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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第三章 成長期の章
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第二十一話 中等部入学前

はい。本日初等部の卒業式でした。

ルピシーが燦燦と輝く太陽の光を顔いっぱいに浴びるように上を向いて涙しているんですけど。


「よかった…卒業できた…」

「ルピシーそれ進級のときにも言ってたよね、うん」

「恒例行事と化しているな」

「いつも赤点ギリギリの成績だったのに、留年もせず卒業できたこと自体あたし達が疑問よ。あんた本当に進級できたの?その卒業証書は偽造じゃないわよね?」

「そうだね、色々僕達もがんばったからね、ルピシーの調教じゃなかった、教育に」

「お前マジで皆に感謝しろよ」


中等部に入るまでに2回の部屋変えを経験し、2回とも皆ばらばらになったが研究などで顔をつき合わせることが多く、はっきり言って他の一緒になったルームメイトより過ごした時間が長かった。

そして何故か部屋が違うのにいつも俺達に助けを求め、結果いつも赤点ギリギリの点数でテストに合格し、涙するルピシーの姿はもはや俺達の学年では恒例行事として認識されているほどであった。


この5年間で色々な変化があった。まずは外見だ。

ルピシーは元々がっしりしていた体がさらに成長して筋肉もましましだ。

短く刈られたこげ茶の髪はそのままに典型的な腕白小僧顔だったが、今では腕白少年の顔だ。

その腕白少年の顔もこの頃幼さが抜けてきて精悍さが少し出てきたくらいだ。

人懐っこく素直で太陽のような笑顔で笑い、馬鹿なことをしてもルピシーだからと憎めない存在と化している。


ゴンドリアは昔は可愛い幼女の雰囲気だったが、今は花のように綺麗な少女の姿になった。

外見は少女だが、性別は男で中身も男だけどな…

こいつの姿に騙されてこの6年間に撃沈し砂と化した男の数は二桁に上る。

事情を知っている生徒は皆ニヤニヤ顔で見ていたがな。

中等部卒業までどれくらい被害者を延ばすのか賭けをしている奴もいる。

まぁ、俺は三桁の大台に賭けたけどな。


ヤンも元から男特有の色気のようなものがあったが、思春期に入りさらにその傾向が強くなった。

理知的であって野性味溢れるその姿にまだ12歳なのにすでに貫禄すら覚える。

その姿はまるで夜の湖のように神秘的だ。

オレンジ色の瞳も深みが増してきたように思える。



フェディは俺達の中では一番小さかったが身長が伸びてもまだ一番低いままだった。

しかし元から可愛い系ショタっ子系の顔をしていたが、眼鏡を少し小さいものに変え白い髪を束ねるスタイルに変えてから幼児から少年といった雰囲気が出るようになった。

黙って立っていれば佇む姿はまるで月夜に佇むススキの如き雰囲気を醸し出している。


シエルも元々イケメンだったが今も線の細さは変わらず身長が伸び超絶イケメンとなっている。

爽やかさはまるで春の草原の如し、雰囲気はキリっとしていて小春日和だ。

その笑顔はまるで宝石のようであり、前世で中世の貴婦人が貴公子を見た時に気絶していた姿は映像で見たことがあったが、まさか今世で生で見るとは思わなかった。


そして俺は…


自分では分からん…

皆が言うには普通よりは上らしい。

公星も変化と言う変化は無かったと思いたいが、現実にはあった。

前まで俺の片手に乗っていた大きさが、今の俺の両手に納まるが少しはみ出す程の大きさになっている。

おい、図鑑で調べてもピケットの大きさって最大でも片手くらいの大きさだぞ。

お前は一体何を食べて、ああ…色んなものを食べてましたね。

これはつまり公星とハムハムのせいだから、断じて俺のせいではございません!!


また変わったと言えば交友関係も増えた、同級生や先輩後輩、迷宮冒険者または学園都市内にいる人間と知り合う機会が増えたのだ。

ぶっちゃけ2年の終わりまで俺達は鍛錬と研究、件の小遣い稼ぎで交友関係が壊滅的だった。

話すのはサンティアスの兄弟姉妹達か、偶然授業で一緒になった奴等で友達とは言い難い交友関係が多かった。

しかし、3年の部屋変えで少し変化していった。基本的には最初の6人で過ごしていたがな。

可愛がっていたサンティアスの弟妹が入ったことも大きいが、一番はヤンの弟君とシエルの弟君妹ちゃんが入ってきたことが大きいのかもしれない。

ヤンによればヤンのご両親は弟君をサンティアス学園に入れるつもりは無かったようだ。

ヤンは長男らしく家を継ぐと決まっており、弟君はチャンドランディア藩王国連邦の学校か、近くの国の学校に通わせるつもりだったらしい。

しかし件の小遣い稼ぎで負担がかなり減ったらしく、弟君もサンティアスに通わせる事になったそうだ。

実際にヤンは2年次からの学費や生活費の全てを自分で出していたしな。

そ思うと俺達どれだけ稼いでたんだよ。

しかしヤン。お前かなり良い所の出だとは思っていたが弟君がぽろっと零した話だと、チャンドランディア藩王国連邦を治める11家の王家が1つの長男だそうじゃねーか。

お前王子様だったのかよ…


先程俺達ってどれ程稼いだのかと出たが、この数年で俺たちの懐事情が激変したことは確かで、前世の感覚で言えば毎日う○い棒を1本ずつ買えず3日に1本どうにか買っていた奴が、毎日100本まとめ買いすることに何の躊躇しなくなったくらい変わった。

これは俺達が小遣い稼ぎと言う名の荒稼ぎをしていたからなんだが、少々稼ぎすぎたらしく思いっきり税務官が税の徴収にきましたよ。

最初税務官が来たときは『え?小遣い稼ぎくらいの稼ぎだから税金免除されるんじゃなかったですっけ?』と思い聞いてみたのだが、もはや小遣い稼ぎの領域を突き抜けたらしい。

なのでその関係で商会を立ち上げることになりました…会社興したほうが税金が少なくなるんだってさ。

だがそこにまた問題が発生したんだよ。

誰が会頭になるかだ。

そう誰がこの商会の代表として登録するかを決めなくてはならなくなったのだ。

まず最初に除外したのはルピシーで、本人もやりたくないと言っていたし俺達もこいつに任せたら1週間で潰れると確信していたので最初から満場一致だった。


次にヤンとフェディが外された。

ヤンは聖帝国籍ではないし将来は国に帰るつもりらしく、フェディも柄ではないしそんなことより研究がしたいと本人達の強い希望で辞退した。


次にゴンドリアと俺が外れた。

理由はサンティアスの養い子は成人するまでは会社設立などを制限されるらしい。

何故なら成人するまでは俺達はサンティアス聖育院預かりになるわけで、もし倒産し負債を負うハメになったときはサンティアスがその負債をかぶらなければならないからだ。

それにゴンドリアは会頭よりモデルや広告塔がやりたいと言い出したからと言う理由もあるがな…

要するにやりたいのなら成人まで構想を練ってから始めろと言うことだ。


結局消去法でシエルが会頭に、俺が副会頭になることが決まりましたよ。

シエルは嫌がっていたが、他になる奴がいないor任せるとヤバイ奴しかいないと言う理由で泣く泣く就任した形だ。

しかし俺は知っている。こいつは責任感が強いから任せればそれなりにやってくれることを。

そしてこいつ出自とこいつのバックにいる人をだ…


俺はステータスが見れる関係でとっくに気づいていたし、シエルからは口止めされていたから皆には言わなかったが、会社設立の時にはフルネームで署名しなければならないためシエルのフルネームが判明した…

シエルのフルネームは


『アルカンシエル・ランスロー・ジャン・クラインドール・エルドラド・デ・エルトウェリオン』


24家の苗字は直系の子供しか名乗れないのが慣例だ。

もし一代貴族爵位准伯爵位を贈られて結婚し子供が出来ても、准伯爵の子供が名乗る事を許されるのは伴侶の苗字か24家に関係の無い新しい苗字だけ。

つまりエルトウェリオン姓のシエルはエルトウェリオン公爵の直系の子と言うことになる。

しかも苗字につける称号に『デ』を使えるのはエルトウェリオン公爵家とホーエンハイム公爵家だけなので、名前を名乗っただけですぐに分かってしまう。

つまり下手なチョッカイを出すとやばいぞと言う警告になるわけだ。

シエルが言うには、もしチョッカイ出されても絶対に親は動かないと明言しているがな。

それでもその名前の強さで聖帝国内では誰も手出しできないだろう。

もし手出ししてくるやつがいるとすれば、相当な世間知らずか阿呆だけだ。

しかしエルトウェリオン家は聖帝国建国以前は王家だった家だ。こいつも王子様かよ。


さらに判明したのだがフェディもすごい家の出であった。

こいつの親も24家の出らしく、つまりフェディの親が准伯爵でおじさんかおばさんが世襲貴族と言う訳だ。

しかもシエルとは曽祖父が一緒らしく親戚らしい。

学園に来て初めて会った親戚らしいがシエルは名前と存在だけは知っていたようだ。

つまりこいつも王子様ってことになる。


うん。改めて思うけどこのメンバーエグイな。

初等部1年の部屋割りどうなってんだよ。

王子様3人と女装家1人に馬鹿1人パンピー1人の部屋割りってどうなってるのこのグループ?

選抜メンバーに悪意しか感じないんだけど。


まだまだ判明したことや変わったことは色々あったが今の所はこれで勘弁してくれ、色々疲れたんだよ…



さて。現在中等部入学にあたり俺達サンティアスの養い子は聖育院じっかに帰ってきている。

副院長は相も変わらずいたが、この人俺たちが初等部入学してから全く容姿が変わってないんだけど…

まぁそれはいいとして滅茶苦茶驚いたことがあった。

この5年間でプラタリーサ先生とラングニール先生が結婚していたのだ。

これには本当に驚いた。しかもなんと子供まで出来ていて、今は学園都市内で暮らしているらしい。

あの筋肉ゴリラがプラタリーサ先生と結婚……うん。考えただけでもエロイ。正に禁断のカップリングって感じだ。


それとこの件について知らなかったのは俺だけだったらしい。

ルピシーやゴンドリア、ロベルトもこの結婚の話を知っていたようなのだ。

その理由は前にも言ったが、学園都市は異常なほど広い。

広いから接点が無い人は本当に知らないし、顔も見たことが無い人がたくさんいる。

だがそれ以上にサンティアスの結束は強く、聖育院やサンティアス出身の者達には独特の情報ルートがあるようで、かなりの確率で人伝えで情報共有が成されているらしい。

後で聞いた話だが、学園都市で知り合ったサンティアス出身の兄姉達やロディアスさんはとっくに知っていて、結婚前に既にお祝いの品を渡しにいっていたようだ。

え?俺には全然情報とか来ないんですけど?どうして?

お前ら早く言えや、そうゆうことは。

まぁ良い。良くないけど良い。今度会った時はちゃんとお祝いの品とかを贈っておこう。


「大きくなったなお前達。普通は進級時には帰ってくるのにお前達4人は全く帰ってこなかったからな。ルピシーやゴンドリアでさえ本当に稀に帰ってくるのに、セボリーとロベルトは一度も帰ってこなかった」


副院長があきれ気味に話しかけてきた。

ルピシーとゴンドリアは進級時は帰らなかったが、時間を見つけて帰っていたらしい。

だから言えよ、誘えよ、教えろよ。

それならそうと時間作って行ったのに。


「俺も色々忙しかったんですよ。まぁロベルトは何で帰らなかったか知らないし、むしろ今帰って無かった事を知ったんですけど。どうして?」

「おいらはおいらで忙しかったんだよぉ。面白いこと見つけちゃってさぁ」

「面白いことだったら俺にも教えてくれ!!」

「ルピシー。落ち着きなさいよ」

「そんで面白いことってなんなんだ?」


次にロベルトの口から出た言葉に俺は仰天することになる。


「先輩から部活に誘われたんだぁ。サンティアス学園なんでも同好会って部活にさぁ」


「へ?」

「あらぁ、どこかで聞いたことある名前ねぇ」

「あーーーー!!!思い出したぞ!!シエルがよく読んでた本の会社の名前だ!!!」

「うん。メンバーは初等科部から高等部の人や卒業生もいるんだけどねぇ。気になったことを調べていくんだぁ。それでレポートにまとめてメンバーの前で発表するんだよぉ。過半数が面白いと思ったレポートは先輩方の伝を辿って本にするんだぁ。おいらも色々レポートを書いて発表してるんだけど、まだ本は出せてないんだよねぇ」

「出さんでいいわ、潰してしまえ!!」

「でも潰したら先輩達から批判が凄いと思うんだ。うちの同好会って卒業生に有名人が多いんだよぉ」

「この国本当に大丈夫か…?」

「なにか面白そうなネタなぁい?セボリー達って色々やってるじゃないか、一緒に組んで本だそうよぉ」

「いや、俺達がやってることは機密が多いし…出せるのはルピシーくらいしか…」

「え!?俺!!?」


ここはルピシーに振っておこう…俺の心の平穏のためにも…


「うん。ルピシー何か良いネタなぁい?」

「ネタと言ってもなぁ…あ!!ネタと言えば学園都市の東のはずれの地区に面白い飯屋があるぞ!!酸っぱい飯の上に生魚を乗せた料理なんだけどな。酸っぱい飯はシャリって言って生魚のほうはネタって言うんだってさ!!最初は気味悪かったけど慣れたらイケるぜ!!!」


それ飯寿司じゃん。

やっぱりあったのかすし屋。

今度ルピシーから聞き出して行ってみるとするか。


「それ面白そうだねぇ。今度連れて行ってよぉ」

「おう!!いいぜ!!!」


後の世に呼ばれる学園都市のグルメの帝王と伝説の編集者の誕生の切っ掛けの瞬間であった。


そして明日、俺達は中等部に入学する。

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