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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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第二十七話 魔石

迷宮に潜るのは初めてなので、1階層の初めから2階層へ続く階段まで行かなければならなかったが、壁に標されている矢印のおかげで30分程で迷わず2階へ続く階段へとたどり着くことができた。

2階層の雰囲気はTHEダンジョンと言った感じで、少しのワクワク感と緊張感が入り交ざる。

俺達は慎重にレンガとタイルが張られた通路を歩いていく。


「モキュー!」


歩き始めて10分ほど経った時、突然公星が鳴き声を発した。


「ん?敵か?」

「よし!先手必勝だ!!」

「まず敵の数や種族を確認しなよ」

「とりあえず『保護プロテクト』を皆に掛けるぞ『保護プロテクト』」


一々詠唱をして精霊達にお願いしながら魔法を使っていた俺は、シエルによる魔法構築式のご指導のおかげで、簡単な魔術や魔法なら無詠唱で発動することが出来るようになっている。

俺は魔力が人よりもかなり多いので魔力を多く使って無理矢理発動している気があったらしく、シエルから言わせれば魔力の無駄遣いと形容されていた。

だがシエル先生から効率的で無駄をそぎ落とした構築式を教わり、初等部の先生達からも魔力コントロールのアドバイスを貰った結果、より効率的で威力や範囲も増し、すばやく魔法を発動できるようになっている。


「スケルトンだな。3体いるぞ」

精霊聖典レメゲトン開封オープン

「先手必勝!よっと!!」


ヤンが敵を確認し俺が精霊聖典レメゲトンを開いた瞬間に、ルピシーはスケルトンに向かって走っていき斬撃を加えた。


「ちょ!こら!勝手に突っ込むな!!」

「もう突っ込んだ後だから何言っても遅いよ。ルピシー、出来るだけ魔石のある所は狙わないでね。スケルトンは魔石がある所が見えているからわかりやすいでしょ」

「わかった!!」


注意する俺に最初からルピシーが猪突猛進する事を予想していたのか、シエルがルピシーに指示を飛ばす。


魔石とは一種の精霊石のようなものだ。

精霊石は自然の力の結晶、魔石は迷宮の敵の魔力の結晶で出来ていると言われている。

どちらの石も高いエネルギーを持っているため様々なことに有効活用でき重宝されていた。

特に魔石はそこいらの精霊石よりも価値がある。

何故ならば精霊石は聖帝国内ならほぼどこでも採る事が出来るが、魔石は迷宮内でしか取ることが出来ず、精霊石と魔石では活用方法が違うし、産出量が少ない魔石は比較的高額で取引されていた。


シエルがルピシーに指示を出し終えて10秒もしない間に俺達の初戦闘は終わりを告げた。


「よし!楽勝だぜ!!」

「お前突っ込むなよ。結局俺達出番無かったじゃん」

「少しは残して欲しかったな」

「まぁまぁ、ルピシーには次から譲ってもらえば良いんじゃないかな。でも最初の一体は魔石が粉々になっているね。何も考えなしに突っ込むからこうなるんだよ。わかった?」


と、シエルはモンスターを解体しながら爽やかな笑い顔を浮かべ、後ろにどす黒いオーラを纏わせながらルピシーの顔を直視しつつ言った。

それを見たルピシーは首を上下小刻みに振り「喜んでぇぇええ!!!」と返事を返している。

お前は居酒屋の店員か?

と言うか折角の魔石を砕くんじゃねーよ。

換金できるんだからちゃんとしようぜ。

この馬鹿ルピシーはちゃんと注意しても聞いてない事があるからな。

まぁコレだけ脅せば大丈夫か?

後のことも考えてシエルはこのような怒り方をしたのだと思うが、見ている俺が怖かった。


予断だが、良くファンタジーで聞く敵を倒したら自動的に迷宮内に吸収されてドロップが落ちると聞くが、この世界では違う。

敵を倒しても消えずに残っているので一々解体をしないといけないのだ。

モンスターの部位で売れるものと売れないものが決まっており、綺麗に解体しないと売り物にならないし、魔石は固体ごとにある場所が違うのでかなりややこしい。

だがスケルトンの場合は魔石だけしか買い取り対象にならないし、魔石も露出しているので分かりやすい。

なのにあの馬鹿ルピシーは折角初心者には稼ぎやすいスケルトンだと言うのに魔石ごと切ってしまったのだ。


買い取り対象ではない部位などは他のモンスターが食べて自然と消える時もあるのだが、中にはそのまま放って腐り悪臭や流行病が出てしまったりする事もある。

ぶっちゃけ誰もそんな環境で迷宮に潜ったりはしたくない。

モンスターが死骸を食べて綺麗にしてくれると言ったが、その食べてくれるモンスターの大半はスライムで、攻撃力は皆無だが肉も骨でさえ消化してしまう強靭な消化力を持っているモンスターだ。

なので迷宮内で益虫もとい益モンスターとして見られており、見かけても倒さないのが暗黙のルールになっている。

あのポヨンポヨンした見た目も癒されるしな。

そしてどんな深い階層でもスライムはいるらしく、何故か他のモンスターからも襲われることもなく迷宮内を闊歩しており、迷宮の謎の一つにも数えられているらしい。


さて、迷宮を綺麗にするのはスライムだけではなく、ちゃんと人の手でも綺麗にしている。

ここで登場するのが掃除屋と言われる犯罪奴隷だ。

迷宮の中に入ることが出来る奴隷は大まかに分けて3種類、まずは冒険者に雇われた奴隷、戦闘奴隷ファイターだ。

彼らは冒険者の雇用主から給金を貰い戦力として雇われる。

その給金は奴隷の中ではトップであり、下手なサラリーマンよりも手取りが多い。

戦闘奴隷の中でも国に雇われる者もいるが、その話はまたの機会にしておくとして、もう二つ目が戦闘には全く関与しない荷物運びポーター、そして三つ目が迷宮内の清掃などをする掃除屋クリーナーだ。

彼らは国が迷宮の雑用係として雇っている奴隷である。

危険だし汚れ仕事だが監督役の戦闘者が一緒に行動するし、給金は戦闘を生業としない奴隷の中ではトップクラスなので人気が高い。

なので犯罪奴隷の中でも迷宮で働くことを希望する者はかなりおり、迷宮で働いている奴隷達は結構な倍率の競争を勝ち抜いてきたエリートといえる。


「そ、そうだぞ。次からは気をつけろよ」

「じゃー解体も終わったし、先に進もうか」

「おう、公星知らせてくれてありがとな」

「モッキュー」


俺はお礼を言いつつ公星の頭を撫で回した。

モルモット大に大きくなった公星は相変わらず歩きもせずに浮いている。

そんな公星のスキルはこの数年間で大きく変化、または強化されていた。


************************************

公星LV4 性別:雄

年齢:6歳 状態:腹6分目


HP:102/102

MP:154/160


体力: 22

筋力: 11

耐久: 11

速度: 28

器用: 30

精神: 28

知力: 29

魔力: 30


スキル:悪食LV21・エアライズLV17・風魔術LV12・風魔法LV4・土魔術Lv8・火魔術LV5・水魔術LV3・捜索LV12・感知LV5

加護:セボリオンのハムハム愛・精霊の遊び相手

契約:魂の使い魔契約

主:セボリオン・サンティアス

************************************


うん、こんな感じになってます。

スキルがかなり増えているが加護も追加されている。

公星は動物だからか、俺よりも精霊の事を感じ取れ見ることが出来るっぽい。

そういえば、この頃公星が良く空中をアクロバティックに飛んでいるのは知っていたが、精霊と遊んでこんな加護もらったんかい。

エアライズのレベルが上がって風関係の魔法が追加され、何故か土と火と水の魔術も追加されましたよ。

こいつは自分で取ってきた食材に火を通すために使ってるけどな…

こいつは本当に何処へ向かっているのか飼い主の俺にも良く分かりません。


その後また探索を続けているとまた公星が警戒をし始め、暫くするとハウンドドッグが6頭姿を現した。

ハウンドドッグとは常に3~10匹の群れで行動し、危なくなると泣き叫んで他のモンスターを呼びせる厄介な奴等である。


まず行動に出たのはヤンだ。

ヤンは火魔法の『火壁ファイアウォール』を使い逃げ道をなくした後、シャムシールのように少し湾曲した剣で攻撃を加え始める。

ルピシーも後に続こうと行動に移れば、俺はヤンの攻撃が当たる前に精霊聖典を開きながら付与魔法の『豪腕アタックアップ』と『加速ヘイスト』を2人に掛けた。

シエルも2人当たらない様に後ろから牽制と攻撃のために光魔法の『ライトジャベリン』を放ち、瞬く間にモンスターは残り1頭になり、残ったハウンドドッグが吠えようと上を向いた瞬間、ハウンドドッグの首が胴体と離れ落ちた。

空中に浮いている公星が風魔法の『風刃』で仕留めてくれたようだ。

こいつの攻撃的な魔法を見るのは初めてだったので、多少驚いたが御礼を言って皆で解体をし始めた。

解体し始めたは良いのだが、公星がフリーダム過ぎた。


「おい公星!お前モンスターの肉も食うのかよ!!お腹壊すぞって壊さないか…」

「モッキュ(はぐはぐ)」

「おい!はぐはぐって副音声ついてるけど、こっちに聞こえてくる音はバキョメキョゴリって音なんですけど!!?お前骨や腱まで食ってるのか!?っていうか売れるところまで食うんじゃねーよ!」

「モッキュー!!」


公星は一通り食べ終え満足したらしく死骸から離れ俺のほうへと浮かんでやってくる。

おい、そんなスプラッタな顔でこっち来るんじゃありません!


「お前体血みどろじゃねーか。拭いてやるからこっち来い」

「モキュ」


俺は懐からハンカチを出し公星についている血を拭こうとした時、公星は一鳴きすると自分で水魔術を使い体を綺麗に、体を震わせて水けを落とした後、残った水けを風魔法で乾かした。


「お前便利なのにも程があるぞ…」

「モッキュ」

「ん?おお!魔石とっておいてくれたのか!ありがとさん」


公星は食べながら魔石も取ってくれていたらしく俺の手の上に乗せてくれたが…

俺の手の上の魔石をガン見し始めたと思うと急に食べ始めた。


「お前精霊石食べるのは知ってたけど魔石まで食うんかい!!さっきの俺の感謝の言葉を返せや!」


他のメンバーはそれを見て笑いながらまた探索の準備をし始めた。


結局夜になりそろそろ帰らないと明日の授業も支障をきたすため、2階層まで潜った所で打ちやめになりクリスタルのある所まで戻り帰還した。

魔石は36個で換金部位は高い部位しかもって来れなかったよ。


「あーあ、もっと潜りたかったなぁ!」

「我慢しろや、俺達の本業は学業なんだからな。俺だってもっと潜っていたかったわ!」

「なかなか興味深かったな。今度は授業のカリキュラムをもっと相談してから潜るとしよう」

「うん、成果はまずまずだったし僕は文句は無かったよ」


地上の事務所に戻り、換金部位と魔石を現金に換金し銀行振り込みにしてもらってから寮へと家路に向かった。

換金合計は4人で800Zゼアス約8万円だった。

この短時間の探索で一人で約2万円。

浅い階層でこれなら深い階層は凄いことになるだろう。


寮に戻り風呂に入ってからフェディとゴンドリアに迷宮の報告をした後、夕飯を食べ俺はすぐに眠りに着くのであった。

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