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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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第二十八話 未来の商売の種

初の迷宮探索から3日後、俺達は2日程度の予定を組みまた試しの迷宮に潜っていた。

2日間授業を受けないという選択をしたので、潜る前の2日間は朝から夜まで授業を満遍なく入れた生活を送っていた。

ルピシーは言うまでもなくこの生活で死んでいたが、俺達にとってもかなりきつかった事は確かであった。


「ふぅ、2日目でやっと4階層にまでたどり着いたね。5階層までいけるかなって思ってたんだけどなぁ」

「周りの経験から言うと早いほうらしいぞ。前にティグレオさんのパーティメンバーの人から初心者が5階層にいけるまで、平均1週間掛かるといっていたからな」

「でもあれ買って正解だったね。大分負担が軽くなったよ。劣化複製レプリカでも作るの大変だったけどね」


シエルはそういって腰についているポーチを叩く。


「ああ、そうだな。苦労した甲斐があった」


俺もシエルにそう返し、自分の腰にも付いているポーチに手を伸ばした。


迷宮に潜らないメンバーも含めて俺達は色違いのポーチを持っている。

このポーチは俺達がお金を出し合って買った『魔道具マジックアイテム無限収納鞄マジックポーチ』の複製品レプリカだ。

無限収納鞄マジックポーチは無限とついているが無限に入るわけではない。

普通駆け出しを抜けたくらいの冒険者が無理をして買う容量のポーチが、3LDKのマンション1部屋ほどの容量が入るものだ。

これはデザインやポーチ自体の大きさで値段のグレードが変わるが、大体は上記の容量のモノが普通である。

しかし俺達は件の小遣い稼ぎで税金が発生した問題から、商会を立ち上げ様々な事で稼いでいる。

例えばヤンはアクセサリーを、フェディは薬や毒を、シエルは新たな魔法構築式を、ゴンドリアは服を、そして俺は護符アミュレットなどだ。

最近休みの日はロベルトと良く取材と言う名の食べ歩きに出ているルピシーは省くが、俺達は同年代から比べるとかなり稼いでいる。

よって少し無理はしたがかなりグレードの高いものを購入して、5人で無限収納鞄マジックポーチを一度解体し、苦労を重ねて作り上げたのがこの皆で色違いに作った『複製レプリカ無限収納鞄マジックポーチ』である。

本物オリジナルは大体10haヘクタールの面積の容量をしまうことが出来るが、このレプリカは5haヘクタール程の面積の容量だ。

それでも駆け出しの冒険者が持てるものよりも圧倒的な容量を持っているので便利と言うしかないが、これを買うために俺達の資産が一気に五分の一程になって涙したのはつい最近のことである。

ついでにオリジナルを解体した良いが、組み直せずに学園の魔道具の先生に泣き付いて組み直してもらった記憶は新しい恥の一つだ。

あ、ちなみに本物オリジナルは無事に組み直されて商会の金庫に厳重に保管されている。


「そうだな。あれは大変だった…俺達5人がへいこらしてやっと作り上げたからな…」

「ああ、あの時は夢の中でも唸りながら悩んでいたからな…」

「でもそれだけの価値はあったよね」


今いるルピシーを覗く3人は深く頷きあった。


「どうでもいいから早く行かないか?」

「「「どうでもよくないわ!」」」

「んなこと言うんだったらそのポーチ返せやボケェ!」

「無理!」

「まぁまぁ、ルピシーには他の事で働いてもらうからね。分かってるよね?」

「はいぃぃいいい!!!」


最近シエルはルピシーの操り方わかってきたな。


話を切り上げまた迷宮の通路を歩いていた時、ルピシーがある壁の前に立ち止まり珍しく難しい顔をした。


「なぁなぁ、ここの壁なんだが、なんかおかしくないか?すっごい違和感があるんだが」

「へ?俺にはわからないけど」

「私にも違いが分からん」

「んー、僕にも良く分からないや」

「確かになんか変なんだけどなぁ。コーセーはどう思う?」

「モッキュ?モッキュー」


おい、ルピシー。

公星に答え求めるなよ。

あれ?でも何か公星が調べ始めてるんですけど?


「モキュモキュキュモキュ」

「ん?何々?識別をしろってか?」

「モキュ!」

「え~~。めんど~い」

「モキュ!モキュキュ!!」

「わかったわかった」


公星に促され俺は渋々識別を発動させた。


************************************

隠し部屋への扉:隠し部屋の扉。まだ誰も空けていない部屋の扉

************************************


へ?マジで?


「まだ誰も空けていない隠し部屋の扉って書いてあるんだが」

「ほぉ、それは凄いな。全然分からなかった」

「それも凄いけど早速役に立ったねルピシー。野生の勘って凄いな」

「俺は野生動物じゃねー!!」

「それは置いといて識別ってこうゆう使い方も出来るのか。今度からは疑問に思ったら識別をしよう。もしかしたら何回も見逃してる可能性があるな…そう思うともったいない」

「で、どうやって開けるんだ?」

「え?わかんない。公星わかるか?」

「モッキュ!」

「わかるんかい!!」

「モキュキュモキュー」


公星は壁に向かって鳴き始め、すると壁の一部が光りだして人が入れるほどの空間が開いた。

どうやら精霊に手伝ってもらったらしい。

持つべきものはお友達ですね、わかります。

何回も思うけど本当にこいつの存在謎だわ。

一番の謎はゴンドリックさんだがな!


「よし!はいろうぜ!!」

「「「まてい!!」」」

「え?なんで?」

「何でじゃねーよ何でじゃ!普通は罠があるかとか調べてから入るだろうが!!何考えとんじゃコラァ!!!あっ、何も考えてませんでしたよね、すいませんでしたぁ」

「こいつに普通と言う言葉は当てはまらないのは分かっていたが」

「まぁ馬鹿らしいと言えばルピシーだしね。あれ?反対だっけ?まぁいっか馬鹿だし」

「なぁ、お前ら最近俺の扱いがひどくないか?俺の気のせいか?」

「「「気のせいだ(よ)」」」

「そうか、そうだよな」

「最近じゃないしな」

「だな」

「そうだね」

「やっぱり扱いがひどいじゃねーか!!!」

「ひどくは無い。雑なだけだ」

「真実を言っているだけだ」

「真実って残酷だけど真理だよね」


一通り罠の有無を調べて中に入るとルピシーが「やっぱり罠なんかなかったじゃんか」とかいっていたような気がするが無視無視。

隠し部屋は50畳ほどの空間で宝箱と宝石や金塊などの宝物が眠っていた。

とりあえず宝石や金塊を皆で手分けしてポーチに入れてから宝箱へと向かう。

宝箱の中を開けてみると魔道具マジックアイテムが入っていて、識別をしてみると非常に興味深いものであった。

それは『力の守護符タリスマン』といい、腕輪型で俺達の護符アミュレットの上位版のような代物だったのだ。


「これは興味深いな。装飾も素晴らしいが効果も素晴らしいときている」

「これは戻ってから研究解析して同じようなものを作れたら高値で売れるだろうね」

「そうだな、でもまずは俺達の腕を上げないとここまでの物は出来るとは思えないがな」

「なぁ、それ研究が終わったら俺がつけていいか?俺完璧に前衛だから必要だと思うんだ」

「俺もそう思っていたから大丈夫だ。皆はどうだ?」

「別にいいよ、実際ルピシーが一番の適役だと思うし」

「私も異論は無い。私は力よりも速さが欲しい」


隠し部屋の中にあった宝物は、俺達のポーチで散財した分をカバーするが如く良い稼ぎになってくれた。

これは迷宮事務所で売りに出さなくとも、商会の金庫の中でいざと言うときまで眠って置いていただきましょう。


それから夜まで俺達は潜り続けやっとのことで5階層に辿り着き、5階層のクリスタルにセーブをして地上へと戻った。

地上へ戻り早速迷宮事務所で換金していく。

この2日間の成果は目を見張るものがあり、換金合計で3万Zゼアス約300万円も稼げた。

一人当たり70万Z以上の利益だ。

迷宮冒険者は稼げる仕事だが稼ぐための経費や生活費、更に税も掛かるので儲けは2割あれば御の字と言われている。

しかし稼ぐための経費が殆ど無い状況ならどうだ、俺達は学生なので殆どその経費が掛からない状態である。

つまりほぼ丸々懐に入ると言うことだ。

税も俺達は商会に属しており、そこから税金が引かれる形になるから通常よりも安い。



さて、この世界の冒険者の多くは商会に属していることが多い。

何故なら税金が安くなるからだ。

なので冒険者の多くは無所属のフリーではなく、仲の良い冒険者が集まってパーティで商会を立ち上げたり、または知人の商会に入れてもらうなどする。

前世の世界でギルドと呼ばれていたものは、この世界では商会という形になる。

この世界でもギルドと言われるものはあるが、それは基本的に1業種に1つしかなく、本来意味で使われる職人同士の組合の事をギルドと指し、ギルドは前世の日本で言う省庁の役割を果たしている。

よって国と学園の管轄で運営している迷宮事務所がギルドで、俺達が属している商会はその系列の子会社のような存在なのだ。

迷宮事務所は俺達が迷宮に潜って手に入れた品物を買い取り、それを転売また加工して売り利益を出す。

そして俺達商会は迷宮事務所を通して迷宮から手に入れた品物に掛かった税を納めている。

ただ多くの商会は自分たちで独自の商売をしているため、その分多くの税金が掛かる。

その税金は結構馬鹿にならない金額なのだ。

だが迷宮に関わるものは通常の商品よりも税金が安い。

更に商会主の殆どは冒険者として迷宮事務所に登録されているため、その分税金が安くなるのだ。

なので商会に属さずフリーで活動するものはかなりの嫌われ者や駆け出し、相当な自信家か本当に実力のある者一握りに限られていた。


俺達は換金を終え、研究や服を作っているだろう2人に報告を行うために商会の事務所へと向かった。

そこで俺達は新たな仲間(?)との顔合わせになる事をまだ知らずに談笑しながら商会へ向かっていく。

その後、俺は前に自分が発言した言葉に後悔をするのであった。

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