」


そう言って屋台のおじちゃんが少年とロゼに1本づつ先程とは違う串焼きを手渡した。


「ありがとね。おじちゃん」

「おお!おっちゃん男前!!」

「褒めるな褒めるな!言うのなら店の宣伝宜しくな!」

「おう!!」

「色々ありがとうね」

「おう!見た目から考えると中等部に入学する留学生だろ。と言うことは俺の後輩になるんだからそれくらいはやるぜ!じゃーなーー!!………俺が他人に食い物やったって聞いたらあいつ等絶対俺が頭おかしくなったと疑うだろうな…」


多分最後の言葉は独り言なのだろうが、地声が大声だからか少年の独り言は普通に聞こえ、声と一緒に遠ざかるように人並みの中へと消えて行った。


貰った串焼きを頬張りつつ目的地へと歩く事約30分、道中色々な誘惑があったがそれを振り切り漸くロゼはアルティア司教座大聖堂に到着した。


「(ここがアルティア司教座大聖堂……この世界に転生してから高い建物始めてみたわ…これまでも聖帝国で大きい建物を見てきたけど、この建物は横にも縦にもでかそうね)」


ロゼは感動を覚えつつもアルティア司教座大聖堂を見上げる。


「(物凄く入りづらいわ……皆普段着っぽいけど綺麗な格好で入っていくからこんな汚れた服装で入る勇気が…)」


アルティア司教座大聖堂の目の前に来たのは良いがロゼはそこで立ち止まった。

自分の服装と周りの服装、そして何より建物自体が荘厳で気軽に入れるような雰囲気ではなかったからだ。

聖堂の入り口には兵士が2人立っており、その兵士達の存在も入りづらさを増している原因の一つであろう。


「(ええい!いったれ!女は根性よ!!)」


ロゼはまず兵士に話しかけようと寄って行った。


「あのすいません。私ロザリア・エルローズ・サンティアス・レンネルフォッシュと申します。父のグスタフ・レンネルフォッシュからオルブライト司教様にお会いするように言われてきました。父の名前を言えばそれでご面会できると聞いたのですが…」

「オルブライト司教様にご面会?少々お待ちください。おい!確かめて来い!ピエトロ助祭が確か中で警備をしているはずだ」

「はい!グスタフ・レンネルフォッシュ様ですね、確かめてきます!!」


そう言って2人の兵士のうち若い兵士が聖堂の中へと入って行く。

10分ほど待つと先程の若い兵士が穏やかそうな印象の美形の男性を伴って戻ってきた。


「ロザリア・エルローズさんですね。オルブライト司教様より話は伺っております。司教様もあなたにお会いする事を楽しみにしていましたよ。では早速ご案内しますのでどうぞこちらへ」

「あ、あの!ごめんなさい。まず体を清めたいのですが!流石にこのような状態で司教様にお会いするのはちょっと私的に憚られると言いますか…」


ロゼが自分の服を摘みながらそう言うと、美形の男はロゼを頭から爪先まで順に見下ろすと頷いた。


「別に心配は要らないと思うのですが…では気になるのでしたらまずは浴場にご案内してからご面会と言うことで。ではこちらも準備を整えて置きますのでごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます」


ロゼはやっと体を洗えると安心し、体の力が抜けたようであった。

しかし、美形の男に連れられて聖堂の中へ入るとまた違う緊張感が降りかかってくる。


「(外も凄かったけど中も凄すぎ…)」

「ああ、申し送れました。私はピエトロ・バレンティノ・ド・ラ・サンティアスと申します。アルゲア教の助祭でアルティア司教座大聖堂付き騎士をしております」

「あ、はい。ご丁寧にどうも。私はロザリア・エルローズ・サンティアス・レンネルフォッシュと申します」


一通り自己紹介を終えて一般人は入れないプライベートエリアへと足を踏み入れる。

プライベートエリアは先程の聖堂の中より落ち着いた雰囲気で、少し歩くと庭を見渡せる回廊が続きそこを抜けて暫くすると浴場に案内された。

そこでロゼは久しぶりにたくさんのお湯を使って身を清める事が出来た。


「(ああ!やっとお風呂に入れた!!石鹸まで付いてる!久しぶりだわ!うわぁ、いい香!これ香油でも混ぜてるのかしら?こんなに良い香の石鹸前世以来だわ!!)」


石鹸は転生してから何回かは使った事はあったがロゼ達のいた国では高級品であり、グスタフも購入する金事態はあったが品物事態が無い事が多かったのでロゼもあまり使った事はなかった。

ロゼも前世の記憶を生かして石鹸を作ろうと試みたのだが、如何せん苛性ソーダと言うモノが必要なのはわかっていたが、その苛性ソーダとは何なのかが分らず作るのを諦めていた。

しかし、このでは当たり前のように置いてあったので、ロゼはかなり感動した。

今まで張り詰めていた心と体の緊張がお湯に浸りながらほぐれていく感じが自分でも分った。


体と髪を拭き終え新しい綺麗な服を着て実を整えると浴場から出る。

浴場の外は廊下のようになっており、そこには既にピエトロが立っていた。


「すみません。お待たせしましたよね」

「いいえ。大丈夫ですよ。ではご案内してもよろしかったですか?」

「はい。お願いします」

「オルブライト司教様は現在司教座にて執務を行っています。すでにご面会の準備は整っていますので司教座にご案内しますね」


ロゼはこれから会うオルブライト司教に会って何を話そうかと悩んでいた。

本来の目的は留学なのだからまずは学校の事からか、父の事か自分の本当の両親の事か、または司教と懇意と言っていた母方の祖父母の事だろうかと。

まずは自己紹介をしてお礼を言うのが普通かと考えつつ、ピエトロに案内されて回廊を歩いていった。


歩いているうちにロゼは体がどんどんとざわついてくるのを感じた。

実は聖帝国に入国する時から感じていたのだが、学園都市のアルティア司教座大聖堂に近づくにつれて強く感じるようになった。

最初は何かと不思議に思い肌をさすったりしてみたが治まる様子は無く、逆にざわつきは増していく。


「感じますか?」

「え!?」


ピエトロに突然そう言われロゼは戸惑った。


「体がゾワゾワする感じがするのでしょ?」

「………はい」

「それは精霊を感じ取れている証拠ですよ。資質の無いものには感じることは出来ません。現に私は感じられませんからね」


そう言ってピエトロは苦笑した。


「先程大勢の人がいた場所は見せかけの司教座です。今から行くのは本当の司教座でそこには精霊達がたくさん集まってくるのですよ。精霊を感じられることが出来る者はこの国でもかなり稀です。注意なさい、もし他国でそれが知られたら命に関わりますよ。特にあなたは女性ですからね、色々と注意を払わなければなりません」

「はい…分りました」

「さて、到着しました。この扉の奥でオルブライト司教がお待ちですよ」


コンコンコン


「入れ!」


扉の置くから入室の許可が聞こえ、ピエトロが扉を開けた。

そこでロゼが最初に目にした光景は、殴り合いをしている2人の男達とそれを無視するかのように優雅にお茶を飲む女性の姿であった。

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