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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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外話 マルコとドリエッタ3

それからのジジの行動は早かった。

マルコとドリエッタをロープで縛り、必要最低限のことを聞いてから2人を江戸時代の岡っ引きと罪人宜しく、彼等を曳きたて2人の家へと向かっていった。

2人の口には猿轡が嵌められており、その光景は異様といっても過言ではない。

その光景を見ていたジジのルームメイトは後にこう語った。


『あの時のジジは何かに取り憑かれた様だった。目の焦点があってなかったし』

『とにかく顔が無表情すぎて凄く怖かった。一心不乱に縛ってたかと思ったら突然小さく笑い出すんだ』

『凄く…素敵でした。特にあの縛り方…亀の甲羅みたいなのが…』


その後、正気に戻りその話を聞いたジジは3日ほど寝込む事になる。


「……家は何処だ」

「ン~ンン~~ン~!!」

「ン~ン、ンーン!!」

「…あ?ふざけてるのか?ちゃんと喋れ」

「「ンンンーー!!!」」

「…なんだそれは?キリキリ話せ」

「「ンーーー!!!」」

「あ?何を言っているのか分からんぞぉ」


2人には猿轡がされているので喋る事が出来ず、猿轡を外そうとしても縛られているので全く手の自由が利かない。

さらにロープを引っ張られるたびに体にロープが食い込む無限地獄状態に陥る2人は必死に懇願するが、そんな事は気が付きませんとばかりにジジは歩き続けた。

そしてジジは待ち行く人の視線もこの時は気にしていなかった。


「…早く歩け。ハハハハハハハハハハハハハァー!!!」

「「ンンンンーーーーー!!!」」


少し正気に戻ったのか、ジジはマルコの猿轡を外してやりマルコの家へと案内させる。

案内させた家は、学園都市の中でも裕福な者が住んでいると言われている北地区にこじんまりだが華美に建っていた。


「…ここか。随分と立派な所に住んでるじゃないか。俺が見たところ1ヶ月の家賃だけでトリノ王国の貴族が3年以上何苦労無く暮らせるだろうな」

「あ、あの…大公公子?俺様の家に何か用事があるのでしょうか?」

「…ああ、あるな。だがまず聞いておこう。この家には今お前が着ているような素敵な服がたくさんあるのか?」

「はい!!それは勿論でございます!なんといっても貴族はまず見た目からです!実はこの衣装よりももっと豪華のものもあるんですよ!!!」

「………ほぉ。それは楽しみだな…」

「はい!ご覧になりますか!?ご案内しますので楽しみにしていてください!!!」

「ッ!ンンン~~~!!!」


縛られながら意気揚々と案内しようとするマルコに、何か気付いたのかドリエッタは必死で何かを訴えようとするが、まだドリエッタの口には猿轡が嵌められており理解されることはなかった。


「さあ!!どうです!!?ここが俺様の家ですよ!!」

「……そうか、では早速…」

「へ?え!?うごムグ!?ンンンンー!!?」

「ンンーー!!?」


マルコは再び猿轡を嵌められ、ドリエッタと一緒に動き回らないように部屋にあったベルトで足を固定され一緒に床に転がされた。

家の中には服や宝飾品、また値の張る家具が置かれており、ジジはゆっくりと歩みながら値踏みをする。


「「ンンーーー!!!」」

「おー。良かったなぁ、これなんか高く売れるぞぉ。おお!こっちには家紋の付いた短剣があるな。良し、これも売り払おう」

「ンンーーー!!!」


1時間後、粗方差し押さえの状態で貴金属や宝飾品をジジは無限収納鞄マジックポーチの中に入れていく。

これはジジの父親がジジの中等部入学祝に送ってくれた物であり、機能はセボリー達が持っている複製品レプリカよりも劣るが、それでもジジは大切に使っていた。


「…良し、次だな」


この家はもう興味がなくなったとジジは次のターゲットへと視線を向ける。


「ンンンーーー!!!プハッ!!ハァハァ!いくらパラディゾ様でもこの仕打ちはありえませ…」

「家は何処だ」

「し、知りませんわ!」

「おい、ポルコだったか?こいつの家はどこだ?教えたのならお前の服飾品を売却するのをやめるのも吝かではないぞ」

「フゴ!そ!それは本当ですか!!?それとマルコです!!ポルコは古代トリノ語で豚と言う意味です!!」

「そうか、どちらでも変わらんな。だが今の話、トリノ王国貴族に二言はない」

「ドリエッタの家はこっちです!!」

「ちょ!ちょっとマルコ!あなたあたくしを売るおつもり!?男らしくなくてよ!!」

「うるさい!ここは聖帝国だ!男女平等なんだぞ!!俺は助かりたい!だからお前が犠牲となれ!!」

「冗談じゃありませんわ!!!」

「………どうでも良いから早く案内しろ」

「ハイ!!!」

「そんnムググ!!?ンンン~~~~!!!」


自分が助かるために必死で道案内をするポルコことマルコにドリエッタは怒鳴ろうするが、ジジが再び猿轡を嵌めたのでそれは叶わなかった。


「……これはこれは、またまた立派な家だな。おい豚、ここであっているのか?」

「だからマルコです!!あ、はい。左様でございます」

「ンンンーーー!!!」


マルコの家から5分程歩くとドリエッタの家へと辿り着き、マルコに命じてドリエッタから家の鍵を奪い取り家の中へ入っていく。

中に入ると先ほどのマルコの家よりもド派手な衣装や宝飾品、または家具が所狭しと置かれていた。


「ハハハ!詰め込み放題だぁ。幾らになるかなぁ、楽しみだ」

「ンンーー!!」

「そうですね、きっと良い値段で買い取ってくれるはずでございます。その分け前は俺様にはあるのでしょうか?」

「ンンン!!?ンンーーー!!!」

「お前は何も心配することはない」

「ハハァッ!このマルコ!パラディゾ大公公子に一生ついて行きます!!」

「ンンーーーー!!!」


すっきりとした部屋に別れを告げ、ジジは2人を連れて質屋街へと向かっていく。

マルコも軽い足取りで歩いているが、まだドリエッタと一緒に縛られたままである。


「いらっしゃいませ。ご用件は何でございましょうか?」

「ンーー!!」


質屋へ入るとあくどい顔の老人が揉み手をしながら出てきた。

ジジの後ろで縛られながら何かを叫ぶ2人を見ても普通の対応を取るあたり、慣れているのか良い性格をしているか食わせ物といった感じだ。


「ここの場所に来たのだからやることは限られてくるだろう、売るかか買うかだ。主人、今から質草を出すので鑑定してくれ。足元を見たら学園に報告が行くと思えよ」

「ンンンーーーー!!」

「そうでございましたな。はい、大丈夫ですよ。うちは学園都市公認の店でございますからね。ほら、あそこにちゃんと公認証明書が飾ってありますよ」

「そうか、それは重畳。では任せよう」


学園都市認定店とは一種の免状や登録証明証であり、会社や商会を興す時に必ず申請しなければならない物で、普通に商売をしている店なら当たり前に置いてあるものである。

勿論セボリー達のパブリックスター商会も当然のようにコレを持っており、エントランスに飾っていたりする。

つまりコレがない店とは闇商売をやっているヤバイ店くらいのものであった。


「では早速」

「高く買い取ってくれよ!ドリエッタ良かったな!!」

「ンンーーーーーーー!!!」

「ああ、そうだ。主人、ちょっと待ってくれ。よっこらしょっと」

「ンンーーー!!?」

「えっと、あのぉ…大公公子?なんで俺様もまた縛られているのでしょうか?」


鑑定が始まる前にジジは再び2人の足を動けないように縛り付けた。


「ちょっとした準備だ。ああ、それと豚はこれを売ることを了承するな?」

「はい!もちろんでございます!!あとマルコです!」

「おい、ドリル。お前もするな」

「ンンーーー!!!」

「主人。俺には了承に聞こえるが、貴殿にはどうだ?」

「はい、わたしめもそう聞こえます」

「そうだよな。豚はどうだ?」

「はい!俺様もです!!!」

「ンンンーーーーーーー!!!」

「そうか。本人の了承も聞けた。豚、ここにお前の名前を書き込め、そうすればお前は解放される」

「はい!喜んで!!」


マルコに数枚の書類を見せて署名させた後、ジジはドリエッタの元へ歩き耳元で小さくこう呟く。


「おい、ドリル。お前は助かりたいか?豚に復讐したくはないか?もししたいのならここに名前を書き込め。俺があいつを解放する振りをしてお前を解放してやる。か弱い女性を優先的に助けるのが紳士の務めだからな」

「ンンン…」


ドリエッタは目に涙を浮かべジジを見て頷き、手を自由にさせてもらい数枚の書類に署名をする。

そしてドリエッタはジジに尊敬のまなざしを浮かべながらまたジジに縛られた。


「良し。本人達の了承も貰ったことだし、では…………始めるか」

「はいどうぞ」


ジジは無限収納鞄マジックポーチから2人の服と宝飾品や家具を取り出し、質屋の親爺に見せていく。

途中で使いの小僧に先ほど署名させた書類の数枚と手紙をある人に届けてくれと頼み、ジジはまた査定の作業へと戻った。


「この宝石はあまり質がよろしくないですな。傷もあるし濁りが強い」

「この服の生地も母国では上等品だが、聖帝国ではパッとしないな」

「聖帝国の技術は世界一ですからな。お客様達の国と比べるのは失礼かもしれませんが天と地の差がございます。これも査定評価に入れさせていただきますよ」

「ああ、当然だろうな」

「お客様は話が分かる方でありがたいですな。いくらがこちらが正当な評価をつけようともイチャモンをつけてくる輩が多いんですよ」

「価値を知らない奴らが多いのだろう」

「お客様とは良い商売ができそうですな」

「しかし悪趣味なものばかりだな。売っている俺が言うのもなんだが、これは果たして他の客に売れるのか?」

「ご安心を。悪趣味なモノはある程度手直しいたしますので。この悪趣味な服も宝石を取って個別に売り払いますし、布は解いて糸として売れます」

「なるほどな」


質屋の親爺が鑑定を終えると、そろばんのようなものを出してきてジジに提示してきた。


「査定結果はこうなりました。如何でしょうか?」


ジジはそれを見て頷く。


「それで結構だ。正当な評価、感謝する」

「ありがとうございます。もしまた何か入用がございましたら是非とも当店をご利用ください。色をお付けいたします」

「ああ、その時は頼む」

「ンンン!?」

「大公公子!!これはいったいどういうことですか!!?話がちグムンンンン!!?」


2人の財産の査定を終え、金を受け取るとジジは再び猿轡を嵌めてマルコの家へ向かっていく。

マルコの家の前に近づくと、とある人物が立っており、ジジは軽く手を振り先程とは全く違う顔で微笑んだ。


「お~い!待たせて悪かったね」

「あ、いたいたぁ。ジジに頼まれたことやって来たよぉ」

「ありがとね~ロベルト」


そこに立っていたのはロベルトであった。

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