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Public Star~目指せ若隠居への道~  作者: 黛紫水
第六章 萌える芽の章
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第百八十五話 ムーンローズ

「またやらかしてるね」


俺が仲間のもとに戻った時シエルが放った最初の言葉がそれだった。


『やらかしてるね』はまぁ良い。でも『また』とはなんだ。

まるでコレじゃあ俺がいつもトラブルを起こしてる原因みたいに聞こえるじゃねーか。失敬な。


「さっきのダンスで色々言いたい事はあるけど、まずそれよりもその花なによ!なにこの綺麗なムーンローズ!?さっきの普通に開花してた時も綺麗だったけど何でこんなに光り輝いてるの!?」

「俺が知る訳ねーだろうが!!俺だって聞きたいくらいというか問いただしたいんだけど!!?」

「セボリーさんちょっとこっち!こっち向いて下さい!!あと動かないで!!」

「ユーリ。お前何処からスケッチブック出したんだよ…」

「ここからです」


そう言って指差されたところはドレスの左胸元の横だった。


「おい!そこはやめとけ!」

「大丈夫ですよ。取りやすいようにちゃんと開け口が付いてるんで。ほら」

「そう言う問題じゃねーよ!」


ユーリがドレスの脇の下部分にある切れ目を見せてくれた。

どうやら胴体を覆っているコルセットの中に収納できるようになっているらしく、取り出し口になっている切れ目もフリルが付いているため全く分らない設計になっているようだ。

自分自身でデザインしてるからそう言った細工の設計はお手の物らしい。


「兎に角余り動かないでください描き移せないので」


普段は素直で温厚しかも融通も聞く性格なのに、デッサンや芸術品など自分の興味のあるものに対することには意固地になるユーリの悪い癖が出た。

フェディもその気があるのだが、あいつの場合興味のストライクゾーンが極端に狭いせいか滅多にこう言った状況にならないし、俺と嗜好が少し違うのでこう言った自体には余り遭遇しない。

ただユーリはこうなると梃子でも言う事を聞かないので大人しく動かず話を進めていくことにした。


「というか何で皆一斉に開花してるのに俺だけ先に咲いてるんだよ」

「そんなこと知らないわよ」

「でもあれじゃないかな?」

「あれって?」

「クルルだよ。水族館にいるでしょ?あの飛べない鳥みたいな動物」

「ペンギンのことか?」

「ペンギン?あれってペンギンとも言うの?」

「さぁ?」


広大な敷地を持つ学園都市の中には勿論水族館や動物園も存在しており、学校の課外学習や休日の親子はてまた恋人がデートなどで大盛況だ。

前世の動物のラインナップとかなり違うが、中には前世の動物と殆ど変わらないような生物も多数存在しており、その中にペンギンのような生物もいた。

但しペンギンのような生物なので全て同じと言うわけではなく色や大きさ、はてまたフォルムも微妙に違っていて、前世のペンギンとほぼ同じくらいの小ささから大きさのものまでいる中、明らかに前世で一番大きい皇帝ペンギンよりも大きい種が存在しており、その大きさは2メートル以上あってかなり恐ろしかった記憶がある。

俺はそれらの動物の正式名称を覚える気が無いためか、その生物の事をペンギンと呼んでいた。


「正式名称はハネナシナキミズオオトリモドキだよ、うん」

「そんなゴツイ名前だったんかい。クルルって何処から来たんだよ」

「鳴き声がクルルクルルーって鳴くからクルルらしいよ、うん」

「まぁそれは置いておいて、確かクルルって群れ行動してるよね?それで水に飛び込む最初の子の事を一番クルルって言うんだよね」


思いっきりファーストペンギンじゃねーか!


「それでその一番クルルが飛び込むと一斉に他のクルルが水の中に飛び込むらしいんだよ。今回のムーンローズの開花もそうなんじゃないの?つまりセボリーのムーンローズが一番咲きなんじゃない?」

「へぇ。そうなんだ。で、この光の止め方は?」

「僕が知るはず無いじゃないか」

「知っておけよシエルだろ」

「僕が何でも知ってると思ったら大間違いだよ。そこまで責任持てないって」

「でも本当に綺麗ね。創作意欲が湧いてくるわ!」

「ねぇねぇ、セボリー。後でその花頂戴。色々調べたいから、うん」

「フェディお前も…」

「多分帰った後もユーリが他の角度とかでスケッチしたいって言い出すと思うからその後でいいよ、うん」


ぶっちゃけ今すぐこの花ゴミ箱に投げ捨てたいんでけど。

そうじゃなかったら誰か交換してくれ。

俺は目立ちたくないんだよ。


「なぁ、セボリーも踊ったことだしそろそろ移動しないか?ルピシーも探さなくていかんしな」

「確かにヤンの言うとおりだね。じゃあ行こうか」

「でもユーリが今スケッチしてるんじゃ」

「大丈夫です。今終わりました」

「あら、じゃあ行きましょう」

「ちょっと待って。もう我慢できん。コレ取るわ。あれ?取れない?何で?」


こんな目立つ姿で歩きたくないと流石に我慢できなくなった俺は、ムーンローズを胸から外そうとしたのだが、全く外れてくれない。


「何これ!?挿した奴瞬間接着剤でも使いやがったのか!!?クソ!おりゃ!」

「ちょっと!乱暴に引っ張るんじゃない!正礼服が台無しになるじゃない!それに花も傷めるから止めなさい!」

「じゃあコレとってくれよ!」

「全くもう。あら?本当に取れないわねこれ。もういいじゃないこのままで」

「良くない!かくなるうえは!あれ!?何これ!?花自体ビクともしないんだけど!!?摘み取ろうとしてるのに全く花びらも取れないんだけど!!?何これ?造花なの!?」

「コレが造花のはずないでしょうが。ちゃんとした生花よ」

「なんでこんな丈夫なんだよ!造花だってこんな『何をやっても潰れません』的なこと出来ないぞ!!?」

「もう諦めたら?良いじゃない、とっても綺麗よ。目立つからダンスにも誘われると思うし」

「嫌だ。絶対に外す。俺は客寄せパンダじゃねーんだぞ」

「客寄せパンダ?」

「パンダっつーのは良い感で体に白と黒のコントラストがあるだけの熊だよ。普段は笹とか竹とか食ってるくせに本当は雑食でしかも肉が大好物な熊だ。一見可愛いし温厚そうに見えるけど結構凶暴で人も襲うから気をつけろよ。じっくり目を見ると結構怖い目をしてるぞ」

「そんな生物見たことも聞いたこともないわ。と言うか何処情報よ」

「そんな事よりも、ねぇゴンドリア鋏持ってない?」

「小さい糸切り鋏なら持ってるけど」

「貸して。コレ切るから」

「嫌よ!何勿体無い事言ってるの!!花に罪はないわ!!それをつけてるあんたに問題があるだけよ!!」

「おいコラァ!!お前何さらりと俺をディスってんだぁ!!」

「あんた目立つのはいつもの事なんだからそのままにしておきなさい。自分は普通だと思ってるようだけど普通じゃないんだから」

「え?酷い。俺泣いて良い?それにいつも女装姿のお前に普通じゃないって言われたくないんだけど」

「勝手に泣いてなさいよ」

「おーい。もう行くよー」

「ああもう。あんたと無駄話しをしてたから置いていかれちゃうじゃないの。セボリー、あたしはもう行くわよ」

「ちょ!?まて!待ってくれ!俺を置いていくな」


俺はスタスタと先に歩いていったゴンドリアと他の奴等を追いかけつつ、少しでも目立たないようにマントでムーンローズを隠しながら移転陣のほうへと歩き出した。

だがやはりマントの外から普通に虹色の光と粒が出ているので全く隠しきれて無いんだ。

誰か助けてくれ。この光を止めてくれ。


皆に追いついて移転陣の中に入ると俺たちの他に約20人ほどが移転陣の中にいた。


「今度はどの部屋かな?」

「一通り見てみたいわね」

「そうだね。会場ごとに趣が違うだろうし」

「では移転陣を起動させます」


係員の人が移転陣に魔力を流し移転陣が光りだすと、俺達はどこかへ飛ばされるのであった。

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