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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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第五十九話 帰還

花祭りが終わり俺との例の話し合いが終わると、直ぐにホーエンハイム公爵とアライアス公爵は自分の領地へと帰っていった。

ウィルさんは俺達と一緒に学園都市に戻ろうとしたのだが、父親のアライアス公爵に首根っこを掴まれて強制連行され、おやつの恨みは忘れねー覚えてろよ!!っとまるで雑魚キャラのようなセリフを残し移転陣へと消えていった。

あの人は本当に残念な人だ。


他の公爵様とウィルさんを見送った後、俺達も夕飯を食べてそのまま学園に戻るための準備をする。

まぁ、準備と言っても無限収納鞄マジックポーチから出していた私物や、知り合いに配るお土産をしまっただけだけどな。


「さてと。じゃあ帰りますか。あ、アードフさん。エルドラド駅まで送ってくれるんですか?」


この数日俺達の世話をしてくれたアードフさんが俺達のいる部屋へと入ってきた。


「いいえ。エルドラド駅にまで行かずとも、この別邸から学園都市に繋がる移転陣がございますので、そちらへご案内いたしますよ」

「何か本邸もそうだけど別邸も聖帝国の主要都市と全部繋がってそうですね…」


俺の言葉にただただ微笑んで返すだけのアードフさんの顔から、俺が言った言葉が本当の事だとわからせてくれた。


「あ!そう言えばまだエルトウェリオン公爵様達に挨拶してないわ。このまま帰るのは礼儀に欠けるし挨拶していかなきゃ」

「そうね。この何日もお世話になったんだから挨拶しないと」


俺の言葉に頷く仲間達。


「大丈夫だよ。お父様たちは移転陣のある部屋で待ってると思うから」

「え!?公爵様達が見送りに態々待ってるの!?」

「はい。旦那様たちが既にお待ちでございます」


その言葉を聞いて俺は自然と歩く足が速くなってしまった。


「こちらの部屋でございます」


移転陣がある部屋の前に着き扉が開かれると、そこにはエルトウェリオン公爵夫妻とエルドラド大公夫妻、執事さんを初めとするこの数日で俺達がお世話になった使用人の人達が待っていた。


「お待たせしてしまってすみません」

「いや。そんなに待ってはいないよ」

「いやいや」


気にするなと手を振るエルトウェリオン公爵に頭を下げる俺。

そんな俺の横にシエルが来て家族に挨拶をした。


「おじい様おばあ様、お父様お母様、皆それじゃあ行って来ます」

「体に気をつけてね」

「うむ、頑張って来い」

「ジョエルとノエルにも宜しくね」

「2人にパパがどれだけ頑張ったか伝えておいてくれ!」


エルトウェリオン公爵はブレないな。

最初に公爵に会った時もジョエル君とノエルちゃんに会えなくて涙を流していたし、本当にブレないわ。


「「「「「「皆さん本当にお世話になりました!」」」」」」


移転陣へ移動する最中に、俺はこの滞在で起こった事が走馬灯のように流れていた。

この9日間は色々な事がありすぎて色々思い出せない……いや、思い出したくない。

最初は本当にお気楽気分で観劇観光に浸っていたが、俺の身に降りかかる予期せぬ事態に最早それどころではなくなってしまった。

副院長から俺の話を聞いた大公やら、ヴァールカッサの件はまだ良い、いや良くは無いが良い。

しかし、最後の最後であの爆弾はやめて欲しかった。

俺は気分転換のためここに誘われてきたはずなのに、気分転換どころか気分動転だ。

こんなに気分動転して手に入れた収穫は、ウィルさんとの出会いと良い匂いという微妙なものである。

チキショー、今度絶対ウィルさんに良い夜のお店に連れて行ってもらうんだ!

そうじゃないと割に合わん!!


とりあえず学園に戻ったら課題として『魔法構築を学び直す』と『副院長に苦情を言う』が最重要項目だわ。

副院長よ、マジで覚えておれよ……俺のことを国の上部の人達に愚痴ってるってなんやねん!

職権乱用とかそれ問題以前の問題だろこれ!!

いや確かにさ、聖育院じっかにはあまり帰らなかったさ、でもそれはやる事があったから帰らなかっただけだろうが。

便りが無いのは元気の印って言葉しらんのかい!!

俺と仲の良いゴンドリアやルピシーは帰っていたから俺も帰ってくると思っていたのか?

いや、その前になんで俺こんなに副院長に構われてるの?ねぇ?

俺の他にももっと灰汁の強い奴なんていっぱいいるだろうが!

しかも年々兄弟姉妹は増えていくんだからそっちの弟妹のほうを構ってろや。

これって明らかに差別だよな!!?

養い子に優劣つけるの禁止なのあのおっさんだって知ってるだろうが!!

よし、帰ったら早速聖育院じっかへの移転陣の使用を学園事務所に取り付けよう。

そして副院長へ討ち入りじゃ!!!


「では、本当に色々お世話になりました。あ、そうだ大公様、くれぐれも俺の事についての話を面白おかしく広めないでくださいね、お願いしますよ。マジで」

「もう遅い。この数日でお前の情報は錯綜しておる。儂もお前の事を少し大げさに吹聴してしもうたからな、許せとは言わん諦めろ。恨むならセディを恨め」


ふと思い出し大公に念を押すが、大公は気にも留めず良い笑顔で死刑宣告を発してきやがった。

副院長を恨めって……ぶっちゃけ原因の一端はあんたにもあるのに丸投げかよ!!


「何副院長みたいな事言ってるんですか!この未来溢れる俺の人生が掛かってるんですからね!」

「だって面白かったんだもん」

「良い歳したごっついおっさんが『もん』をつけないでください!きしょいわ!!!」

「あらぁ、セボリー君ったらお義父様と随分仲良くなったのねぇ」

「公爵夫人……」


ワザとなのか天然なのか良く分からんわこの人!!

まぁおそらく九割以上の確率でワザとだけど!!


そんなやり取りを他の人達が苦笑しながら眺めているが、マジで俺にとっては切実な事なんですが……


「だったらグレンにもお前の事を報告しておこうかの。セボリーの情報はあいつからの情報もはいっておるからな、お返しだ」

「そうだったわ!ラングニール先生への制裁も忘れていたし!!帰ったら計画を練らなければ……」


俺が闘志を燃やす中、ゴンドリアとルピシーは「やり返されるのが見えてるのに良くやるわ」と言っていたが、俺はそれでもやらなければいけないんだ!!

目には目を歯に歯を!噂話には悪評をだ!!


後日ラングニール先生に苦情を言おうと先生の家へと向かったが、プラタリーサ先生の2人目の妊娠が発覚してそれどころではなく、お目出度い空気を残して俺は悔し涙を流し去っていく事になる。


「では行ってきます」

「「「「「「ありがとうございました」」」」」」

「『io@+%<H=(サンティアス学園前)'|*+Я』」


移転陣へ足を踏み入れ別れの言葉を言い、移転の呪文を唱えてるとすぐに見慣れた場所へとたどり着いた。

たった9日前に見ていた光景だと言うのに懐かしさを感じる。


「うおーーー!!帰ってきたって感じだな!」

「さて、どうする?僕は商会事務所に行くつもりなんだけど」

「そうだな。約10日間も空けてたから埃も溜まってるだろうし掃除でもするか」


商会事務所へと向かい入り口へと近づくと入り口の前に3つの人影が見えた。

ゴンドリアが物凄く訝しげな表情をしながら警戒をしている。


「誰かしら?」

「さぁ?少し隠れて様子を見よう」


警戒して様子を伺っていると言い争いをしているらしい、少し離れた俺達のいる場所でも声がかなり聞き取れる。


「だから何でお前等はそうなんだ…あの金はお前等の装備を揃える為に貸したんだぞ」

「ですが生活費がなければ生きていけません…」

「うう……こんなみすぼらしい格好嫌ですわ…」


どこかで聞いたことがある声なんですけど……

言い争いと言うか、一方的に注意しているような感じだな……

もう少し様子を伺おう。


「だからといって無駄に高いものを買う必要が何処にあるんだ」

「高いものは正義だと教えられて…」

「欲しいと思ったものが高かっただけで…」


うん、やっぱりこの声知ってるわ。

一人目の声は前は毎日聞いていた声だし、二人目と三人目の声はこんなに弱弱しい声ではなかったが聞いたことがあるぞ。


「金が無いのに欲しいものを買う事自体間違っているだろうが……あ!セボリー達だ」


うぉ!見つかっちまった!!

ジジが目聡く俺達を見つけて駆け寄ってくる。

ジジの後ろには例の馬鹿2人が力なく項垂れていた。

ジジはともかくその馬鹿2人とは余り係わり合いを持ちたくないんですが……


「やっほー。こんな夜にごめんね、でも用事があったんだ。」

「もしかしてかなり待ってたか?」

「いや~。つい30分前に来たところだよぉ。セボリー達の商会っていつもこの時間は灯りが点いてたからこの時間に来たんだけど、着いて見たら扉も閉まってるから驚いたよ」


つまり先程の説教は30分間は続いていたと言う訳だな……


「ちょっと旅行に行ってたんだよ。9日ほど前から行ってたんだけどな」

「うっわぁ、もしかして丁度帰ってきたところだった?それはラッキーだったよ、待ち惚けする所だった。実はね」

「ちょいと待った。立ち話もなんだし、多分埃っぽいと思うけど中に入って話を聞くわ。正直言うとその2人がいる時点であんまり係わり合いを持ちたくないって言うのが本音だけどな……」

「悪いね。でも結構切羽詰ってるんだ、この2人が。見捨てようかと思ったんだけどねぇ。前にセボリーが言ってた言葉思い出してさ、なんだっけ?坊主の頭も三度までだっけ?」

「……仏の顔も三度までな」


先程までは固い口調で話していたが、俺の知るジジに戻ってちょっと安心した。

チラッと例の馬鹿2人を見ると半分魂が抜けている状態である。

他のメンバーの了解も取りつつ3人を商会事務所へと誘うと、そこで俺達はこの馬鹿2人の今までの行動をジジから説明されて、爆笑と共にドン引きすることになるのであった。

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