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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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第二十三話 能力試験

「本当に潜るのか?」

「はい、そのつもりです。初等部時代にもう教員5人分の推薦は貰ってますしね」

「いくら試しの迷宮でも死ぬことはあるんだぞ、それにお前達は最近学園都市内で荒稼ぎしていると聞いているが、もう潜る必要もないんじゃないのか?」

「それでも潜ります。自分の力を試したいですから」

「柄にも泣く青臭いことを言いおって」

「副院長は俺のことを何だと思ってるんですか!」

「ん?セボリーはセボリーだ」

「…そうですか。じゃあ同意書に署名お願いします」

「ふむ、ここはお前の真似をしてみよう。だが断る!」

「うぜぇぇえええええ!!!」


久々に聖育院じっかに俺の声が響き渡った。




「と言うことがあったんだ」

「ふーん。それは大変だったねー…」


能力試験会場へ行く最中、同意書を提出し能力試験を受けるために副院長に同意書を書いてもらう過程の話をしていると、シエルにやる気のない返事を返された。


「いや、もうちょっと力の入ったコメントが欲しいんだけど…」

「心配だ、心配だ、心配だ…ノエル…ノエル」

「セボリー今は駄目だ、放っておけ。俺達にもとばっちりが来るぞ」

「あ、アイアイサー」


なんでシエルがこんな風になっているかと言うと、シエルには弟君と妹ちゃんがいるのはもう話したと思うが、そのシエルの弟君と妹ちゃんが俺達が5年次に入学してきたのだ。

シエルの弟君と妹ちゃんは双子で、シエルより4歳下。名前はクロカンジョエル君とアリアンノエルちゃんと言い、弟君はシエルに良く似た黄金色の髪で瞳は濃い緑色をし、妹ちゃんは銀に近い金色で瞳はシエルに良く似たコバルトブルーをしていた。

二人とも将来が楽しみなほどの美形である。

そしてヤンにも弟がいると話したが、名前はヴァンサンス君と言い漆黒の髪にヤンよりも黄色が強いオレンジの瞳をしていた。この子も将来が楽しみな男の子だ、特に顔が。

ヴァン君は双子ちゃんと同じ学年でジョエル君とは同室らしい。

これは絶対学園側の悪意が働いていると俺は思っている。

双子ちゃんとヴァン君は兄達のこともあり意気投合し仲良く3人で一緒にいるのは良いのだが、何せノエルちゃんは超美少女である。

シエルはヴァン君の事は安全と思っているらしいが、周りの男達がノエルちゃんをガン見しているらしく、妹を溺愛しているシエルには神経をすり減らす一番の要因となっているらしい。

まだ初等部の時は良かった。

同じ校舎にいたからか見守れる、もとい監視できると言う安心感からかここまでは壊れていなかった。

しかし、中等部に入学し直接見守れなくなると不安でたまらないらしく、最近はいつもこの調子であった。


「こいつシスコンキャラだったのか…」

「ヴァンに聞いた話しだと、私達が卒業したときにヴァンに他の男子への牽制と監視を頼んだと言うか詰め寄ったらしい。ヴァンが半泣きで報告してきた」

「哀れやヴァン君…」

「まぁ、確かにノエルちゃん可愛いもんな!!」

「あっ!!馬鹿!!ルピシーそれは!!」

「そうでしょ!そうなんだよ!!ノエルはとっても可愛いんだよ!!だから心配で心配でたまらないんだ!!!」

「シエル落ち着け。大丈夫だジョエル君も付いてるじゃないか。自分の弟も信じろ。な?」

「いや、ジョエルも可愛いんだけどね、あいつちょっと天然で抜けてるところがあるから…」

「大丈夫だって。前ノエルちゃんがゴンドリアに護身術習ってたし、『今こそ女子力を上げるために護身術よ!』とか言ってノエルちゃんに非道な技を教えてたぞ。金的とか…」

「そうだ、ノエルを見る奴は皆上も下も潰れればいいんだ…」

「もう誰か助けてこの状況…」

「お!試験会場が見えてきたぞ!!」

「ルピシー!!お前も空気読めやぁぁあーーーーー!!!」


試験会場に入り番号札を渡された。

俺達4人の試験番号は33~36番だ。

会場内には俺達と同年代や下の年代、はてまたお前は絶対30オーバーだろうと言う奴もちらほら見受けられた。


この能力試験、正式名称『学園都市迷宮冒険者認定資格試験』の資格証は免許証のようなカードタイプで、デビットカードの機能も持ち、迷宮に潜るために取得することを推奨されているものである。

なので大抵の迷宮冒険者は取得しているが、中には取得していない者もそれなりにいた。

何故冒険者にとって必ずしも必要ではないかと言うと、別に資格証がなくても迷宮に入ることができるからだ。


未成年の聖帝国人は色々な許可を取らないと迷宮にいは入れない決まりになっているが、その許可の一つがこの試験の合格である。

どうして許可のために試験を受けさせるかと言うと危ないからの一言で、回復魔法はあるが即死したら意味が無いし、即死を防げる魔道具マジックアイテムもあるが高価すぎて買える奴など一握りだ。

自国民の将来ある子供達に無闇に死んで欲しくはないと言う気持ちから、覚悟はあっても実力がなければお話になりません的精神でハードルをつけているのだ。

しかし他国人に対しては、それが未成年であれど『自己責任だから勝手にしろ、ただし死んでも知らねーぞ』的な態度になる。

だが、さっきも言ったが大抵の迷宮冒険者はこの試験を受け資格証を取得している。

何故なら資格証が身分証明書の代わりになるからである。

しかしもその資格証を身に着けていればどこの誰だかわかるし、形見にもなる。

迷宮内のモンスターは無機物を食べないし、この資格証はとんでもなく丈夫に出来ているため劣化など破損はせず大抵は形をとどめている。

もしも迷宮内で死んでしまったら身元が分からなくなる可能性が限りなく低くなるのだ。

そしてデビットカードの機能がついていると言う事は銀行口座の預金が遺族に渡る訳である。

カードは2枚一組になっていて一枚は自分がもう一枚は国営の迷宮管理団体が持ち、不正に利用されないように魔法と技術の粋を結集して作られている。

対のカードは連動されており、もし迷宮管理団体に怪我や引退の報告をせず一年間迷宮に潜らず更新が無い場合、資格取得の際に予め登録した者に遺産が送られるシステムになっているらしい。


そしてもう一つ、大体の人はこちらの理由で取得を目指すものが多いのだが。

学園都市内には身分証明が出来ないと入れない施設などが多数ある。

それは都市中枢の学園や研究施設などがそうだが、一番はいわゆる夜の大人のお店である。

でかい町には必ずある歓楽街、その中でもさらにディープなお店は身分証明がないと入店拒否されるらしく、迷宮冒険者の男達の多くは血気盛んなお年頃であるため、そういったお店は需要があり繁盛しているという。

なんで俺が夜のお店事情に詳しいかと言うと前世では年齢並みの遊びはしていたが、今世では年齢に引っ張られて興味が無かった。

しかし俺もお年頃な歳になってきて、段々とムラム…じゃなかった興味がわいてきた関係で学術的調査という名の先輩達への聞き込み調査を敢行していたからである。

さて、話は戻るがいくらお金を持っていようが身分証がないと夜の大人のお店には入店する事が出来ない。

よって態々資格を取りに来るのだ。(注)成人してからじゃないといくら資格証があっても入店拒否されます。畜生。

と言うわけで欲望のために試験を受けに来る奴等が多い。

それじゃあ良し!スッキリする為に試験受けるぜ!!となるのだが…

しかし!!この能力試験にはある一種の罠がある!

それは筆記試験だ。

そう、実はこの学園と迷宮冒険者認定資格試験は実技だけではなく教養も試される事になる。

この筆記試験の壁のために今までどれだけの男が涙を流してきたのか俺は知らない。

きっと暗い部屋でお一人様よろしく、利き手が恋人になったのであろう。


さてイカ臭い話は置いておいて、筆記試験だ。

ルピシーはその事を知り発狂してゴンドリアに絞められたが、その後必死になって勉強してました。

いや、俺達が勉強させました、スパルタで。

最後のほうは何故かしゃべる言葉が片言で素敵な感じでしたが、皆俺も含め『お前のためだから』と言い良い笑顔で指導していた。

先程大抵の冒険者は取得していると言ったが、取得していない者がいるのはこの筆記試験がネックだからではないのだろうか…

既に資格を取得している人に聞いてみたところ、筆記試験事態の内容はそんなに難しくは無いらしく、受からない人は相当頭の弱い人かアルゲア語が不自由だから文字がわからなくて受からない人が多いそうだ。


そんな事を心の中で解説していたら、待合室に試験管らしき男が入ってきた。


「では席について。問題用紙と答案用紙を私の合図と共に裏返して答えてください。そして私の終わりの合図と共に手を止めてください。それが守れないようであればその時点で失格とします。良いですね。では始め」


いきなりかい!!

何この学校の授業開始15分前の小テスト感は…


さぁ、早速筆記試験を受けたわけだが。

ぶっちゃけ難しい問題は少しはあるが、初等部の授業を真面目に受けていれば分かるような問題ばかりだし、聖帝国で生活しているのなら当たり前な事だらけの問題でした。

お金の計算とか一般常識とかマジで普通だったわ。


そう言えば俺達が学園入学前に出会ったあの冒険者達。

あの中のおっちゃんお金の計算を間違えてたとか言ってたが、もしかしたらこの試験に受からなかった人なのかもしれない。

うん、面白いおっちゃんだったが少し同情心が湧いてきた。


「やばいやばいヤバイヤバイャバイヤバィャバィヤb…」

「あー…ノエル…ノエル…」


ああ……病んでる、病んでるな。いや、マジで。


「なぁ、ヤン…俺こいつらと他人の振りしたいんだけど…」

「奇遇だな。私もそう思っているよ」

「お前らいい加減にしろやぁぁあああーー!!!ルピシーは壊れたレコード盤かコラァ!!シエルもいい加減しゃっきりしろやぁぁあああーー!!!」

「レコード盤が何かわからないが、概ね同感だな」


さっきから挙動不審な2人が注目を集めていたが、俺が叫んだ事により一層視線が集まった。


「いや、マジでヤバイ…全然分からなかった…」

「お前こんなの分からなかったらマジで脳みそスッカスカの証明になるぞ!」


俺のその言葉に数名の受験者が顔を背け哀愁漂う姿勢で下を向いた。

おい、お前等マジか。

良くそれで今までこの国で生きてこれたな。


「全然分からなかったから昔セボリーが聖育院じっかでやってたペンに番号つけてコロコロさせて答えを答える方法で問題を解いたんだが…」

「アホかーーーーー!!!そんな運任せの方法で受かろうとするほうが間違いだっつーの!!!」

「シエルもこの状況だし、私とセボリーの2人で潜らなければならなそうだな…」

「しかもお前殆ど番号制の問題なかったじゃねーか!!!」

「いや…適当に何個か答えを考えて番号をつけた答えに当たったら答えてたんだ」

「絶対に落ちてるの決定じゃねーか!!!もうなんなのこいつ!?っていうか本当に俺の幼馴染なんなの!?女装家と馬鹿の申し子とマイペースな不思議君って…」


orzの格好をしながら周りからの同情にも似た視線を多数感じる。


「とにかく潰れろ…」

「お前もいい加減にしろシエル!!!誰か助けてくださーーーい!!!」


そして叫んでいるうちに筆記試験の成績が張り出された、はえーな。

試験は100点中50点以上が合格だ。

合格ライン低くね?

結果は俺が95点、ヤンが91点、シエルが100点、そしてルピシーが50点でした。

掲示板の前には喜びの声を上げる者たちと、悲哀な声を出す者がはっきりと分かれている。

そこのおっちゃんなんて白く燃え尽きているんだけど…


「おい、お前マジでいい加減にしろ。初等部から赤点ぎりぎりで合格だして、今回も例に漏れずかよ。マジでいい加減にしろ!!!」

「あんな状態だったのにシエルは満点か。流石だな」


一通り大声で騒いだ後筆記試験合格者は実技に移るために移動する。

実技会場に入るとそこに知っている顔の男の人が立っていた。


「よぉ、大きくなったなお前ら、ていうかうっさいわ。ここまでお前の声聞こえてたぞ」

「あ、ご結婚とお子様おめでとうございます」

「おう、ありがとさん。お前は成長してもマイペースだな」

「俺はマイペースを売りにはしてませんよ。売りにしているのはロベルトです。っというか先生が試験官ですか?」

「そうだな、お前の売りは『おかしい』だからな。ああ、覚悟してろよ」

「いいえ、俺はノーマルです。ところでどうやってプラタリーサ先生落としたんですか?」

「皆まで言えるか!」


そう。試験会場に立っていたのは筋肉ゴリラことラングニール先生だった。


「ラングニール先生、セボリーに良い様に転がされてますよ!」

「何言ってんだルピシー!お前が一番転がされてるだろうが!!」

「モキュー」

「…なんだか、今の一番の癒しがお前だコーセー…」

「そのうちイラついてきますよ。それに嫁と子供に癒されやがれ」

「いつも癒されてる。さて、このイライラをお前達にぶつけてやる。あのおっさんにとことん叩き潰せと命令されているんでな」

「副院長…」

「ま、とにかく順番まで首を洗って待ってろ」


ラングニール先生が嫌な笑いを浮かべた。

あのおっさん一応同意書に署名してくれたから良いものを…まさかこんな隠しネタのような再会があるとは…


ついでにルピシーのペンコロコロスタイルは後世に馬鹿の救世主ルピシアンペンローリングと命名され、数多くの馬鹿を救ったのか救わなかったのか定かではないが、ある一部の奴等には多用されたらしい。

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