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幕間 ヴァンサンス

僕の名前はヴァンサンス・ハーン・カザフベク・メノンシンハ・マハルトラジャと言います。

学園のしきたりに従うのならヴァンサンス・ハーンですね。

チャンドランディア藩王国連邦の中にあるマハルトラジャ藩王国の第4王子で、王位継承権は正室腹なので第2位となります。

そんな僕は今、フェスモデウス聖帝国の中にある学園都市サンク・ティオン・アゼルスに留学しているんです。

いくら王子とはいえ聖帝国から遠く離れた国の王族がこの学園に留学なんて、なかなか出来ることではないんですよ。

でも僕が今ここにいるのは父上、そして僕の長兄ことヤンソンス兄上のおかげなんです。

ヤンソンス兄上は僕が2歳、兄上が6歳の時にフェスモデウス聖帝国へ留学しに行ったんです。

兄上が母国を出て留学した時、僕はまだ物心が付く前だったので兄上の事を殆ど覚えていなかったのですがね。

なので父上や母上達、使用人達からヤンソンス王子は聖帝国へ留学していると聞かされても、僕の中の兄上のイメージは周りから聞いていた、年齢の割に理知的で穏やかな兄上としか感じることが出来なかったんですよ。

そんな中僕も6歳に近づき、学校へ通わなくてはならない年齢になった時のことです。

僕はチャンドランディア藩王国連邦の学校か周辺国の学校へ留学するために準備を進めていると、突然父上からのお呼び出しがあり父上の部屋へと向かいました。

何の話だろうと思いながら父上にお会いすると、こう切り出されたんです。


「ヴァンサンス、お前は聖帝国へ留学する気はないか?実はな、ヤンソンスが仲間と自分の力で金を稼いでいるらしいのだ。その証拠にヤンソンスは自分が稼いだ金で2年次から自分で生活費や学費を出している。ヤンソンスの手紙で自分に使う筈だった金をお前に使って欲しいと認めてあったのだ。お前はどうしたい?」


正直驚きました。

2年次と言うとヤンソンス兄上が7~8歳のときでしょ?

それなのにもう自分の力でお金を稼いで生活しているんですから。

それに兄上が自分に使う筈だった金を僕に使って欲しいといってきた事にもです。

さっきも言いましたが、僕は兄上の事をあまり覚えていなかったんです。

それなのに兄上にそんな事を言って貰ったのですから本当に驚きました。

使用人からは兄上は僕の事をとても可愛がってくれていたと聞いたことがありましたが、まさかそこまで考えてくれているとは思いもよらず衝撃といっても良いでしょう。

疑問が頭に次々と湧いてきましたが、次の瞬間僕は自然と思いが口から出てしまったんです。


「行きます!行かせて下さい!」


フェスモデウス聖帝国と言えば世界の覇者国、畏怖と恐怖と羨望の国です。

聖帝国の国土の大きさは、チャンドランディア藩王国連邦の国土と比べるまでも無く巨大で、その国力と技術力や文化は手を届かそうと思えないほどに逸脱している。

そんな国に留学できるなんて、なんて幸運な事なんだろう。

父上と兄上に感謝しかありませんでした。


聖帝国に付くまでは本当に長い道のりでした。

兄上が長期休暇の時にも帰ってこなかった事にいつも疑問に思っていましたが、片道でもこんな時間が掛かるのですから納得です。

それに聖帝国に入国する時の審査も厳しくて驚きましたよ。

入ってから文化や国力の違い、町並みの素晴らしさや民の清潔さにも驚きましたね。

馬車から見ている景色や人の流れだけでも全く飽きませんでしたから。

でも入国してからも長かった…

国土が大きいと聞いていましたが、まさか学園都市に付くまでもこんな時間が掛かるとはね。


学園都市についてからまず真っ先にしたことが、兄上にお礼と挨拶をしに行った事です。

学園都市の人口はすさまじくて、見つけることが出来るか不安だったんですが、兄上は有名人のようで直ぐに見つけることが出来ました。

兄上を見てはじめて思ったことは、「かっこいい」でしたね。

自信に満ち溢れていて余裕がある雰囲気が見ていて分りましたよ。

僕が話しかけてきた時も気さくに返してくれて頭をなでて頂きましたしね。


学園に入学してからは色んな人と知り合いになることが出来ました。

ジョエルやノエルとも友達になれましたし、毎日がとても輝いて見えます!

兄上のご友人達が面白い人ばかりで驚きましたけど…

ジョエルとノエルの兄上のシエルさんは見るからに育ちが良いと分る人で、出自を聞いた時には恐れ慄きましたけどとても優しい人です。

周りの空気を読むことに長けていて、ジョエルとノエルの事を除いても良く僕の事も気にかけて下さっていて、とても感謝しています。


フェディさんも一見取っ付き難そうな方ですけど普通に良い人です。

僕が訓練で怪我をした時には良い薬を下さったり、栄養剤を調合してくださったりとお世話になってます。

でもただひとつだけですけど言いたい事があります。

薬をいただけるのは嬉しいのですが「これルピシーで動物実験したから大丈夫だと思うよ?普通の人間が付けたらどうなるか分らないけどね?うん」と言って薬を渡すのは止めて頂きたい。


ゴンドリアさんは最初はなんて綺麗な女性なんだろう思いましたけど、男性だと聞かされて愕然としましたね。

多分あの時の衝撃は今まで生きてきた中でもトップクラスに入る衝撃でした。

でもゴンドリアさんは僕の制服や普段着の面倒を見てくださったりと、とても助かっています。

兄上もそうだったらしいのですが、僕達は基本的に使用人に用意させた服をを着ていたのでかなり自分達の服に関しては無頓着なところがあるようなんです。

ですのでゴンドリアさんのアドバイスを聞いておけばそれなりの格好が保てるので、とても感謝です。

自分の趣味を理解してくれる素敵な女性に巡り合いたいと言っていましたが、早くそんな人と巡り合えれば良いと思います。


ユーリさんも最初は驚きましたね。

あんなでかい体で短いスカートを履いていたものですから、初対面の時は引いてしまいました。

でも、話して見るととても優しくて素敵な女性(?)でしたよ。

芸術性に溢れていて、あの人が描いた動物の絵なんて全て動き出しそうなんです。

何枚か絵を貰いましたけど凄い迫力です。

きっと将来は名のある芸術家として活躍するんじゃないのかな。


ルピシーさんもちょっと変わっていますが、快活明朗で楽しい人ですよね。

僕がジョエルと訓練をしていると笑いながら入ってきて訓練の手伝いをしてくださいますし。

訓練が終わった後は良くご飯を奢ってくれるんです。

聖帝国の料理はとても美味しいんですけど、ルピシーさんが連れて行ってくれるお店はその中でも美味しいんですよ。


セボリーさんは………あの人は良く分りませんね。

あ、凄く良い人なのは分るんですよ。

それに頭の回転が早くて面白い人なんですが、言動が読めないんです。

僕の事も可愛がってくれているのは確かなんですが、いつも良く分らない事を言ってくるんです。

兄上達が言うには「セボリーだし」とか「それがセボリーがセボリーたる所以だ」とか「セボリーだから仕方ない」と言っているんですが、いまいち僕には分りかねます。

使い魔のコーセーも普通のピケットではありえないですしね。

あれも皆が「セボリーのせい」と言ってますけど本当なんでしょうか?

でも兄上はセボリーさんにとても感謝しているんです。

兄上が魔法が使えることを気付かせてくれたのはセボリーさんらしいんです。

それにお金を稼ぐ切っ掛けをくれたのもセボリーさんなんですって。

あ!僕も勿論と感謝してますよ。

だって僕にも魔法の素質があるって気付かせてくれたのがセボリーさんなんですから。


僕が入学して1ヶ月程経った時、ジョエルとノエルと一緒に兄上達に会いに行ったんですよ。

その時にセボリーさんが兄上やシエルさんとなにやら相談をしているかと思うと、僕に水魔術の才能があると教えてくれたんです。

最初は何で分るんだろうと思って不思議でしたけど、試しに言われたとおりの魔法構築式と言うも物を覚えさせられて、呪文詠唱をすると水が手から噴出してきたんです。

あれは嬉しかったな。

それに今僕がこうしてお小遣いの範疇を越える程の金額を稼げているのも、セボリーさんが兄上にカリーのお店を開いたらどうだと提案してくださったからなんです。

あの人が考えることは突拍子も無いですけど、必ず良い方向に行くのが凄いですね。

あれもきっと才能なんでしょう。

ほら、凡人には天才の考えてることは分らないって言うじゃないですか。

きっとセボリーさんは天才なんですよ。


あれ?でも兄上のご友人って皆天才のような気がするな…ああ、そうか。分りました。

セボリーさんは天才的な変人だったんですね。やっと納得いきました。


この聖帝国の学園都市に来て、毎日が楽しいです。

父上と兄上、僕を見守ってくださっている人達には本当に感謝の言葉しか出ませんよ。

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