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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第一章 別れと出会いの章
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第六話 スキル

「『元農家の息子を舐めるな。こんな畑の苗植えなど俺様の敵ではないわ!!』」


俺は今、慣れた手つきでオイルシードとトマトのような野菜メルメ、枝豆のような豆マル豆の苗を植えている。


実家が農家だったから、実家を出て大学に入るまで毎日のように手伝わされていた経験がこんな所で生きてこようとは…

え?農作業用の車とかがあっただろうって?それはあった。あるにはあった。だがな、露地栽培でもほぼ植え付け前か収穫時にしか使わないし、野菜栽培用のビニールハウスの中に巨大な重機が入ると思うかヴォケェ。

しかも農機具はとても高価だ。そんな高価なもの何台も買えるわけないだろう。

日々の野菜の世話や手入れは人の手でやらないといけない。

しかも俺の実家は無農薬を売りにしていた農家だったので、草の生える速さや害虫なのど多さには良く家族で涙を流したものだ。何度夜遅くに隠れて農薬まこうかと思ったことか。


「『俺のゴールデンフィンガーがこれを植えろと言っている!!』うぉぉおおおおお!!!」

「先生、セボリーが変です」

「よくわからない言葉をしゃべってます」

「セボリーが変なのはいつものことですから放って置きなさい」

「「「はーい」」」


ひどい言われようである。だが俺は負けん!


何故今このような状況なのかと言うと……1時間前に遡る。


「契約で何か変わったことってあるのかな…試してみるか。精れ」

「あ!!いたーーー!!!」


ステータスの確認をしようとした時、兄弟の一人が俺を発見したらしく大声を出し俺に向かって指をさしていた。

こら、人に向かって指をさすんじゃありません!


「セボリー探したぜ、これから畑仕事だから早く行こう、皆待ってるぜ。」

「……もうそんな時間か。今行く」

「今日はオイルシードとかの種植えだってよ」

「オイルシードか、公星が食いまくってるからいっぱい作付けしないとな」

「そうだよ、コーセーが一匹で消費してるようなものだし」

「モッキューーーー!!!」


公星が抗議している。

さすがにこいつ一匹で消費しているわけではないが、明らかにお前が一番消費してますよね。ってかコイツの食欲どうなってんの?普通のピケットの子供ならオイルシード2つで満腹状態になるらしいが、コイツは毎日15個ほど食ってるんだが。


サンティアスでは基本的に“働かざるもの食うべからず”精神が普通だ。

教団が運営しているからと胡坐をかいてぬくぬく遊んでいるわけにはいかない。掃除や洗濯はやらされるし、農作業もする。作った野菜は院内で消費するか、余ったら売って院の維持費に回したりしている。

売る時は大口に一気に売るか、小口に小分けで売るかだ。

大口は学園や商人に院名義で納品されるが、小口は俺達が近隣の住民に売り捌くシステムだ。何気に近隣のおばちゃん達からは「偉いわね~」などと言われお菓子をくれるので子供達にとっては人気の仕事の一つである。

遊ぶ時間もあるが基本的には仕事を振り分けられる。

仕事は子供それぞれの資質個性によって振り分けられるのでそんなに苦にならないが、たまに苦手な仕事が回ってきたときの絶望感は言うまでもないだろう。


何故まだこんな幼い子供に大量の仕事が振り分けられるかと言うと、学園入学後に困らないようにだ。

学園に入れば食事の支度は心配要らないが、洗濯は自分でしなければならないし、寝起きする部屋も集団部屋だから掃除もルームメイトとやらなくてはならない。私物の管理も自分自身で無くしたら自分の責任となる。

さらにサンティアスの子供は生活に必要最低限の物は全て用意されるが、嗜好品はそうではない。

つまり欲しければ自分で稼げと言う形なのだ。もちろん学園でも学食で甘いものが無料で食えるらしいが毎日ではない。

今でも4日に一度のお菓子と、帝佐さんが月に一度持ってきてくれるお菓子以外砂糖系のお菓子は食べられない。

それ以外で食べられるのは、先程言った近隣の住民に野菜などを売りに行った時にご好意でもらえるお菓子くらいだ。果物はほぼ毎日出るがな。


「ふぅ。いい汗かいた」


俺は均等な間隔で植えられた苗を見ながら、満足げに笑顔を浮かべた。

やっぱりきちんと植えられた畑は見ていて気持ち良い。


「いつも思っていたけど、セボリーは仕事が速いですね。手先も器用ですし。今まで見てきた中でもトップクラスよ」


一緒に畑仕事をしていた女の先生が話しかけてきた。確か名前はプラタリーサ先生だったと思う。


「土いじりは得意なほうです。自然と触れ合える感じが癖になります」

「そうなの。だから精霊達もあなたの周りにたくさんいるのね」

「前も言われましたが、そんなにたくさんいますか?まだ精霊を見るのは集中しないと見れないんです」


昨日祝福を受け、公星と魂の使い魔契約をした後色々と試してみた。

やはり契約をしたことで精霊との繋がりが強くなったのか、集中すると精霊の姿が少しだけだが見れるようになっていた。


「昨日祝福を受けたばかりでしょ。すぐに見れるようになったら修行は必要ありませんよ」

「確かにそうですね」


プラタリーサ先生はアルゲア教の修道女で、赤毛で切れ長な瞳が特徴的な年齢不詳おとめである。

そんなプラタリーサ先生が唐突に俺達の将来の夢を聞いてくる。


「皆は将来何になりたいですか?」

「服屋さん!」

「肉屋だな、肉が食い放題だから!」

「お菓子屋さんも良いよね」

「お嫁さんになりたい!」

「俺は冒険者だ!」

「っ……」


皆に問いかけているが多分俺に向かっての質問だったのだろう、視線が俺のほうを向いている。

俺は一瞬言い淀んだ。


とりあえず金が欲しい。将来楽に暮らせるだけの金が。そのために早く迷宮に潜りたいが、それを言えば諌める言葉が飛んで来る事は分かっていた。

サンティアスの子供達は早く自立したがる子が多いらしい。先生達もその気持ちがわかるようだ。何故なら自分達自身この聖育院出身の先生が多いから。だがそれ故にたくさんの失敗例も見聞きしているし、自分達も体験済みと言う訳だ。なので諌める言葉を言うのだが、過去に自分達も諌められた記憶があり、尚且つ忠告を聞かなかった者が多いので言っても無駄だと言う事はわかっていた。だが、それでも言わなければならないのが大人の常だろう。


だから俺はどうせ何か言われるのだからと金を稼いだ後のプランを口にした。


「若隠居です」

「………確かにそれはなりたいものでしょうけど、ちょっと違うと思うわ」

「わかいんきょってなんのこと?」

「俗に言う金持ちだ!俺は金持ちになって楽して生きる!」

「良いな!俺も金持ちになりたい!!」

「わたしも若隠居になりたい」

「僕も!」


先生は苦笑しながら口を開く。


「お金持ちになるためには努力が必要ですよ。努力があってこその対価ですからね。汗水たらさないで稼いだお金はすぐにどこかへ消えてしまいます。」

「どこに消えるの?」

「きっとおなかの中だ!!金で肉買って食べるから!!」

「あたしならきっと生地や糸でお金がなくなるわ…」

「うふふ。皆、土でドロドロですね。そろそろ時間ですし、お風呂に入って汗や泥を落としてきなさい。体が汚いと心も綺麗とはいえないし、夕食もおいしくなくなるわよ」

「「「「はーーい」」」」


聞きたい事は聞けたのだろうか?

急に話を切り上げた先生と一緒に風呂場へと移動していく中、俺はプラタリーサ先生が「素質は十分あるから教団に入れた方がいいのかしら…」と小さく呟いたのを聞いてしまった。


そういえば自分で若隠居と言ったが、金が欲しい=楽して暮らしたい=若隠居だな。

よし決めた。俺の将来の夢は若隠居に決まりだ。


風呂に入り夕食を食べ終え休憩タイムになり、副院長がいたので質問してみる。


「先生。」

「どうした?」

「使い魔の契約を交わした者はスキルに変化があるんですか?」

「あると言えばあるし、ないと言えばない」

「曖昧な答えですね」

「契約石での契約ではほとんどスキルや能力は変わらない。結びつきが弱いからな」

「俺は精霊に契約を手伝ってもらったから変わるんですか?」

「変わらない事もあるが、大抵は変わるな。まぁ変わるといっても、使い魔が持ってるスキルの一部が主人にも使えるようになるだけだがな」


それはかなり重要なことではないだろうか…

俺の顔を見て考えていることが分かったのだろう、苦笑しながら話し続ける。


「使い魔になる動物は一般の動物が多いんだ。そんなにすごいスキルを所有していない。だからスキルが増えても何の足しにもならんことが多いんだ」


なるほど…


「ありふれたスキルでも使い所や、工夫次第で素晴らしい恩恵を与えてくれる場合もあるがな。ようするに本人の気持ちの持ちようだ」

「はい」


部屋のベッドに寝転びながら公星にステータスを見せてもらった。

使い魔になったことによって任意だが見れるようになったらしい。


*************************

公星LV2 性別:雄

年齢:30日 状態:腹6分目


スキル:大喰いLV2・雑食LV2・エアライズLV1

加護:セボリオンのハムハム愛

契約:魂の使い魔契約

主:セボリオン・サンティアス

*************************


ステータスの数字は見れないのか。

腹6分目ってお前今日オイルシード16個も食べてたじゃねーか!!

大喰いと雑食ってなんぞ…エアライズが空中浮遊のスキルだな。

加護が俺のハムハム愛…


わけわからん…


俺のステータスも見てみた。


*******************************

セボリオン・サンティアスLV1 性別:男

年齢:5歳8ヶ月 状態:健康


体力: 2

筋力: 2

耐久: 2

速度: 2

器用: 9(7+2)

精神:11(10+1)

知力:10(8+2)

魔力:10(7+3)


スキル:土魔術LV1・毒耐性LV4・ハムハムLV7・雑食LV1

加護:精霊の祝福2・KOWSAYの悪ふざけ

契約:魂の使い魔契約

使い魔:公星

********************************


「………………………………」


ごしごし


落ち着け俺、もう一回見てみよう…ゆっくりと見てみよう。



*******************************

セボリオン・サンティアスLV1 性別:男

年齢:5歳8ヶ月 状態:健康


体力: 2

筋力: 2

耐久: 2

速度: 2

器用: 9(7+2)

精神:11(10+1)

知力:10(8+2)

魔力:10(7+3)


スキル:土魔術LV1・毒耐性LV4・ハムハムLV7・雑食LV1

加護:精霊の祝福2・KOWSAYのウィットが効いた悪ふざけ

契約:魂の使い魔契約

使い魔:公星 (KOWSAY)

********************************



「……………………………………………………………………………………………………………………」


ゴシゴシ



「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」


「お前は何処のディスクジョッキーだ!!ざけんじゃねーぞこうせーーーーーい!!!」


夜の静寂しじまに怒鳴り声が響いた。

2016.7.3修正

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[一言] 冒頭の平凡なキャラどこいったんだろう 馬鹿っぽさ無くしてくれたら凄い面白そうなのに
[気になる点] 枝豆のような豆マル豆 何故、枝豆? 大豆じゃないの?
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