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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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第六十九話 丘の上にて三

「なんでお前がこれ使えるの?」

「モキュ?」

「お前自身でもわからんのかい!!」


抱き上げ問いかけると、公星は首をかしげた。


何故だ。試した人数も少ないが俺以外で誰も発動できる奴なんていなかったのに…

もしかしたら俺と魂の契約で繋がっているから公星にも使えるのか?

でもあれだ。このクリエイトアクアの魔導陣を作ってから、何回か公星はこの紙の上で寝入っていた。

ってことは発動条件は一定期間触り続けることか?

いや、違うだろうな。もしそうだとしても何で今まで使わなかったんだ?

こいつの性格から考えて新しく覚えた魔法は絶対に直ぐに試しているはずだ。

それとも紙を食べたからか?

魔導陣が描かれている紙を食べる事によって習得したと言うほうがまだ現実味がある…


「悩んでるんだったら試せよ。そのためにこの何も無い丘に来たんじゃないのか?」

「それもそうですね」

「流石はウィルさん!」

「止せやい!そんなに褒めるなよ」

「中身は残念だけど頭の出来が違いますね!」

「お前絶対馬鹿にしてるだろ!!」

「すんません、ちょっと悔しかっただけです。イケメンは爆発しろ」

「イケメンって意味はわからないが最後の言葉は明らかに駄目だろ!!反省の色が見えねーぞ!!」


俺は前に試しの迷宮で使ったアースニードルの魔導陣を作成する。

何個か試してみてピンと来るものを選ぼうかね。

横でウィルさんがガン見してたけど気にしない気にしない。


「それってやっぱり文字なのか?記号のようにも見えるが……書き方見てるとちゃんと法則もあるみたいだな。しかもスラスラと書き進めてるからそれも夢で見たのか?」

「…ええ、まぁ」


すんません。そんな疑い深い顔で見ないでください。

さっき俺が言った魔導陣の出来た経緯をすっ飛ばすようなスピードで陣を書いてる俺が悪いけど、それでもそれをスルーするくらいのスキルを身に付けてくれませんかね?


「でもこんな感じの文字どっかで見たことあるんだよな~……どこでだったか…」


多分見たことあるのはあの方からの手紙に書いてあった日本語だろう。

それしか考えられないし…


「よ~し、出来た。じゃー早速食え」

「モキュー…」


魔導陣が描かれた紙を差し出すが公星は首を振って食べる事を拒否した。


「な、なんだと!?こいつが食べる事を拒否するとは……さっきは食ってたじゃん…」

「食っては見たが不味かったんじゃないか?」

「こいつ基本的に何でも食いますから味は関係ないと思いますよ」

「まるでゴミ処理機だな……グハァ!!」


ウィルさんが公星のことをゴミ処理機と言った瞬間、公星はウィルさんの腹にジャンピング頭突きを食らわせた。


「いてぇ……こいつの跳躍力と頭の硬さどうなってんだ…」

「ふっ……これが謎の生物たる所以ですよ…グハァ!!」

「モッキュー!!」

「イテーし!!そんな腹を強く押されたら朝食リバースするだろうが!」

「モッキュっキューモキュー!!」

「はいはい。お前は素敵な使い魔ですよ!これでいいだろ!!」


抗議する公星に適当に褒め言葉を口にする。

こいつは嘘でも褒められると機嫌がよくなるんだよな。

良いのかそれでと思うが、こんな所もまた可愛いんだよ。


「もしかしてこの魔導陣自体に欠陥があるのか?だから食わないのか?」


ゴゴゴゴゴゴオ!!!


紙に魔力を注ぐと紙にかかれた魔導陣が光だし術が発動した。


「なんだ、ちゃんと発動するじゃん」

「………おい。周辺の丘が切り立った山みたいになったぞ、完全なる地形破壊だな」

「気にしたら負けですよ。ここは気楽に考えなきゃ」

「出来るか!!」

「もー、三十路にもなって達観出来ないなんて駄目ですねぇ。人生諦めが大事ですよ、諦めが」

「諦めきれないほどの事件を発生させてるのはお前だろうが!!諸悪の根源がさらっと言うな!!!」


ウィルさんと漫才のような事をしていると、公星が俺の手にあった紙食べ始めた。


「結局食うのかよ!」

「モキュ!」


ゴゴゴゴゴゴゴォ!!!


「「………………」」


やっぱり食ったら使えるようになるらしい。

でも何でさっきは食わなかったんだよ!!!


「これは仮定なんだが…この魔法構築式の紙だけだと発動しないんじゃないか?」

「へ?………どう言うことですか?」

「つまりお前が使ったこの魔法構築式が描かれている紙、正確に言うのならお前の魔力が染み込んだ魔法構築式の紙を食えばコーセーがこの式の術を使えるようになるんじゃないか?」

「モッキュー!!!」

「どうやら正解らしいな」

「……ウィルさん原理を説明してください」

「俺に分かるはずないだろうが」

「そうですね。もういいや、公星だから仕方ないって感じです」

「諦めるの早いな」

「公星の事で一々驚いていたらきりがないですから」

「そうか。ところでこの地形は戻せるのか?」

「分かりません。試す気もございません」

「いや、試せよ!」

「人生諦めが大切ですよね~」

「その歳で達観するんじゃねー!!!」


色々達観しないと許容できない事が多すぎるんですよ…

俺だってもっと甘酸っぱい子供時代を過ごしたいわ!!


それからウィルさんと魔導陣について話し合った。

やっぱり発表しなくて正解らしい。

魔法に携わる人なら誰だってより効率が良くてより簡単な魔法構築式を求める。

もしそれが自分が見つけたものでは無いにしろ、使ってみたいと思うのが人の性だ。

使ってみたい、開発した人を知りたい、もっと発展させたい。そんな思いはいつしか妬み嫉み僻みになり、いつか開発者に降りかかってくる。そうなれば平穏な日常など送る事は出来ない。

それはお前の望む事じゃないだろうとウィルさんはそう言って俺の頭を撫でてくれた。


確かにそうだよな。俺も前世の中学時代、簡単にインターネットのピンクサイトが見れると知って利用していたが、いつの間にか理想は高くなりモザイクの先を求めるようになってしまった。

友達がすごいサイトを見つけて自慢しに来たが、行き方や利用方法を教えてくれず恨んだものだよ。

俺の先輩の世代だとビデオテープのモザイクを消すビデオデッキがあると聞いて探し回ったと言っていたしな………え?話が違うって?すんまそん。


「子供は子供らしく無邪気に生活してろ」

「十分好き勝手やってる自覚はありますけどね」

「確かにそうだな。まぁ、話は戻るが他の奴が使えないのは多分願望的想像力の差だと思う」

「願望的想像力の差…ですか?」

「ああ。本来装飾文字カリグラフィーとは導火線の役目の他にこういう風に術を発動させたいって言う願望を形にするための想像を補助する役目もあるんだよ。同じ呪文で同じ魔法構築式でも使う奴によって若干術の形が変わってくるのは知っているか?」

「はい、確かに同じ魔法を使っても色や形、発動のタイミングは皆違いますね。想像力の問題だったんですね」

「そうだ。逆に言うとその願望的想像力が無ければ威力も出ないし発動もしないことだってある。初心者が簡単な術を発動できるのは魔力でのごり押しか、教えた奴がちゃんとお手本を見せたかどうかだ。魔法とは魔力も大切だがもっとも大事なのは想像力なんだ。それがさっき言った願望的想像力ってやつ。まぁ、他も色々あるけどな。例えば数学が得意な奴は魔力の温存が得意だし、絵が得意な奴は術のアレンジが得意とかな」

「成る程。つまり色々な術を弄くる事ができるウィルさんは妄想力が高いんですね」

「想像力だ!」

「ぶっちゃけどちらも変わらないでしょ」

「かなり変わるわ!!」


俺達は丘のことは放置してその場を離れた。

もしあの丘を管理している人がいたらごめんなさい。

これは全て公星がやりました。でも強制されたんです。

責めるのなら試せと言ったアライアス公爵家次男のウィルブラインさんにどうぞ。


「そういえば知り合いに会いに来たって言ってましたけど、しかも元教師の人に」

「俺が初等部の時の先生だよ」

「ああ……苦労が目に見えて同情しか湧かないわぁ」

「最初から俺が問題起こしたって仮定するなよ!」

「でも起こしたんでしょ?」

「……………………」

「きっと心労で……惜しい人を亡くした」

「勝手に殺すんじゃねーよ!まだピンピンしてるわい!!昔から相談に乗ってくれた人なんだよ。これでも24家の出身だから悩む事もたくさんあったんだ」

「そしてこんな大人になりました」

「……お前いい加減にしないと良い店に連れて行かねーぞ」

「ナマ言ってすんませんでしたぁぁぁあーーーー!!!」

「手の平返すの早いわ!!」


だって、だって!俺のようなお年頃な男の子はプライドよりもピンクを取るぞ!!

それがO・TO・KOと言うものだろうが!!

とおちゃらけた話はひとまずやめて……と。


「推測するに代替わりの事について相談しに行ったんだと思いますけど、さっきも言ったように最終的に決めるのは聖下ですからね。当事者達に拒否権は無いんですから悩んでいたって始まりませんよ。ここはドーーンと構えてたらどうですか?ぶっちゃけ悩んでも同じなんですから。ウィルさんも言ってたじゃないですか、今のアライアス公爵も若いときは酷かったって。そんな酷いアライアス公爵が今では立派に任を果たしているんですから、もし選ばれてもウィルさんなら出来るでしょ?」

「お前俺が次代の公爵になる事を前提に言ってないか?」

「言ってますね。だって今まで聞いてきた中で24家の当主に選ばれる人って皆変人ですもん」

「………おい。その話の流れなら、もしお前が24家の出だったら完璧に当主になってるぞ」

「そ、そんな…平凡な僕にはそんな大役、つ、つ、務まりません!」

「イラっとするな」

「俺も自分でやっておいてなんですけどイラっとしました」


その後、ウィルさんに良いお店とやらに連れて行ってもらったが入店拒否されました。

申し訳なさそうに店に入るウィルさん。

そして何故か俺は入れなかったのに、公星はウィルさんと一緒に店の中へ消えていきましたとさ。おのれ公星…裏切ったな!!

後に聞いたが公星はお店のお姉さん達にすっごく可愛がられたらしい。

もうウィルさんなんて信じない!早くアライアス当主になっちまえ!!!

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