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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第一章 別れと出会いの章
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第四話 準備

精霊の祝福の儀式を明後日に控え、俺は日常生活を送りながら自分なりに準備を進めていた。


「ふうぃ~……これで終了」


ゴンドリアが服を作るのが好きなのは知っていたが花飾りの作り方を知らなかったらしく、偶然俺が知っていたために作り方を教える傍ら大量生産する破目になりました。


「これだけあれば良いだろ」

「うん!ありがとう!ずっと作り方を研究してたんだけど上手くいかなかったの。これであたしの野望にまた一歩近づいたわ!!これで香玉こうぎょくは無理だけど、自作の香水を仕込めば………ぶつぶつ…」


自分の世界に入っていくゴンドリアから知らない言葉が出たので質問してみた。


「香玉ってなに?」

「ん?香玉は宝石の一種よ、半永久的に花や木の香りがする恐ろしく高価な石よ」

「へぇ、そんな石があるのか」

「貴族は皆持ってるわ、だって叙爵と同時に副賞として国から貰うことが出来るのよ。だから副院長先生はいつも新緑のような香がするでしょ?」

「ほへ?あれって香水つけてるんじゃなかったの?って言うか副院長貴族だったの!?」

「副院長先生は立派な貴族様よ。それとあの匂いは香水とは違うわよ。香水じゃあんなに清清しい香りなんて出せないわ。香玉を貰った人は一人一人香りが違うのよ。それに不思議なんだけど持ち主が亡くなると香玉も一緒に消えてしまうんだって」


セボリーあんた知らなかったの?と言うゴンドリアに俺はこっくり頷いた。


副院長って貴族だったのか、全く知らなかった……あの匂いもてっきり良い歳したおっさんが色気づいて高い香水振りまいてるのかと思ってたわ。正直すまんかった。


「しかも副院長先生は複数称号の持ち主なのよ!」

「複数称号ってなんぞや?」

「それも知らないの!!?」


すんません知りません。


「セボリーあなた変なことは詳しいのに一般常識は壊滅的ね」


ひどい言われようである。


「貴族や教団の一定の地位にある人は、名乗る時に名前の後や苗字の前に称号を入れて名乗ることが出来るの。その名乗れる称号が多いほど、いろんな功績を残してきたって証明にもなるのよ」

「副院長先生はどんな称号持ってるの?」

「確かあの人の名前は『セオドアール・ディアマンテ・フォン・トリノ・ド・ラ・サンティアス』だったかしら、元々の名前が『セオドアール・ディアマンテ・トリノ・サンティアス』だから3つの称号を持ってることになるわね。これは一般人が取れるほぼ全ての称号を持ってることになるわ」


名前長げぇよ…ディアマンテってダイアモンドのことだったよな…

しかもトリノって確かフェスモデウスの隣国にそんな名前の国があったような気がした…


「『フォン』は世襲貴族と一代貴族の法衣爵位の称号で文化的に優れた人に贈られる称号なの」


そういえばこの国では伯爵より下の爵位は皆一代貴族だったな。


「『ド』は一代貴族の騎士爵位の称号で、迷宮や軍で功績をあげた人に贈られる称号よ」


法衣爵位と騎士爵位の順位もあったような気がするが覚えてない……


「『ラ』は教団の助祭以上の人が贈られる名誉称号よ。これは贈られても貴族の称号にはならないわ」


良くそんなこと覚えてるな。お前は本当に5歳児か?


「副院長先生は確か准子爵の称号と第一騎士爵の称号、そしてアルゲア教の司祭枢機卿だから当然『ラ』の称号も名乗れるのよ」


前の世界のヨーロッパでは苗字ではなく自分の名前のほうに称号がつくことが一般的だったが、こちらでは日本のように苗字に称号がつく場合もあるのか……

と言うか枢機卿ってメッチャ偉い人じゃなかったっけ?


色々な事が分かり衝撃を受けていた俺に更なる衝撃が走ることになる。


主に肉体的に…


「身近にそんなすごい人がいたのか。全然気づかなかった」

「あとは…ほら、いつもお菓子とか玩具とか服とか持ってきてくれるお爺さんいるでしょ」

「あ~、あのいつもニコニコしてるダンディで優しそうなお爺さんか、月に1回くらいの頻度で来るよな。あの人がくれるお菓子美味しいんだよなぁ」

「あの人は帝佐さまよ」

「帝佐って何?」

「……え?それ本気で言ってるの?」

「お、おう……」


ゴンドリアが深いため息を吐く。


「………聖帝聖下の執事さま…いえ家令さまよ」

「聖下はすごいけど、なんで?その執事さん?家令さん?がどうかしたの?」


っあ!!こいつまたため息つきやがった!!


「帝佐さまはこの国の宰相さまと同じ位偉い地位よ…一般人が上れる地位の中で一番高い地位のひとつなの。宰相さまも帝左さまも就任と同時に一代貴族の爵位子爵を贈られる。つまり雲の上の人なのよ」

「なんでそんな雲の上の人がこんなところに来るの?人気取り?」

「ホアチャァァァァアアアアアッ」


ゴスッ


「いってぇぇぇええええ!!!なにするんだよ!!!」


ゴンドリアが俺に見事なドロップキックを見舞わせた。ついでに公星は机の上でオイルシードを食ってます。


「帝佐さまもサンティアス出身なのよ!!それで寄付兼里帰りと!聖帝聖下へ!サンティアスの状況を報告するために!院長先生に話を聞きに来てるの!わかったかコノヤロー!!」

「は、はい…わかりましてございます……申し訳ございませんでした…」


こうして鬼神が誕生したのだった。俺は痛みを堪えつつ土下座ですよ皆さん。前世でも殆どしてこなかった土下座をこの歳ですることになるとは…

ちなみに周りの兄弟たちは巻き込まれないようにと俺達から距離を置いています。近寄ってきても良いんだよ?


「ひ、酷い目にあった…」

「モキュー」


自業自得とばかりにやる気の無い声で返事をした公星を、胸ポケットに入れながら俺は畑仕事をしていた。


「よいしょ、よいしょ」


俺は今スコップと草刈鎌を使ってジャガイモに良く似た芋の畑の手入れをしている。鍬を使いたいが如何せん身長が低いので無理なわけだ。早く大きくなりたいぞ。


「モキューモッキュキュウ!」

「ん?どうした公星」


いきなりポケットの中から飛び出し地面を掘り出した公星は、「いいからここ掘れや」と言いたげに2本足立ちの体で地団太を踏んでいる。


ハムスターって骨格的に2本足立ち出来なかったんじゃなかったか?…いや、でもこいつはピケットだからと考えながら俺は指された場所を掘ってみる。

しばらくすると、とうもろこし一粒大の透き通った緑色の石が出てきた。


「何だこの石?綺麗だな」


手の平の上に石を乗せ、転がしながら見ていると公星が俺の手の上に登ってきていきなりその石を食い始めた。


「え!?食うの!?いくら食い意地張ってるからってお前石まで食うの!?」


慌てて止めようとしたが、公星はもう食べきっていた。


「ぺっぺしなさい!ぺっ!!大変だ先生に見せにいかないと!」


先生達がいる部屋に俺は駆け込み、部屋の中にいた女の先生に俺の手の上でのんびりしている公星をつきだした。


「先生大変!!公星が緑色の石食べちゃって吐き出さないんだ!!」

「…その緑色の石とはこういう色ではなかったかなぁ?」


そう言って少し色っぽい女の先生が戸棚から赤ちゃんのこぶし大の大きさの緑色の石を取り出してくる。


「そうです、それです!!」

「ああ、なら大丈夫よぉ。それは精霊石だから体には無害よぉ」

「精霊石?これがそうなの?」

「そうよぉ。自然の力の結晶だから食べても基本的に無害だし、動物にはたまにおまけがあるのよぉ」

「おまけですか?」

「そぉよ。コーセーちゃんはおまけに当たったらしいわねぇ」


ふと公星を見ようと手の平を見たら消えている。


「あれ。あれ?公星が消えた!!」

「上よ上ぇ」


頭上を見上げると公星が浮いていた。


「ほわっと」とそう漏らした俺は誰にも責められないだろう。


「精霊石は自然から出来た力の結晶なの。だから自然の力を取り込む事によって能力が発現したりするのよぉ」

「つまり。俺がいつも食べてばかりの公星に再三運動しろと言っているのに、運動するどころか楽な移動手段を身に着けやがったわけですね、わかります」

「趣旨がちょっと変わってるけど、能力的にはそう言うことねぇ」

「お前動けやぁぁああ!楽しやがってぇえええ!お前の移動方法俺のポケットか手の平か肩の上なのに今度は空中浮遊で楽するんですか!!?どこの武○術だコノヤローー!!!」

「モッキューーーー!」


精霊石を食べて能力が発現するのは精霊と相性が良い動物だけだと教えられ、尚且つ身についた能力は精霊がバックアップするので消費魔力カロリーも抑えられ効率的な能力らしい。


ぶっちゃけそんな事どうでも良いわ!!!そうだ!今度アレを作ろう。あのハムスターを走らせる車輪のようなものを!!!



そして2日後、俺たちは『精霊の祝福』の儀式に参加する。


いつも忙しくあまり姿を見せない院長と、いつものラフな格好しかしない副院長が荘厳ないでたちで、数人の人達を従えて俺達の前に姿を現した。

2016.6.29修正

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― 新着の感想 ―
[一言] 学園だとか貴族だとかの説明は出来て一般常識は無いって不自然じゃないかな
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