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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第一章 別れと出会いの章
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第八話 訓練と趣味

「「「なぁ、遊ぼうぜ!」」」


元気な声に顔を上げた俺は咄嗟に答えを出せずに黙っていた。

最近気になることが多すぎる。日々の仕事、内緒でスキルの練習、考え事などに時間をとられて全く子供らしい生活を送ってこなかったと反省していると。


「セボリーお前この頃付き合い悪すぎるぞ!コーセーの世話があるのは分かるが、女子やゴンドリアたちとは一緒にいるのに俺たちとは全然遊ばないじゃないか」

「あ~悪い。この頃自分なりにかなり忙しくて遊んでなかったわ。良いぜ、ところで何をやるんだルピシー」

「剣の稽古だ!!ラングニール先生が教えてくれるってさ」

「それは遊びとは呼べないと思うぞ。お前自身で稽古って言ってるし」

「呼び方はどうでもいいんだよ。とにかく行くぞ!!」

「いや、俺いま木剣持ってないし」


「そういうと思って用意したぞー」


ガルディが俺の分の木剣を良い笑顔で差出し、ロベルトとルピシーが俺の腕をホールドしてきた。


「「「一名様ごあんなーい!!」」」


「お前らは居酒屋の店員か!っていうか俺はNA○Aの職員に捕まった宇宙人では無いぞ!!」

「まーたわけ分からないこといって」

「ほっとけほっとけ。いつものことだ」


極めて遺憾である。


訓練場改め空き地に着くと、他の兄弟とラングニール先生の姿があった。


「なんかラングニール先生見たの久しぶりなんですが」

「おう!俺もお前ら見るのは久しぶりだ」

「え?今まで院内にいたんですよね?」

「いや、いなかったな」

「え!?なんで?」

「学園の高等部で授業を受け持ってたんだ。だからこの頃こっちに来ることは少なかったな」

「それはどうもお疲れ様です」

「ははは、ありがとさん」


ラングニール先生は赤髪に赤い瞳を持ち、身長2メートル以上の高さを誇り尚且つ筋肉モリモリなマッチョメンな先生だ。年齢は若く見積もって30代後半ほどだろうか。


「ん?見ない顔が混じってるな」

「モキュ?」


そういってラングニール先生と公星は見詰め合う形でお互いを見ている。


「こいつは公星といって俺の使い魔です」

「お前その歳で使い魔契約したのか」

「はい、副院長に手伝ってもらいました」

「おのおっさんか。まぁいい、ちゃんと面倒見ろよ」

「はい」


副院長先生をおっさんって。まぁ確かに年齢的にはおっさんだが…

いや、もしかしたらお坊さんっていう意味のおっさんかもしれんな…


公星と先生の顔合わせも終わり訓練にはいる。危険なので公星は離れた所に放しておく。


「まず剣の持ち方と構え方、そして素振りだ」

「えー!打ち合いじゃないの!?」

「アホか。初めから打ち合いなんてさせると思うか。まず基礎をしっかり固めてからだ」


兄弟たちのブーイングの中、先生は大人用の木剣を掴み俺たちに剣の握り方のレクチャーをする。


「よし、握り方と構え方ははいいな。じゃ今度は立ち方だ。これがしっかりしていないと打ち込まれた時すぐにフラ付くぞ」

「「「はーい」」」

「よし、立ち方も良いな。じゃあ、素振りに入る」


5分ほど素振りをすると段々と手が痛くなってきた。思っていた以上にきついぞこれ。

他の兄弟が素振りを続ける中、俺の手が痺れて剣を落としてしまった。


「手に力がはいりません…」

「まぁ、初めはこんなもんだ」

「だらしないぞセボリー」

「仕方ないだろ、剣を握る事自体初めてのもやしっ子舐めるな!!」

「「「威張るなよ!!」」」

「畑仕事で鎌とか握ってるのにね」

「鎌と剣では使う筋肉が違うからな。しかも畑仕事で一々全力でやってたら耕す前に体力が切れちまう。剣も慣れれば力の抜き方も分かってくるが、まぁ今は無理だな」


先生が至極真っ当なことを言ってくれる。その後型を教えてくれ剣の稽古は終り

「とにかく基礎の練習をつめろ。土台がもろい家はすぐに壊れちまうからな」

そういい残しラングニール先生はどこかへいってしまった。



ここ最近、副院長たちには内緒で俺はスキルの練習をしていた。スキルレベルも前より上がっている。


*******************************

セボリオン・サンティアスLV1 性別:男

年齢:5歳6ヶ月 状態:健康


体力: 2

筋力: 2

耐久: 2

速度: 2

器用: 9(7+2)

精神:11(10+1)

知力:10(10+2)

魔力:10(7+3)


スキル:土魔術LV3・毒耐性LV4・ハムハムLV7・雑食LV1

加護:精霊の祝福2・公星の信頼

契約:魂の使い魔契約

使い魔:公星

********************************



最初の失敗に学んで魔力の上限を見極め、範囲を決めてから発動しているので前のように倒れることはなくなったが、体がふらふらするときはある。

土魔術が3に上がっているが良く違いが分からない。魔力の消費効率が良くなったのかと思ったが、そんな感じはしないし細かい制御が出来るようになったのかとも思ったが証明できるほどの違いが出来ていない。


スキル使用は禁止されているが、調べることは禁止されていないと言う屁理屈的な言い訳で俺は土魔術のスキルを他の先生たちに聞いて調べている。

どうやら土系のスキルは数ある魔術関連のスキルの中でも攻撃には余り向かないスキルらしい。

例えば穴掘りの他に土を固め形を作ったり、ちょっとした段差をつけたりすることが出来、レベルが上がれば抽出なんてことも出来るらしい。

もちろん攻撃方法もあるがそれはもっとレベルが上がった後で、基本的な使い方はあくまでも戦闘の補助や物作り・職人系のスキルのようだ。


魔法関連のスキルは結構分類が複雑らしく、魔術と魔法は明確な差がある。

魔術と付くのはあくまでも初心者的な魔法らしく水魔術なら飲み水を出せたり、当たるとちょっと痛い水鉄砲などが撃てる程度、風魔術なら公星のエアライズのように余り移動は出来ないが体を浮かせたり、体がちょっとふらつく突風を吹かせる程度のようだ。

そして魔法とは魔術のスキルレベルが上がると発現するスキルらしく、俺が想像していたような魔法がつかえるらしい。

出来ることを増やしたいなら、スキルレベルを上げないとどうしようもないと言うことか…



「しかし分かりづらいなぁ…」


ステータスなのに画面にHPやMPといったことが表示されていない事に気がついたのは、祝福を受けてから2週間程後のことである。


「HPとMPが出ないって事は自分の感覚で見極めろか………前途多難だ」



昼食を食べた後、俺はルピシーたちと院の裏にある森の川で川遊びをしている。

穏やかな流れの川なので、余程のことが無い限り流されたりもしないが引率の先生は付いてきている。


「皆、はしゃぎ過ぎないように。水は私たちに豊かさをもたらしてくれる反面、災害などの危険も起こりえる油断できないものですよ」


俺たちにアルゲア語文字を教えてくれたイケメン先生ことピエトロ先生が爽やかに釣り糸をたらしながら言う。


「先生、ここでは何が釣れるんですか?」

「そうですね、今の時期でしたら瓜魚うりうおですかね」

瓜魚うりうおですか?」

「ええ。瓜の様な匂いがする川魚です、塩焼きにして食べたらおいしいですよ」


ああ、鮎みたいなものかと思い、親父のことを思い出した。

俺の親父は農家の親父だ。忙しい中暇が出来ると俺たち兄弟を連れて良く川釣りに連れて行ってくれた。

そんな親父に仕込まれて釣り針の仕掛けなどをある程度できるようになった俺は、先生に質問する。


「先生、釣り餌は何ですか?」

「ああ、これですよ」


と見せてくれたのは、ミミズのようなワームや小さい虫だった。


「わざわざ取りに行ったんですか、面倒くさくない?」

「いえいえ。畑仕事をしたり、石をめくればたくさんいますからそんなに手間ではないですよ。」

「この針少し貸してください。ちょっと待ってて」

そういい残し俺は卵や肉用に飼育されている鳥が集まる場所で羽を拝借し、裁縫で使う糸で毛鉤を作ることにした。


「久しぶりに作ったけど、何とかなるものだな。重さもこのくらいで良いだろ」


そして急いで川に戻り、先生に出来た毛鉤を差し出す。


「先生。これで釣ってみてください」

「なんですかこれは?」

「鳥の羽と糸で作った疑似餌です」

「ああ、ルアーのようなものですか」

「はい、そうです。ん?ルアーってあるんですか?」

「ありますよ。海釣りでは良く使いますね。材料は主に浮かないように細工した木や、軽い石です。まぁ、どちらにしても趣味の道具ですが」

「趣味の道具ですか?」

「ええ、魔法が掛かっていないものは完全に趣味の道具です」

「魔法が掛かっているものがあるんですね」


「ありますよ。商業用にはそれを使います。ちまちま取っていたら需要に追いつきませんからね。いわゆる魔道具マジックアイテムです。まぁ、魔法が使える人は魔道具マジックアイテム無しでも魚を簡単に取る術がありますけどね。何回か見た事がありますが入れ食い状態です」


マジか。まぁ、流石に商業用で太公望でした、なんて言ったら商売にもならないからな。


「魔法で魚を取る術なんてあるんですか。じゃあ先生は趣味で魚釣りをしているんですね」

「そうですよ。それに私は魔力が無いので魔法が使えませんのでね」

「そうなんですか?知りませんでした。それじゃあ、先生は学園では普科か聖科だったんですか?」

「いえ、武科ですよ」

「え?武科ですか?」

「ええ、武科です。」

「イメージがわかないんですが、芸科か聖科と思ったんですが」

「ははは、これでも第三騎士の称号を持っているんですけどね」

「へ?」

「っあ、食いつきましたよ」


そうして25センチほどの鮎に似た魚が釣り上がり、先生は他の兄弟も呼び寄せ俺たちに瓜魚の姿を見せる。


「これがえらです。これが人間でいう肺の役割をします」

「すげー」

「テカテカしてるな」

「なんかこわいよ」

「先生は友釣りはしないんですか?」

「友釣りですか?」

「なにそれ?」

「他の魚が自分の縄張りに来ると攻撃する習性を生かした釣り方です」

「また出た!セボリーの謎知識!」

「面白そうですね。どうやってやるんですか?」

「釣竿を貸してください。あと余っている糸と針」


こうして友釣りができるように改良した釣竿を作り、先ほど釣れた瓜魚を付けて川に垂らした。


「お!来たぁ!!『フィーーーーーーッシュ』」

「おおー!すげーよセボリー本当に釣れた」

「2匹ついてるから気分的にお得だな」

「それはちょっと違うと思うが…」

「最後何を言っているのかわかりませんでしたが、こんな釣り方初めて見ました。興味深いです」


最終的に10匹以上も釣り上げ、先生が「本当はいけませんが、内緒ですよ」と言いつつも塩焼きを人数分作ってくれ、皆で食べた。

頬張ると前世の鮎よりも甘みがありおいしく感じる。


「うまい!!」

「おいしいね!」

「これだったら俺30匹は食えるぞ」

「さすがにそんなん食べると腹壊すぞ」

「モキュー♪」

「お前はなんでさりげなく食ってるんだよ!!」


気が付けば公星が塩焼きを齧っていた。


「お前の体のどこにそんな量がはいるの!?」

「モキュッ」


体を大きく伸ばしながら腹を叩く姿が可愛いと思ってしまった俺は重症かもしれない。

公星を突っ込みつつ塩焼きを食べながら(やっぱり前世より水が綺麗だから魚もうまいのか、そういえばいつもの食事の野菜や魚もうまかったな)と思い久しぶりに穏やかな日常を過ごす。


「あと数か月、学園に入学するまでやることも多いが、院内で過ごす時間は限られているならもう少しゆっくりと日常を楽しむのもいいのかもな……」


兄弟たちの賑やかな声と自然の音に耳を澄ませ、森にいる鳥の声を聴きながらささやかな日常は過ぎて行った。

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