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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第四章 新たなる出会いの章
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外話 ロゼの学園都市到着記(2017.10.3修正)

ロゼはフェスモデウス聖帝国に着いてから怒涛のカルチャーショックを受けていた。

正確に言うのならば前世の生活に近い水準のインフラや文化に喜んでいた。


「(すごい!すごい!!まるで前世のように清潔で生活水準が他の国なんか目じゃないほど進んでる!!周りの人達から聖帝国は別世界だって聞いてはいたけど本当だったわ!!!)」


興奮するロゼに一組の夫婦が声をかけてくる。


「ロゼちゃん、あと1日ほどで学園都市に到着するよ」

「はい!今までありがとねおじちゃんおばちゃん」

「良いのよ、商売だもの。それにむさ苦しい男より可愛い女の子と一緒に旅が出来て嬉しかったわ」

「そうだな。今までは男ばっかりだったから華がなくてな…」

「ちょっとあんた!!私は華じゃないのかい!!?」

「はいはーい、やめやめ。おじちゃん、女は何時まで経っても華なのよ」

「おら!良い事言うわね!あんたも見習いな!!」

「とばっちり食うのはいつも俺だ…」

「あんたの場合は口が災いの元だよ!」


ロゼは養父グスタフと別れてからこの夫婦と一緒に聖帝国への道のりを共にした。

養父グスタフとは知り合いらしく、なんでも養父グスタフが聖帝国へと留学する時もこの夫婦が導いてくれたのだと言う。

なので夫婦は旅の道中に若い頃の父の話をしてくれたり、今まで言った国や町の話をしてくれた。

ロゼもそんな夫婦に気を許し、今までの父との体験などを話し一緒に軽口を叩けるまでの仲になっている。


「ねぇねぇ、おじちゃんおばちゃん。学園都市って迷宮があるんでしょ?それって私でも潜れるのかな?」

「ロゼちゃんやめておきな。あそこは普通の人間が入ったら生きては出られないよ」

「そうだよ。もしロゼちゃんに何かあったらグスタフが悲しむよ。それより学生生活を楽しみな。そのためにグスタフが目に入れても痛くない娘を送り出したんだから」

「………うん、分った」


口では潜らないと了承していたが、ロゼは潜る気満々であった。

何故なら………


「(お金が………お父さんが言ってた意味が良く分ったわ。ここの物価は異常よ。逆に考えればここである程度稼いだらお父さんの所に戻った時には大金になっているはずだわ。お父さんに楽をさせたい、そのために迷宮に潜らなきゃ!)」


しかしロゼはこの時知らなかった。

自分の国籍が聖帝国なので通常は15歳の成人を待ってからではないと潜れないと言うことに。

そしてグスタフはそれなりに金を持っていることに。


他国人が聖帝国に留学出来るほどの教養があるということは実家が裕福であり、それなりの権力を持っていなければ出来ないことである。

グスタフはとうの昔に実家とは縁が切れているがそれなりの貴族の出であり、故郷ではかなり裕福で所謂お坊ちゃまでそれなりの貯蓄もあった。

更に留学していた時に迷宮で冒険者をしていたので、その貯蓄額はかなりのものだった。

各国を渡り歩いていたのはその金を如何に減らさずに増やすかを考えた行動であり、決して金が無いから各国で危ない仕事をしていたと言う訳ではないのである。

サンティアス学園を卒業したと言う事は他国ではかなりのネームバリューであり仕事も引く手数多だ。

しかしグスタフは自分に商売気がないと感じていたのでそれならと体を動かして稼ぎ、たまに入った賭博場では必ずと言って良いほど大儲けをしていた。

それにロゼから見ると危ないと思える仕事でも、迷宮冒険者をしていたグスタフにとってはそんなに危ないと感じなかったと言う事もあり、貯蓄額は増える一方という正の連鎖。

後にそれを知ったロゼはorzの状態で固まり、文句を言いながらも自身も貯金をするのであった。


「…おじちゃんおばちゃんじゃーね……お元気で!」

「ロゼちゃんもね!」


次の日、学園都市に着くと別れを惜しみながら今まで世話になった夫婦に挨拶をしていた。


「体に気をつけなよ!」

「……うん!」


ロゼは夫婦の言葉に義父を思い出し目頭が熱くなる。


「悪い物食べるんじゃないよ!」

「お腹を出して寝るなよ!」

「食べないよ!それにお腹出して寝たのは1回しかなかったじゃないの!」


だが、話は迷走してきた。


「体の調子が悪かったら病院にいくんだよ!」

「悪い男に捕まるなよ!」

「だぁああーーーー!!もう分ったから!最初のほう以外はいらなかったわ!!」


そして混沌カオスと化しロゼは半ば半ギレしていた。


「うん!じゃあ行って来ます!!」

「元気でね!」

「達者でがんばれよ!」


こうしてロゼは学園都市の中へと足を踏み入れたのであった。





学園都市に到着してからまずロゼがしたことは公衆浴場を探すことである。

この数ヶ月何回か水浴びはしていたが風呂には入っていなかったのだ。


実はロゼやグスタフが今までいた国では湯船にお湯をを張って入る習慣は全くと言って無く、その殆どが蒸し風呂か沐浴、または濡れ布で体を拭くだけであった。

しかし昔留学していたグスタフは入浴の気持ち良さを忘れられず、迷宮冒険者時代に手に入れた無限収納鞄マジックポーチの中にバスタブを入れて今までずっと入っていたのだ。

なのでロゼは前世の記憶の事もあり入浴する事が当たり前だと思っていた。

グスタフと一緒に色んな国を回っていた時も、周りから漂ってくる臭いを臭いなとは思っていても、ロゼは全くその事を気が付かなかったのである。

それがこの数ヶ月、殆ど沐浴もしない事を疑問に思い夫婦にその事を聞いてカルチャーショックを受けていた。


「(もう我慢できない!周りの人達が清潔だから余計自分の臭いが気になる!早く汚れと体臭を落としたい!!)」


しかし探しても探しても中々公衆浴場を見つけることは出来なかった。

その理由は聖帝国の家には必ずと言って良いほど備え付けの風呂場がある。

したがって天然温泉が湧いている所以外は公衆浴場と言うものは殆ど無い。

それを知らずにロゼは探し回っていたのだ。


「あのぉ、すみません。この辺りに公衆浴場ってありませんか?」

「公衆浴場?そんなの最後に見たの20年程前よ。多分今は学園都市でもかなり端のほうに行かないと無いんじゃないかしら?」

「………終わった」


ロゼはその言葉を聞きorzの状態で蹲った。


「……聖堂に行ってみたら?多分事情を話せば入れてくれると思うわよ。気まずいのなら少しお布施を渡せば何も言われないわ」

「…そうしてみます。ありがとうございました」


ロゼの様子に少し引いているご婦人にそう言われ、ロゼは当初の目的地に向かう足取りはとても重く感じた。


「(はぁ…結局汚いままでオルブライト司教様と言う人に会うのか…っあ!そうかあれを使えば!!)」


ふと目を端に寄せるとそこには噴水があった。

これで入らなくても布を濡らして人気の無い所で体を拭けば少しはマシかもしれないと近づくと…


「やっぱりこの国は水が豊富だな!沐浴し放題だぞ!!」

「そうっすね!でもこの町の住人イカレてますね!こんな公衆の面前の真ん中に沐浴場を作るなんて!!」

「まぁそれがこの国では常識なんだろう。なら俺達もそれに従うまでだな!!」


そう言って服を脱ぎ捨て裸で噴水の中へと入るかなり汚い男達がロゼの前に現れた。


「おい!お前達何をやっているんだ!そこで服を脱いで沐浴するな!それは噴水と言って沐浴場ではないぞ!」


数分して周りの住民が通報したのだろう、警備兵が駆けつけてくる。


「は!?噴水?何じゃそりゃ!そんなの分るはずねーじゃねーか!!」

「そうだそうだ!沐浴場と何の違いがあるっていうんだ!俺達から見れば豪華な沐浴場だぞ!!」

「お前等汚いモノを見せびらかすな!警告はしたからな!おい!拘束しろ!!」

「「「「「了解しました!!!」」」」」

「な!おい!触るな!」

「あ!俺達の服が!」

「誰もお前達のことなんて触りたくねーよ!うお!クセー!!」

「うわ!水が真っ黒になってるぞ!こいつら一体どれだけ風呂に入ってないんだ…?」


男達は警備兵に連行されていった。


「…………………………………」


その光景を見ていたロゼは数分後の未来の自分の姿を投影して冷や汗を流すしていた。


「(もういっその事そこらじゅうにある噴水で服を着て沐浴しようかとか血迷ったけどやめて正解だったわ…いくら人気の無い噴水で布を濡らして体を拭くにしろ聖堂に行く前に檻に入るのは勘弁だわ…もういいわ!早く聖堂に行って最初にお風呂に入れてもらってからオルブライト司教様と会おう!!それしかない!!!)」


ロゼはやけくそ気味に開き直りアルティア司教座大聖堂へと向かっていった。

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